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おいしくないわけがない キーコーヒーが世界一誇る「トアルコ トラジャ」

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おいしくないわけがない キーコーヒーが世界一誇る「トアルコ トラジャ」

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コーヒー生産の「すべてを経験した」と語るパダマラン農場のユスフ農場長。背景の雲海の中に農場が広がる=インドネシア・スラウェシ島トラジャ県  幻の豆 品質向上の秘訣

 「品質を高める努力は世界一、おいしくないわけがない」

 コーヒー卸大手のキーコーヒー社員がみな口をそろえてそう誇るコーヒー豆がある。インドネシア・スラウェシ島の自社農園を中心にした高地で生産する「トアルコ トラジャ」だ。日本では高級品として知る人ぞ知る存在。世界的にコーヒー消費量が伸びる中、欧米でも知名度が向上してきた。一層の知名度向上を目指し、国内外で同社初となる直営カフェをインドネシアで展開する。

 インドネシアの秘境

 トアルコ トラジャを生産しているのは、インドネシアの中央に位置するスラウェシ島南スラウェシ州南部マカッサル市の空港から車で北に約10時間のトラジャ県。同県中心市街地ランテパオから四輪駆動車で山岳地帯を約2時間、道なき道を登ったところにあるのが、キーコーヒーと現地企業との合弁会社トアルコ・ジャヤ(ジャカルタ)が運営する「パダマラン農場」だ。

 「かなり揺れます。酔い止めの準備を。車が立ち往生したら、ドライバーと一緒に押すことになるので…」

 トアルコ・ジャヤの中野正崇副社長がそう警告する通り6月初旬に訪れた農園までの道は、50センチ以上の深さはあろうかというわだちもある悪路。「以前、車が横倒しになったこともある」(中野副社長)といい、激しい揺れに身体を支えるのがやっとだった。

 たどり着くのも大変な“秘境”で生産する理由は、同地が高品質なアラビカ種とよばれる品種の生産に最適なため。標高1000メートルを超える高地ながら、赤道直下で日中の日差しは強く、雨量も多いうえに、土壌も肥沃(ひよく)だ。

 「すべての要素がバランスよくそろっている」。早朝、高台から眼下の農場を覆うように広がる幻想的な雲海を見渡しながら、ユスフ農場長はそう誇らしげに語った。約30万本のコーヒーの木がうっそうと茂る530ヘクタール(東京ドーム約110個分)の広大な農場では、6月にコーヒーの実が真っ赤に熟し始め、7月にかけて収穫のピークを迎える。

 持続可能な農業

 同島がオランダ領だった戦前、トラジャ産のコーヒーは欧州の王侯貴族が好んで飲む高級コーヒーとして確固たる地位を築いていた。しかし、戦後に農場は放置されて荒れ放題に。いつしか“幻のコーヒー”となった豆を再び本格的に生産しようと、1970年代にキーコーヒーがトラジャの農場開拓に乗り出した。「道をつくり、土を耕し、コーヒーの木を植えるところから始めた」と、20代だった当初から農場で働き、当時を知るユスフ農場長は振り返る。

 現在は「最盛期は500人が収穫作業に従事する」(ユスフ農場長)と、周辺の雇用にも大きく貢献するようになった。

 機械で収穫する農場もある中、パダマラン農場はすべて手摘みで、完熟した実だけを選んで摘む。来年の収穫に影響が出ないように摘み方に工夫を加えているほか、木を植える間隔も実が最もよく育つよう何度も調整した。

 持続可能な農業にも取り組む。肥料にはコーヒー豆を取り出した後の果肉に落ち葉などを混ぜたものを使用。農薬も減らし、「現在はほとんど使用していない」(同)。元のジャングルに自生していた木を戻すなど「極めて自然に近い状態」(同)にし、レインフォレスト・アライアンスなど国際的な自然保護団体から認証も得た。

 今後3~5年で世界ブランド

 「品質を上げるために研究に研究を重ねてきた」(トアルコ・ジャヤの渡辺隆生産担当取締役)という取り組みは、収穫後の精選工程でも徹底している。摘んだコーヒーの実は機械で果肉をはがし、ぬめりがなくなるまで水でよく洗う。水洗した豆は天日または日本から導入した大型乾燥機で乾燥させ、含水率を最適とされる10.5%に統一する。

 乾燥後に脱穀した生豆(焙煎できる状態にした豆)を、次は一粒一粒、手で選別し、虫食いや割れ、変色など9項目でチェック。規格外の豆を取り除く。チェックを通った豆を専門の検査員がさらにチェックし、合格しなければ再度選別し直す。

 最終テストは、実際に焙煎して淹れたコーヒーの味をチェックする「カップテスト」だ。最低3人でチェックし、「同じ袋のものでもばらつきがあればアウト」(渡辺取締役)。不合格となれば輸出しない。こうした厳しいテストをくぐり抜けてきた豆だけが、ワインのように温度管理されたコンテナで日本など海外に運ばれる。

 「他の産地もたくさん見たが、ここまで品質にこだわっているところはない」とユスフ農場長。現在、輸出量の多くは日本向けだが、「欧州の焙煎業者大手などから調達の打診を受けている」(中野副社長)など、徐々に名声を上げてきた。

 キーコーヒーの努力が実り、トラジャ地域ではコーヒー栽培が活発化。トアルコ トラジャではないが、トラジャ地域産のコーヒーが米大手コーヒーチェーンでも提供されるようになった。

 トアルコ・ジャヤは、トラジャ産の中でも最も品質の高いトアルコ トラジャブランドをさらに広めるため、数カ月以内にスラウェシ島最大の都市マカッサルでカフェをオープンする計画だ。キーコーヒーとして初めてとなる直営カフェでは「店内で焙煎して提供する。サイドメニューもそろえ、できればアジアの他国にも広げたい」(中野副社長)。

 1978年の発売から今年で35年が経過した。トアルコ・ジャヤの社名の意味は「トラジャ・アラビカコーヒーの栄光」。その名の通り「今後3~5年で、トアルコ トラジャブランドが品質、知名度ともに世界で認められているはずだ」。ユスフ農場長はそう確信している。(池誠二郎)

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