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女子力で生まれた「Vino」 “なでしこトリオ”の奮闘で快走
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ヤマハ発動機のスクーター「Vino(ビーノ)」シリーズは、レトロ(懐古調)でかわいいデザインを売りに、発売から16年間、女性を中心に根強い人気を誇る。
今年2月に一部改良して発売した2013年モデルの開発は女性だけのチームが担当。これまでにない斬新な配色を採用し、マーケティング戦略でも新機軸を打ち出した。
「女性のためのバイクは女性だけで作ろう」。車体や構造を大きく変更することがない一部改良とはいえ、女性だけで二輪車の開発を行うのは同社初の試み。仕掛けたのは、営業担当の磯本欽也さんらだ。
ビーノの開発を通じ、社内で“なでしこトリオ”と呼ばれるようになったカラーリングデザイン部の東海林ルミさんと永田智美さん、販売子会社「ヤマハ発動機販売」MC営業企画部の菊地真由美さんの3人が顔を合わせたのは11年夏のこと。
国内二輪市場が縮小の一途をたどる中、同年にはライバルのホンダが競合車種「ジョルノ」を12年ぶりに復活させた。女性向けスクーター市場という少ないパイの中でシェア争いが過熱。ならば「女性ならではのセンスで突破口を見いだしたかった」(磯本さん)というのが、彼女らを集めた理由だ。
3人はまず、「顧客がビーノに求めるもの」を洗い出すことから始めた。「かわいらしさ」「ボーイッシュ」「クール」「ポップ」。東海林さんは「キーワードを書き出したホワイトボードがたちまち真っ黒になった」と振り返る。
実際のユーザーの声を聞こうと、3人で市場調査にも出掛けた。「大学の駐輪場で、二輪車に乗る女子学生を待ち構えて話しを聞いたこともあった」(東海林さん)
ミーティングを繰り返し、3人が出した結論は、「バイクに乗るのは、アクティブ(活動的)な女の子」。これまで男性開発陣が「女性はピンク」などと決めつけていた車体の配色を、そうした女の子が好む色へ変えることを目指した。
流行のファッションとの親和性も考慮したうえで、フランス国旗に使われる赤、青、白を基本とする3色の組み合わせが、女性がみて「かわいい色」だと、3人の意見が一致。単色が一般的で「画一的なスクーターのなかで、冒険的なイメージを出したかった」(永田さん)。
ただ、低価格が求められるスクーターだけに、コスト高が課題となった。3色使いは、単色に比べて高くつく。ホンダのジョルノに比べ、ビーノは3万円高く、現状より販売価格は上げられない。価格維持へ「台湾の生産子会社と何度も交渉を繰り返した」(東海林さん)。
配色は妥協せず、部材の仕入れからコストを見直してもらうことで、何とか販売価格を維持することに成功。試作色のモデルを従え、昨年春に社内プレゼンテーションにこぎつけた。
3色の斬新なデザインを目にした社員から評価する声がある一方、一部の男性社員や販売店オーナーからは「派手すぎる」「なぜ定番のピンクがないのか」と厳しい意見もあった。
だが、このデザインに至った綿密な市場調査の結果やコスト削減への努力を粘り強く説明。「次第に社内も“なでしこ”を応援するムードに変わってきた」(磯本さん)
3人は販売戦略でも工夫を凝らした。ビーノとデザインを統一させたヘルメットやランチバッグを制作し、キャンペーンで購入者にプレゼントした。永田さんは「スクーターだけかわいくても、ヘルメットが従来の無機質なものでは台無し。女の子はトータルコーディネートが重要ですから」と説明する。
2月の発売後は「在庫がなくなるほどの売れ行き。色がかわいいので『待ってでもほしい』というお客さまも続出している」(菊地さん)。
特に濃い赤、青、白に近いベージュの3色で塗装された「ダークグレーイッシュブルーメタリックA」が人気だ。国内二輪車市場は今年も減少が続くが、ビーノシリーズは1~3月で前年比6%増となった。
「よくやってくれた」。仕掛け人の磯本さんは、予想以上の結果を出した3人に、その後も新たな商品企画を託した。7月1日には、3人が手がけた第2弾「ビーノ バケーションスタイル」を限定1300台で発売する。マリンテイストの爽やかなデザインで、夏にぴったりの1台だ。
さらに現在は、2014年モデルの企画の真っ最中。なでしこトリオの奮闘は今後も続く。