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北欧雑貨「タイガー」が残した功績 大阪で示した企業誘致のあり方

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北欧雑貨「タイガー」が残した功績 大阪で示した企業誘致のあり方

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レジ増設などのため臨時休業したデンマーク雑貨店「タイガー」=大阪市中央区  大阪・心斎橋に平成24年7月に日本1号店を開業し、連日の長蛇の列で話題となった、北欧の雑貨チェーン「タイガーコペンハーゲン」。世界に240店舗以上を展開する同チェーンの中で、大阪店は売り上げナンバーワンを記録するなど大成功だ。一方、タイガーを運営する日本法人ゼブラジャパン社は今年8月、本社を大阪から東京に移転。海外ブランドでは珍しい、大阪を足がかりにした日本展開はわずか1年だったが、関係者は大阪の企業誘致のあり方にも大きな功績を残したと指摘している。

 大阪を去った運営会社

 移転の経緯は、ライフスタイルブランドを展開するサザビーリーグ(東京)が今年7月、ゼブラ社に出資し、その後、ゼブラ社の本社を東京へ移転し、経営体制も一新させた。

 サザビーリーグは移転の理由について、「今後の展開などを考えた」と説明するが、東京・表参道で今年10月、旗艦店となる2号店を出店する計画だ。中期的には全国都市の路面店や商業施設、駅ビルなどに約50店舗を展開する計画で、今後は東京を拠点に戦略を練ることになる。

 7月に大阪市内で開かれた、ゼブラ社の元社長、クラウス・ファルシグ氏の講演会で、大阪商工会議所の佐藤茂雄会頭は「次は東京へ、さらに全国50店に、という計画をきいた。サポートしてきた大阪にとっても喜ばしいニュース」などと、日本での順調な滑り出しを祝ったが、「まずは大阪に、もっと(店舗を)出してほしかったが…」と本音?をポロリ。

 大阪進出は成功の鍵

 ファルシグ氏は「最初に大阪へ進出したことが成功の鍵だった」と振り返る。

 同社が日本1号店を大阪にした理由は「経済や都市の規模」「カラフルなアイテムが好まれる」など。“読み”は当たり、開店初日には2時間待ちの行列ができ、デンマークから来日したゼブラ社のレナート・ライボシツ最高経営責任者を驚かせた。

 想定を超える売れ行きで品不足となり、1カ月の休業を余儀なくされるほどの旋風を巻き起こし、売り上げは順調。年間売り上げは、世界の同チェーンでナンバーワンとなったのだ。

 タイガーの日本進出の手法は実にユニークだった。

 海外ブランドが日本に進出する場合、商社やコンサルタントなどの専門家が間に入るか、日本の事情に詳しいパートナー企業と一緒に事業をスタートするケースがほとんど。ところが、タイガーは単独で日本法人を立ち上げ、1号店をオープン。しかも、ファルシグ元社長が単身来日し、情報収集から始めたという。

 その際に活用したのが、日本貿易振興機構(JETRO)大阪と、大阪商工会議所・大阪府・大阪市が共同運営する大阪企業誘致センター(O-BIC)だ。

 これらの組織は、会社登記や広報などを支援し、通関などの専門家や同社とのビジネスを希望する日本企業などの紹介を、無償で行ってきた。

 世界に発信「チャレンジ都市大阪」

 支援側にとって、タイガーの“脱大阪”はさぞや残念だろうとも思ったが、O-BIC担当者は「大阪に残した功績は大きい」と明かす。

 大阪の企業誘致のスタイルは、機械や医療などの産業集積という地の利を生かし、メーカーと卸売業、卸売業と小売業など企業同士をマッチングさせる「BtoB」が主体だった。

 ところがタイガーは不特定多数の消費者を相手に、単独で進出。消費者のハートさえつかまえれば、こうした進出スタイルが関西に通用することを証明したという。

 「日本でのチャレンジをぜひ大阪で、と海外にアピールできることがわかった」と同担当者。在庫不足による休業は一見して大失敗だが、「温かく見守る大阪の風土が売り込めるのでは」とも。

 タイガーの成功は、膨大な資金がある大企業でなくても、大阪を足がかりに日本進出を果たせることを、海外に証明したことになる。O-BICは今後、タイガーを成功例として欧州などにPRしていくという。(阿部佐知子)

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