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国内製紙大手、発電事業に本腰 新たな柱へ、事業構造転換する理由
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王子HDの売電目標内訳 王子ホールディングス(HD)や日本製紙をはじめとする国内製紙大手が、本腰を入れて発電事業に乗り出している。主力の紙・板紙事業は国内需要の減少が続き、先行きも厳しい。本業の立て直しに取り組むとともにインフラとノウハウ、燃料を持ち合わせる発電を事業の新たな柱の一つに育てたい考えだ。自由化を軸に据える政府のエネルギー政策の行方をにらみながら、製紙各社は事業構造の転換を狙い、今まさに生まれ変わろうとしている。
「輸出や海外事業を今後展開するにしても、コア事業の紙や板紙は基本的に国内需要が減っている。その中で王子グループが持つ資産を有効利用するため、電力事業の強化を決めた」
再生可能エネルギーを利用した発電事業を手掛ける王子HDのグループ企業、王子グリーンリソースの小貫裕司取締役はこう説明する。
国内では電子化へのシフトを背景に、チラシやカタログといった情報印刷用紙を中心に紙の需要が減退。人口減も避けられない中、収益を紙だけに依存する経営では今後の成長は厳しいとの見方が業界では支配的だ。
日本製紙連合会によると、2012年度の紙と板紙の国内出荷量は前年度比2.6%減の2505万トンで、2年連続で減少。板紙を除いた情報印刷用紙などは円高の影響もあって安価な輸入品に押され、ピークの07年度に比べて2割以上も落ち込んでいる。
もともと製紙各社は工場で使う電力を自家発電で賄い、余剰分を電力会社に売電してきた経緯がある。王子グループは10年ごろから、発電事業の将来性の検討を重ねていた。その答えが売電用の専用設備を導入し、収益事業として明確に位置づけて取り組むことだった。
王子グループの13年3月期までの売電量は、火力を中心に年間6億キロワット時と一般家庭16万6600戸分にすぎないが、植物などの生物体を利用したバイオマス発電や太陽光、地熱発電などを加え、将来的には倍増近い年間11億キロワット時の売電量を確保し、280億円の売上高を目指す。
13年3月期連結決算の売上高1兆2400億円と比べて規模は小さいが、「発電事業の売上高は計画案件を基にした目標値にすぎず、上積みされる可能性が高い」(小貫取締役)という。
既に静岡県の富士工場と宮崎県の日南工場で、バイオマス発電に乗り出すことを決定。ボイラーなどの設備を新設し、15年2~3月頃に稼働させる。さらに全国各地の工場の屋上に太陽光パネルを設置するとともに、北海道白糠町のチップ工場跡地に建設する大規模メガソーラーを今夏から稼働。北海道千歳市の水力発電設備も増強する。
業界2位の日本製紙も、将来の有力な収益源として発電事業への投資とスピードを加速させている。11年末に立ち上げた発電事業の推進室を12年7月に「エネルギー事業部」に格上げし、さらに今月27日には「エネルギー事業本部」へと体制を強化。売電の年間売上高は現在200億円程度だが、中期的には500億円以上を目指す。
具体的には石巻工場(宮城県石巻市)に300億円弱を投資し、木材などを燃料とするバイオマス発電所を建設する計画を検討しているほか、八代工場(熊本県八代市)でも未利用材を100%使用したバイオマス発電を15年3月にスタートさせる。
製紙会社にとってバイオマス発電は、優位性を生かせる発電形態だ。製紙原料だでけなく、発電の燃料源にもなる木材チップを購買するルートを確保し、社有林も保有している。さらに「今まで使っていなかった未利用材を有効活用する」(大手製紙)ことで、森林の荒廃を防ぐメリットも生まれるという。
国が推進する再生可能エネルギーの拡大も製紙各社の発電事業を後押しする。政府の固定価格買い取り制度によって、事業の採算性を見込めるようになった。発電用の土地や設備、ノウハウを持つため、製紙会社にとって発電事業はいいことずくめにみえるが、懸念材料もある。
原発の再稼働や発送電分離などの行方次第で、発電事業を取り巻く環境は大きく変化する。「国のエネルギー・電力政策がどうなるかを見極めなくてはならない」(小貫取締役)
ただ、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉山賢次アナリストは「製紙会社の発電事業への参入は、方向として間違っていないだろう」とした上で、「製紙メーカーがやる事業として適当かといった指摘や本業にもっと力を入れるべきだという声もあるが、森林の活性化につながる形で発電に取り組める点で意義がある」と強調する。
発電事業には自動車メーカーなど異業種が相次いで参入しているほか、都市ガスや石油大手などエネルギー関連企業も発電事業を強化している。ライバルとの競争の中で製紙各社が発電事業を収益源に育てるには、コスト低減も課題となりそうだ。(兼松康)