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【ネットろんだん】アップル狂想曲 ITに「革新」求める人々“祭り”過熱の理由

ニュースカテゴリ:企業の情報通信

【ネットろんだん】アップル狂想曲 ITに「革新」求める人々“祭り”過熱の理由

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 日本時間11日午前2時から同4時ごろにかけて、IT好きの人々の間で毎年恒例となっている“祭り”があった。米アップル社のイベント「WWDC」で行われた、同社幹部らによる基調講演だ。そこで発表される新製品やサービスについてさまざまな予想が飛び交い、講演後は称賛や落胆の声がネット上にあふれる。この熱狂はなぜ起きるのか。

 WWDCは、アップルが自社製品向けのソフト開発者らに最新技術動向を公開するイベント。6000席が用意される基調講演以外は専門的な内容で、参加費も約15万円と高額だが、今年は受け付け開始から71秒でチケットが売り切れたという。

 基調講演の様子はアップルがサンフランシスコからネットで生中継したほか、日本でも同時通訳付きで流す動画サイトや、会場から直接ツイッターでリポートする参加者、文章で翻訳を逐次掲載するサイトも多く登場し、今年も祭りは過熱した。

 秘密主義

 アップルは新製品情報を事前に出さず、WWDCや不定期のイベントでしか公表しないため、世界中のIT好きの想像をかき立てる。

 「『iPhone(アイフォーン)5S』ではなく、大画面の『6』が登場する」「新iPhoneは5色展開」-。既にWWDCの何カ月も前から非公式な情報が相次いでネットのニュースサイトやブログに掲載されていた。中国の組立工場からのリークとされる情報など怪しいものも多いが、2010年にはアップル社員が飲食店に置き忘れたiPhone試作機が実際に流出したこともある。情報はすぐに各国で翻訳され、世界中に広まっていく。

 基調講演では、初代iPhoneから6年間続けてきた画面デザインを一新した基本ソフト「iOS7」などが紹介された。未明にもかかわらず、「ニコニコ生放送」だけで延べ3万人が視聴した。

 事前情報には「iPhoneの画面デザインが一新される」と的中したものがあったが、外れた噂も多数。「新iPhoneがなくてしょぼーん」「リーク情報通りの印象」…。一喜一憂の感想がツイッターなどで大量に流れるのも、いつもの光景だ。

 「人生を変える製品を」

 アップルの動向にこれだけ沸き立つ人が多いのはなぜだろう。それはティム・クックCEO(最高経営責任者)が今年の講演で示したメッセージが表しているかもしれない。

 「持つ人の人生を変えるような製品になるまで、私たちは(製品に)手をかける」

 実際、アップルの製品は現代人のライフスタイルに大きな影響を与えてきた。電車の中で多くの人が平べったいスマートフォン(高機能携帯電話)をいじっている光景は、その是非はどうあれ、iPhoneが他社の競合製品とともに社会に浸透した結果を示している。

 手持ちの音楽を「丸ごと持ち運べる」携帯プレーヤーも、個人が使うパソコンという道具も、この会社が最初に商品化して広めた文化だ。創業者のスティーブ・ジョブズ氏が死去し、株価下落で将来を不安視する声もあるとはいえ、期待値の高さはまだ群を抜く。

 先のCEOメッセージについて、会場で取材したITジャーナリストの林信行さん(45)は「先代の作ったものを壊し、さらにいいものを作ろうとしている」と現地の興奮を伝えた。貪欲な消費者は、次の祭りを待ち焦がれている。(城)

【用語解説】米アップル社

 1976年、スティーブ・ジョブズ氏らが設立。翌年、最初のパーソナル・コンピューターとされる「アップルII」を、84年にはマウスで操作するパソコン「マッキントッシュ」を発売。携帯型音楽プレーヤー「iPod」(2001年)、スマートフォン「iPhone」(07年)、タブレット端末「iPad」(10年)など革新的な製品を世に送り出している。

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