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「スター・トレック」は米技術開発の羅針盤?
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米ラスベガスで8月に開かれた「スタートレック」ファンのためのイベント。劇中の宇宙船のブリッジ(船橋)が再現された(AP) タブレット端末、音声で情報を検索できるソフト、3Dプリンター…。米国の企業が次々に送り出すユニークで革新的な製品を見て、ある映画を思い浮かべる人は多いだろう。米国でテレビドラマとしてスタートし、現在は最新作が公開中のSF映画「スター・トレック」。同作品は、米国企業の技術開発の羅針盤なのだろうか…。
スタート・レックの舞台は探査任務を帯びた大型の宇宙船。乗組員は冒険家であり科学者だ。
「コンピューター、この星域に関するデータをすべて出してくれ」
乗組員の指示に応じて、モニターに次々と資料が映し出される。
人の言葉を理解し応答するというこの機能。米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」搭載の音声アシスタント機能「Siri(シリ)」と同じだ。
劇中で、乗組員が手に持っているのは「iPad(アイパッド)」そっくりのタブレット端末。あらゆるデータを大量に持ち運ぶことができる。貸与品らしく、辞職するときは上司に突き返す場面も。
宇宙船の乗組員の居室や食堂には「フードディスペンサー」。食べたいものを注文すると、食器ともども物質を合成してくれる。食べ物以外も同種の「レプリケーター」という装置で立体成型できる。まるで「3Dプリンター」の発展形だ。
さらに、宇宙船内の機器のほとんどは、音声かタッチパネルで操作する。今の家電製品もどんどんこの方向に進んでいる。
スター・トレックは1966年に米国で放映がスタートし、登場人物を入れ替えながら5シリーズが制作され、映画は12本という長寿作品。タブレット端末など劇中で使われる機器類や操作の仕方は、当初から大きく変わっていない。米国のSFファンの潜在意識には、その世界観がすっかりすり込まれているのだ。
アップルやグーグル、ベンチャー企業の技術開発の現場には、「ギーク」と呼ばれる人たちが多いという。日本でいう「理系オタク」のような人たちだ。幼い頃からスタートレックを見て、「あんなのがあればなあ」と夢想していたとしても不思議ではない。
日本で、魅力的な小道具がたくさん出てくるお話といえば漫画「ドラえもん」だ。しかし「タケコプター」を想起させるような技術はまだ出てきていない。
ただ、手塚治虫の「鉄腕アトム」は、日本が世界に誇るロボット技術開発の原点となっている。ロボットを「主人公」に未来を描いた漫画やアニメはほかにもたくさんあり、そこで当たり前のように描かれている「自動車の自動運転」などの技術開発は、日本が世界をリードしている。
SF映画や漫画に導かれるかのように研究開発が進む米国と日本。こうした傾向は、他のアジア諸国や欧州各国ではあまり見られない。しかし、いまや映像作品は、インターネットを通じて世界中に瞬く間に広がる。
日米のギーク、理系オタクはうかうかできない?(粂博之)