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トヨタなど3社、米高級車市場で攻勢 打倒ドイツ2強…今後の課題は?
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米国高級車市場のシェア(今年1~5月) トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの自動車大手3社が米高級車市場への攻勢を強めている。トヨタは円高による価格競争力の低下を防ぐため現地生産に乗り出すことを決定。日産も北米で2カ所目の生産拠点開設を検討している。3社とも、世界でも数少ない成長市場の米国で利益率の高い高級車を軸に利益を稼ぎ、新興国市場での競争に備える戦略とみられる。
「(高級車ブランドの)レクサスの販売は目標の26万台達成に向け順調に推移している。新型車の販売も控えており、成長を維持できる」
トヨタのジム・レンツ専務役員(北米トヨタ社長兼最高執行責任者)は今月12日の記者会見で、米国での販売拡大に自信を示した。
同社によると、レクサスの1~5月の販売台数は前年同期比10.2%増の9万7060台。このペースで推移すれば、年間の販売台数は23万3000台となる計算だが、7月にはスポーツタイプ「IS」を投入するため、販売台数を上積みできるとしている。
日産は、北米で「インフィニティ」ブランドが十分に浸透していないため、1~5月の販売は、4.1%減の4万2119台と前年割れとなるなど苦戦を強いられているが、今夏に主力車種であるスポーツセダン「Q50」の販売に合わせ、栃木工場(栃木県上三川町)での生産を先月から開始。昨年実績の約12万台からの上積みを図る。
ホンダは、「アキュラ」ブランドのセダン「RLX」の販売を3月に開始。1~5月の販売は、9.8%増の6万3216台と伸びた。
今月、スポーツ用多目的車(SUV)「MDX」も投入したのに続き、年内にもハイブリッド車(HV)「RLXハイブリッド」を発売するなど新車を相次いで投入し、13年度の販売台数は前年度より1万台以上多い17万台超えを目指す。
今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で経済見通しが上方修正されるなど米景気回復が本格化するなか、米高級車市場も、1~5月の販売が9.9%増の69万9622台に達するなど高い伸びを続けている。3社が相次いで新型車を投入しているのはこのためだ。
トヨタは「(全社的に)ディーラー経由の販売が強さをみせている」(レンツ専務役員)と手応えを感じている。こうした市場環境が今後も続くとの判断が、米国でのレクサス生産を決めた背景にある。
ケンタッキー工場を5億ドル(約490億円)かけて拡張し、15年から中型セダン「ES」を年5万台生産する。現地生産で、円高による利益圧迫を心配せずに済むようになることはいうまでもない。
日産も、これまで円高による輸出採算の悪化で、「インフィニティが日産全体の営業利益に占める割合は1%未満」(カルロス・ゴーン社長)となるなど為替相場の変動に苦しめられてきた。このため米国での生産を検討。今後、収益性の高いインフィニティ事業を強化する構えだ。
米高級車市場への取り組みを強化しているのは、日本メーカーだけではない。ドイツのダイムラーやBMWのブランド「メルセデス・ベンツ」「BMW」も、着実にシェアを拡大している。1~5月は、メルセデスが11万7550台、BMWが10万9612台と、2ブランドがそろって10万台を突破し、日本勢を上回る勢いを見せている。
トヨタのレクサスは、1999年から13年連続で米国高級車市場でトップシェアを維持してきたが、東日本大震災で部品のサプライチェーン(供給網)がダメージを受けたことを機にドイツ勢にその座を譲り渡した。その後、ドイツ勢は、圧倒的なブランド力を武器に、2強の座を維持し続けている。
日本の3社は、ドイツ勢に対抗するため、米国市場でのブランド力強化を急いでいる。
トヨタは「『納車遅れを待ってでも、レクサスが欲しい』というほどの強力なブランド力がなかった」(同社幹部)との反省に立ち、4月から豊田章男社長がブランド力強化に向け陣頭指揮を取り始めた。
日産はインフィニティの販売攻勢の一環として、クーペやセダンなどのモデル名を「Q」、スポーツ用多目的車(SUV)などには「QX」として発売するなど統一感を持たせることでブランド力を強化する。ホンダも「ハイブリッド車(HV)の展開を増やすことで、ブランド力を上げる」(岩村哲夫副社長)考えだ。
しかし、課題は少なくない。専門家からは「レクサスは、円安メリットを生かして、装備品を充実させるなどの戦略が必要で、アキュラ、インフィニティは、まだまだ高級車としてのブランド力はない。日産ブランド、ホンダブランドとの明確な差別化が必要」(証券アナリスト)との声が出ている。(飯田耕司)