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シャープ「液晶頼み」どう脱却? 問われる高橋次期社長の手腕
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社長交代を発表し、握手するシャープの奥田隆司社長(左)と新社長となる高橋興三副社長=14日、東京都千代田区 シャープは14日、液晶事業への過大投資で巨額赤字を招いた片山幹雄会長らの退任を発表、過去のしがらみを断ち切り経営再建を急ぐ姿勢を明確にした。
新体制の下で、経営不振の原因となった液晶事業の立て直しや国内に偏重した売上高構成の是正を目指す。追加融資枠の設定や取締役の派遣などで主力取引銀行の影響力が増す中、改革の実行を託された高橋興三次期社長らの手腕が問われる。
「ここ数年のシャープの経営体質からの脱却を目指す」。6月に社長に就任する高橋副社長は会見でこう強調した。
シャープペンシルの発明に始まり、国内初の電子レンジや太陽電池の量産…。シャープは時代の流れに応じて主力商品を入れ替え、業績を拡大してきた。
だが、ここ数年は液晶への集中で「新陳代謝」が滞った。町田勝彦相談役は社長時代に「液晶の次は液晶」と豪語。町田氏の後を継いだ片山会長も巨費を投じ、液晶パネルの堺工場(堺市)の建設に踏み切ったものの、液晶は韓国や台湾勢の台頭で価格競争が激化し、採算が急激に悪化。液晶事業への偏重が裏目に出て経営不振を招いた。
2015年度までの中期経営計画には、スマートフォン(高機能携帯電話)向け中小型液晶の外部販売拡大などを盛り込んだ。自社工場で生産した液晶パネルを搭載した自社製のテレビやスマホを販売する「自前主義」からの脱却を加速。東南アジアで家電販売を強化し、出遅れた海外市場での巻き返しも図る。
だが、納入先の軸として頼みにする米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」は一時の勢いを失っており、中小型液晶で今後どれだけ稼げるかは不透明さを抱える。
また、海外でのブランド力はライバルメーカーに大きく劣る。米調査会社のNPDディスプレイサーチによると、12年の液晶テレビの国内シェア(金額ベース)は36.7%で首位だが、世界シェアは5.8%で4位にすぎず、首位の韓国サムスン電子(26.4%)に遠く及ばない。
中期経営計画について、BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは「資金繰りにめどは付いたが、どうやって稼ぐのか具体的な見通しを示すべきだ」と注文をつける。
製造業で20~30%が健全とされる自己資本比率は3月末時点で6.0%に低下。最重要課題の資本増強では、米クアルコムやサムスンとの資本提携交渉は片山会長が主導し、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との資本提携は町田相談役がまとめた経緯がある。
だが、外部との交渉や経営戦略に複数の社長経験者が関与するなど、奥田隆司社長以外の司令塔の存在が混乱を招き、再建を阻む壁となっていたとの指摘は少なくない。
新体制では高橋次期社長に権限を一元化するが、取締役2人を派遣する主力銀行の関与が強まることで意思決定が遅れる懸念もくすぶる。
創業100周年を昨年迎えたシャープが、創業以来の経営危機をどう乗り越えるのか。高橋氏は「再生と成長に向けた新たなスタートにする」としたものの、液晶に頼る経営体質の改革は簡単ではない。(大柳聡庸)