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期待高まる北海道新幹線 開業まで3年切るも…秒読み段階ほど遠く

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期待高まる北海道新幹線 開業まで3年切るも…秒読み段階ほど遠く

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新幹線の列車を収容する函館総合車両基地は着々と工事が進められていた=4月19日、北海道七飯町(藤井克郎撮影)  北海道新幹線の開業まで3年を切った。4月には、とりあえずの終着となる新函館駅(仮称)と函館駅を結ぶ在来線の電化工事起工式が開かれるなど、着々と環境整備が進められている一方で、新駅の正式名称はいまだ決まっておらず、秒読み段階にはほど遠い。工事の槌音(つちおと)が響く新駅付近を訪ねると、ここがターミナルになるとは想像もできない殺風景な風景が広がっていた。(札幌支局 藤井克郎)

 函館市に隣接する七飯(ななえ)町のJR七飯駅近くで4月20日、JR北海道が主催して「函館線五稜郭(ごりょうかく)・渡島(おしま)大野間電化工事起工式」が開かれた。

 渡島大野駅は、平成27年度末に北海道新幹線が開業すると、その終着となる新函館駅(仮称)に生まれ変わる。五稜郭駅までの14・5キロを電化させることで、函館駅から新駅までアクセス電車を運行して新幹線利用客の利便性を高めることができる。

 函館市長らと鍬(くわ)入れ式に臨んだJR北海道の小池明夫社長は「各駅停車と快速電車の導入を考えており、現行の気動車で渡島大野駅から函館駅まで約25分かかるところが、快速電車だと17分になる。

 マイカー利用の人もいるだろうし、レンタカーやバスなどいろいろな形態を合わせることで、全体としてアクセス機能が高まればいいですね」と顔をほころばせる。アクセス電車は28年3月に見込まれる新幹線開業と同時に運行を始める予定で、函館らしいデザインの3両編成の新車両を考えているという。

 起工式後は会場を移して祝賀会も開かれた。主催者としてあいさつに立った小池社長が「新幹線開業までいよいよ3年を切ったが、やらなければならないことは山積している。

 何といっても大事なのは地域活性化の大きな力になることで、中でも期待されているのは観光。地元と一緒になって隠れた観光地の開発などをしっかりやって成果を発揮したい」と話せば、国土交通省北海道運輸局の西川健局長も「北海道のすばらしさを外の人にわかってもらって、どんどん来てもらわないと。それが北海道の経済活性化につながる」と新幹線の観光面への効果を口にしていた。

 観光の強化について、周辺自治体ではどのように取り組んでいるのか。新駅となる渡島大野駅を抱える北斗市では駅前にホテルを建設する計画だが、まだ事業主体も決まっていない。高架の線路工事は順調に進められているが、駅前は観光バス用の駐車場が整備された程度で、のどかな田園風景が広がっている。

 「もともと住宅は少なくて、商店も昔はあったが、今はそば屋が1軒あるくらいです。バスの駐車場に続いて、6月ごろには580台収容可能な立体駐車場の建設工事が始まることになっています」と、北斗市水産商工労働課の山崎勝巳課長は説明する。

 駅前の目玉施設ともくろむホテルについては、1階にみやげ物店や飲食店などが入る約100室の施設をイメージしている。市が20%を助成することで誘致を図っているが、まだ決定には至っていない。

 「地元の企業も関心は持っているものの、建物まで建てるとなるとなかなか難しい」と山崎課長。ホテルが決まらないと、駅舎内の市管轄スペースの活用やレンタカーや店舗など周辺施設の誘致もままならず、市では「1日も早く」と焦っている。

 何よりも新駅の駅名がまだ決まっていない。函館市が「新函館」を主張しているのに対し、北斗市では市議会で「北斗函館」にすべきだと決議。市役所に懸けられた垂れ幕にも、駅名は書かずに「北斗市開業」となっている。

 「札幌まで延伸するとはいえ、当面20年くらいは始発駅になるわけだし、近くには車両基地もできる。東北の通過駅と同じようにはしたくない。観光だけでなく宅地造成もセットに開発を進めて、この地域の核になる駅にしたいですね」と山崎課長は力を込める。

 その車両基地も建設工事が進行中だ。七飯町にまたがる約36ヘクタールの広大な敷地の中に、着発収容庫、検査庫などが敷設されることになっており、ダンプカーが頻繁に行き交い、クレーン車が作業音を響かせる。七飯町側に設けられた関係者用の展望台には、地元の町内会や老人会なども視察にきているという。

 全体の約4分の3を占める七飯町でも、期待しているのは観光面での効果だ。同町内には大沼公園や城岱(しろたい)牧場などの人気観光地もあり、新駅での観光案内のあり方など、北斗市などと連携して進めていきたいとしている。

 「バスなりタクシーなりレンタカーなりアクセスの整備を含めて、これからの検討になります。車両基地の町というイメージはまだ弱いかなと思う。どういう形でPRしていけばいいのか、模索しているところです」と七飯町政策推進課新幹線対策係の戸嶋英樹係長は話していた。

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