SankeiBiz for mobile

「なぜ」を大切に技術革新 大林組の金井誠副社長

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

「なぜ」を大切に技術革新 大林組の金井誠副社長

更新

【ビジネスアイコラム】

 「半年や1年で評価されることだけをやっていては、驚くような発明、発想は出てこない」。こうした思いから大林組の金井誠副社長は、年間120億円程度の技術開発予算の割り振りを年度初めに決める慣習を改め、面白い開発テーマには年度の途中でも費用を充てる例外を設けた。新たなコンクリート技術の開発も、この制度に基づいて費用を捻出し、「非常識」を常識に変えることにつなげた。

 やっとの思いで生まれた技術なのに、海水や海砂を使うことに対する周囲の抵抗感は根強い。自らトップセールスに出ると、国土交通省の担当者は「副社長なのに珍しい」と驚いたという。その熱意からは、技術に対する愛情がにじみ出る。

 東日本大震災の復興需要に加え、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の効果も手伝い、土木分野を中心とする建設需要は期待とともに日に日に高まっている。談合や無駄の多い公共工事などで世間に染みついた「負」のイメージを払拭する好機が訪れているともいえる。

 金井副社長はかつて設計者として、ビッグプロジェクトの東京湾アクアライン建設に携わった。その際、施工を優先した設計ではなく、100年間にわたって安全・安心な構造物にするため、疑問や課題を解決しながら耐久性や使いやすさを追求することが、優れた結果を生むという経験をしたという。

 「なぜ」という思いを常に抱き、とことん粘って結果を出す。この積み重ねがあってこそ、イノベーション(革新)が生まれる。大林組の社員にも「なぜ」を大切にする「金井イズム」が浸透してきた。海水練り・海砂コンクリートに続く新発想の技術が登場するのは、そう遠い将来ではなさそうだ。(那須慎一)

ランキング