SankeiBiz for mobile

LCC相手に王者・新幹線も危機感 価格競争回避…総合力で勝るのは?

ニュースカテゴリ:企業のサービス

LCC相手に王者・新幹線も危機感 価格競争回避…総合力で勝るのは?

更新

今夏のLCCと新幹線のバトル  夏休みシーズンが本格化し、関西で格安航空会社(LCC)と新幹線の顧客争奪戦がヒートアップしている。

 九州方面でLCCが割安な運賃で増便をかけて攻勢を強めるのに対し、高いシェアを誇ってきた“ディフェンディングチャンピオン”の新幹線が割引切符で迎え撃つ構図。新幹線は提供座席数や運行本数で勝るものの、LCCが掲げる「低運賃」という金看板の浸透は脅威。新幹線は危機感に駆られ割り引きに走った格好で、ガチンコ対決の軍配は一体どちらに上がるのか…?

 LCC、お盆に増便で囲い込み強化

 関西国際空港で昨年10月に供用開始したLCC専用の第2ターミナル。初の夏休みシーズンを迎え、若者や家族連れで連日ごった返している。利用者のお目当ては、低運賃で急速に浸透するピーチ・アビエーションだ。

 ピーチは昨年3月に関空を拠点に就航し、今年5月に利用者は早くも200万人を突破。勢いに乗り、お盆期間(10~18日)の需要増を見越して九州方面の「ドル箱路線」で増便に乗り出すことにした。

 関空-福岡線を1日4往復から5往復に、関空-鹿児島線は同3往復から4往復に増やす。片道運賃は福岡線が最安3590円、鹿児島線が同4290円。増便によるさらなる利用増は確実だ。

 関西と九州を結ぶ路線は他のLCCも重視。成田空港が拠点のジェットスター・ジャパンは関空-福岡線を同3490円とピーチより100円安く運航し、こちらも順調に利用者を伸ばしている。

 新幹線はLCCに戦々恐々

 快進撃を続けるLCCに危機感を抱くのは新幹線だ。山陽・九州新幹線では新大阪-博多間の片道料金は通常1万4890円で、新大阪-鹿児島中央間になると2万1600円。JR西日本の真鍋精志社長は、「LCCと料金勝負はできない」と認める。

 それでも手をこまねいているわけにはいかない。JR西は3月、山陽新幹線で割引切符「スーパー早得きっぷ」を発売。乗車日の1カ月~2週間前にインターネットで予約すれば、新大阪・新神戸-小倉・博多間が通常より約3割安い1万円で利用できる。

 7月からはJR九州も加わり、これを鹿児島方面などに拡大。新大阪・新神戸-鹿児島中央間は1万4千円としており、「想定を上回る売れ行き」(JR西の担当者)だ。9月までの期間限定だが、延長する可能性もある。

 新幹線、「消耗戦はムリ」

 ただ新幹線は、LCCとの“消耗戦”を続けることは難しい。JR西などは在来線を含め広範な交通ネットワークを維持しなければならず、“ドル箱”である新幹線料金の大幅な値下げには踏み切れないのが実情だ。真鍋社長は「徹底した価格競争はしない」と言い切る。

 そこで新幹線が売りにするのが、「大量輸送」。1編成(8両)500人以上を運べる山陽・九州新幹線は新大阪発着で1日約40往復する。1便200席弱で1日数往復にとどまるLCCに比べれば、利便性の差は歴然だ。

 航空機の利用では、都心から離れた空港に行くまでの手間と交通機関の運賃も見過ごせない。

 たとえば、JR大阪駅-関空間の鉄道・バス料金はほぼ1000円を超える。航空業界の関係者は「総合的にみれば、LCCは新幹線とは勝負にならない」と指摘する。

 “航空連合”の逆襲

 実際、京阪神-福岡間は新幹線が8割以上のシェアを握るなど、新幹線の優位は固い。とはいえ「一定の影響を受けた」(JR西の真鍋社長)と、LCCが牙城を切り崩しつつあるのは事実だ。

 ピーチの井上慎一最高経営責任者(CEO)は「LCCのビジネスモデルを理解してもらっている」と利用者獲得に自信をみせる。さらに夏休みが終わった10月には、中堅航空会社のスターフライヤーも片道最安4500円で関空-福岡線を開設する。

 空と陸のバトルは当分収まりそうにない。(中村智隆)

ランキング