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サントリー「水と生きる」面目躍如 ペットボトルで国内最軽量化

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サントリー「水と生きる」面目躍如 ペットボトルで国内最軽量化

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「サントリー天然水」のペットボトルを手に「消費者の声が『最軽量化』の後押しになった」と語る岸重信部長  サントリー食品インターナショナルが販売する国産ミネラルウオーターのトップブランド「サントリー天然水」が今年、ペットボトルを刷新した。

 2リットルボトルと550ミリリットルボトルで従来比16~18%の軽量化を達成。別の飲料メーカーが保持していた「国産最軽量ボトル」の座を奪取、“水と生きるサントリー”の面目躍如となった。社内での異論も少なくなかったが、「お客さまと家族の声」が開発担当者の背中を押した。

 1991年の発売当初のペットボトル(2リットル)重量は80グラムだったが、6回改良し今年2月からは29.8グラムに軽量化。550ミリリットルボトルも5月に11.3グラム(自動販売機向けを除く)まで軽くした。合成樹脂の素材も見直し、全体の3割を占めるエチレングリコールをサトウキビ由来に改め、石油由来の原材料使用量を従来ボトル比41%削減した。

 ボトル下部にバネ構造

 消費者の環境意識の高まりに応じ、飲料各社は容器の改良にしのぎを削る。革新的軽量化で業界の話題となったのは、日本コカ・コーラが2009年に投入した「い・ろ・は・す」だ。500ミリリットルのボトル重量は12グラム。当時の国産最軽量18グラム、輸入含む国内最軽量14グラムを軽々と抜き去った。

 「柔らか過ぎるペコペコのボトルは、消費者に受け入れられない。そんな業界の常識が変わった」。グループ各社のサプライチェーン・マネジメントを担うサントリービジネスエキスパートの岸重信部長は、ライバル企業の功績をそう称賛する。

 もちろん、サントリーも指をくわえてみていたわけではない。10~11年に「天然水」の2リットルボトルを47グラムから36.2グラムに、550ミリリットルを25グラムから13.5グラムに大幅軽量化。この際に、強度を増すため特許技術「ボトル下部のバネ構造」を開発した。今回もこの技術を活用、さらなる軽量化を果たした。

 一連の改良に伴い、3工場のボトル製造設備の改造に40億円以上を投じたが、岸部長は「(2リットル換算で年間約4億本を出荷する)『天然水』の販売数量の大きさに加え、原油価格の高騰もある」と説明。薄型軽量化によって原材料使用量が減れば元は取れるという判断だ。「最軽量」「植物由来原料」をアピールすることでイメージ向上も期待できる。

 果汁・茶飲料もより薄く

 もっとも、具現化するまでのハードルは低くなかった。それは「こんなに柔らかいボトルで、本当に大丈夫なのか」と半信半疑だった物流、販売などの関係部門や経営幹部らを説得することだった。

 しかし、岸部長には自信があった。大幅な軽量化の是非について社内議論が進んでいた10年当時、7歳と5歳だった息子らが試作ボトルを手にした感想、すなわち「お父さん、このペットボトルは持ちやすいね」の一言があったからた。

 バネ構造とデザイン性を両立させるため550ミリリットルボトルの胴に入れた何本もの切れ込みは、手が小さく、つかむ力が弱い子供でも飲みやすいという効果をもたらした。開発チームの祖父母などにも試してもらい「水滴でぬれていても滑りにくい」と好評価を得た。

 今回の軽量化をプッシュしたのも、顧客窓口に寄せられる「ボトルをもっとつぶしやすくして」という声だった。「柔らかさに慣れてお客さまの感覚も変化してきた。今後も技術に磨きをかけたい」と岸部長。目標は、酸化に弱い果汁飲料や茶飲料のペットボトルをさらに薄く、軽くすることだ。(山沢義徳)

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