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関電ブラックアウトの危険性は? 命綱・火力発電所の“酷使”懸念
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関西電力の相生火力発電所。大半の原発が停止する中、高稼働が続く 冷房による電力需要が増える夏。原子力発電所の停止は長引いており、今年も火力発電所頼みだ。しかし東京電力福島第1原発事故以降、火力発電所トラブルの発表件数が増えている。火力発電所が1基か2基でも止まってしまうと、危機的状況に陥る関西で、電力不足による大規模停電「ブラックアウト」の危険性はないのだろうか-。
ボイラー出口配管からの蒸気漏れ、計器用変圧器故障、復水器真空度低下、排煙脱硝装置株の赤熱…。
関西電力が今年に入って発表した火力発電所のトラブルは10件以上。運転を数日間から2週間ほど停止し、補修して再開してきた。
これに対し、東日本大震災前の1年間では、トラブルによる火力発電所の停止件数は、わずか2件(赤穂発電所2号機、南港発電所3号機)だった。
震災後は、国内のほとんどの原発が停止し、その“穴”を埋めるため、関電管内の火力発電所はほぼフル稼働を余儀なくされているが、「そもそも火力はこんな使い方をするものではない」(電力業界関係者)という。
震災前、原発依存度が5割以上と全国で最も高かった関電は、原発をほぼフル稼働させて基礎部分の電力をまかなってきた。火力発電所は出力を微妙に調整しながら、足りない部分を補う役割を担ってきた。
火力発電所の稼働状況は常に変化するため、もともと「疲労しやすい体質」だった。さらに、震災後はフル稼働を強いられ、長年にわたって蓄積された“疲労”が、一気に表に出てきたとの見方もある。
電力不足が招く最悪の事態は大規模停電「ブラックアウト」だ。
ブラックアウトを避けるためには、需要に対する供給力の余裕を示す「予備率」が8~10%程度必要とされる。しかし今夏、北海道、中部、中国以外の電力各社は、この水準を割り込んでいる。
最低は関電の3・0%。最大電力需要が2845万キロワットと予想されるのに対し、供給力は2932万キロワットで、その差は87万キロワットしかない。
関電の火力発電は、舞鶴発電所1号機(石炭、出力90万キロワット)、赤穂発電所1号機(石油、出力60万キロワット)、相生発電所1号機(同、出力37・5万キロワット)-など。夏場の需要ピーク時に1基か2基でも止まってしまうと、危機的な状況に陥る。
もっとも、ブラックアウトの可能性は限りなく低い。というのも、ライフラインである電力供給をめぐっては、さまざまな“防衛策”が用意されているからだ。
その一つが、大規模な電力不足に陥る恐れがあると、強制的に特定のエリアを停電させ、需要を削る「UFR」という装置。ただ、突然の停電は大混乱を招くため、電力会社も実施しづらい。
もう一つは、大震災直後に東電が実施した「計画停電」だ。事前に予告して地区ごとに順番に停電させるため、「UFRよりまだマシ」(関係者)だが、それでも、消費者から大きな批判を浴び、首都圏はパニック状態に陥った。
こうした事態を避けるためにも、火力発電所の“酷使”を速やかに終了させ、原発の停止を長引かせないようにすべきだろう。