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土壌や地下水を浄化する鉄粉「エコメル」 国交省の“お墨付き”も
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汚染土壌などの浄化用に使われる鉄粉「エコメル」 鉄粉といえば、携帯の使い捨てカイロの中身として一般にもなじみが深い。実は鉄粉の用途として最も多いのは産業用部品の材料だが、近年、注目が高まっているのが、土壌や地下水の汚染を浄化させる用途だ。神戸製鋼所は「エコメル」という商標で、再開発用の土地などにおける環境浄化を図っており、さらなる販売拡大を狙っている。
鉄粉は一般に加工がしやすいため、焼き固めて複雑な形状の自動車などの部品として用いられるなど、産業用の用途が大半だ。
神鋼では、電炉などで溶かした鋼を、高圧水ジェットで微細に砕き、それを乾燥させた後に、さらに還元させるなどして作られる。同社の鉄粉は兵庫県の高砂製作所で、年約6万トンが作られている。
同社は、産業用用途に加えて、2002年に「エコメル」の販売を開始。工場跡地などの土地再開発を中心に、土壌などの汚染対策を実施してきた。
工場の跡地では、03年に施行された土壌汚染対策法にのっとり、ベンゼンやトルエン、ジクロロメタン、シックハウス症候群のもとにもなるホルムアルデヒドといった揮発性有機化合物(VOC)を分解するのに鉄粉を用いる。鉄の還元反応を利用して、塩素を吸着することで、ジクロロエチレンやトリクロロエチレンといった有害物を、最終的にエチレンとして無害化する仕組みだ。
代表的な使用例としては、汚染地下水がある場所に止水壁を設け、さらに浄化壁にエコメルを用いる。浄化壁の土の粒子の中に、さらに微細な鉄粉が入り込んでおり、ここを汚染水が透過する際に浄化される。
また同社は、10年の土壌汚染対策法の改正を前に、トンネル掘削工事の際の汚染処理に用いる重金属を吸着する新たな「エコメル」を開発。09年から発売している。こちらは主にヒ素を鉄イオンに吸着させて、無害なヒ酸鉄の結晶へと化学反応させる仕組み。近年では、人体にも必須ながら、過剰摂取すると極めて毒性の強いセレンの対策として、「鉄粉以外に有効な対策はない」(同社)とされるほどの有効性が指摘されている。
重金属の吸着では、重金属に汚染された土を盛り土する際に、エコメルを使った吸着層を下に敷き詰めることで、下にたまる重金属汚染水を吸着層が浄化。従来は汚染の可能性がある土を鉄粉と均一に混ぜ合わせて浄化を図っていたが、吸着層を敷き詰める方法にすることで、「コストで約2割、工期については約6割」(同社)も削減することが可能という。
これらの土木分野に加え、さらに可能性は広がっている。水処理についても10年からプラントで試験を行っているほか、カドミウム汚染米の対策でも試験段階に入っており、農業分野での活用も期待されている。その他の自然環境保全についても、何らかの形で成果を得られないか、実験が進められている。同社では、「社会ニーズを先取りした開発で、より社会貢献ができれば」と話す。
安定した品質で、大量に供給することが可能であることなどから、大規模工事にも有効だという。同社は「安心できる土地再利用に貢献したい」と話す。今年2月には国交省の新技術情報提供システムにエコメルが登録された。国交省の“お墨付き”を受けた格好で、神鋼は採用拡大に向けた技術提案活動をさらに積極的に推進していく方針だ。