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クボタが日本のコメ輸出、農家を本格支援 TPPにらみ国際競争力高める

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クボタが日本のコメ輸出、農家を本格支援 TPPにらみ国際競争力高める

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日本米の輸出量 【成長ニッポン】

 TPPにらみ日本の農業底上げ狙う

 国内最大手の農業機械メーカーのクボタが、日本の農家がつくったコメの海外開拓に動き出した。農家の国際競争力を高めて輸出増を促すことで、農機関連ビジネスの底上げを図るのが狙いだ。日本が参加している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉では農林水産品の関税撤廃も議論され、一方で高齢化の進展で農業従事者の減少が続いている。農機メーカーが農家の体質強化を本格支援する動きは、日本の農業の未来に“突破口”を開く可能性も秘める。

 農機販売拡大へ

 世界の食材、料理が集まる食の宝庫・香港。日本食の人気は高く、日系の外食チェーンの進出も活発だ。ただ、コメについては全量を輸入に頼っているのが現状。こうした市場動向に目をつけたクボタは「日本米輸出プロジェクト」の第1弾の舞台に香港を選んだ。

 このプロジェクトは、クボタが新潟の農家とタッグを組み、コメを売り込むもので、2012年から本格的に事業を開始した。

 国内トップブランド、コシヒカリの産地である新潟県は、国内最大級の米の生産量を誇る。しかし、近年は需要が減少傾向にあり、販路拡大の一環として輸出促進に力を入れている。

 一方、クボタにとってもコメ需要の低迷は、農機の販売にダメージを与えかねない。こうした市場背景を踏まえ、両者が手を結んだ。

 日本米の輸出量は右肩上がりで伸びている。農林水産省の調査によると、2006年は967トンだったが、12年は2.3倍の2202トンに拡大した。

 ただ、クボタの海外開拓の手法は、これまでのコメ輸出とは大きく異なり、日本米の魅力をより高めている。

 現在、輸出の大半は、日本で精米したコメを輸送し現地で販売する方式。この場合、時間とともに鮮度が落ちるため、本来の味を現地で再現することは難しい。

 これに対してクボタのプロジェクトでは、舌が肥えた現地の消費者に満足してもらうことを狙った。具体的には、コメの鮮度を保つため玄米の状態で輸出。香港にあるクボタの冷蔵倉庫で保管し、注文を受けてから精米、販売するという手法を取り入れたのだ。

 工夫はこれだけにとどまらない。コメのおいしさは品質だけでなく、炊き方に依存する部分も大きい。ただ、現実的には「手作業の部分を伝授するのは難しかった」と、同社の高橋元戦略企画部担当部長は語る。

 そこで、クボタがコメを購入してくれたユーザーに提案しているのが、業務用の全自動洗米炊飯器「ライスロボ」だ。この結果、トラクターなどの土作りから、炊飯に至るまで、輸出米について一貫してクボタの製品が各工程で携わるビジネスモデルができあがった。「少々高値だが、おいしくて安心」-。現地の消費者の間で、評判は上々だ。

 第2弾のターゲットは香港と同様に日本食レストランが増え、富裕層が多いシンガポール。すでに現地に、全額出資の「クボタ・ライス・インダストリー」を設立しており、10月から事業を開始する。こちらは、新潟に加え山形県産のコメも取り扱う。15年には香港とシンガポールを合わせ、13年見通しの約5倍に相当する1230トンに増やす計画だ。

 高齢者の作業軽減も

 香港やシンガポールのスーパーの店頭には、東南アジアを中心に世界のコメが並ぶ。価格は日本米が3倍以上とされる。

 味、品質を売り物にするだけでは市場の開拓に限界があるのも事実で、価格の国際競争力を高めることが必要だ。それには生産プロセスの合理化が不可欠になる。

 この領域でもクボタは積極的な支援に乗り出している。そのひとつが、苗作りを必要としない鉄コーティングもみによる直播農法だ。

 農家は高齢化が進み、稲作農家の平均年齢は67、68歳に達する。とくに苗作りは体力的負担を強いられる。田植え時期には重量が約5キロの苗箱を、何百箱も運ぶ必要があるからだ。

 こうした中、じわじわと広まりつつある鉄コーティングもみは、田植えの代わりに鉄粉をコーティングした種もみを直接まく農法。育苗作業を軽減し、コスト削減につながるほか、鉄粉がおもりとなって、水を張ったときに流されにくくなる。宮城県農業高校では、この農法を使って被災農家の農業再生を支援している。この農法による2013年の作付面積は8000ヘクタール強とみられ、12年に比べ約5割増となった。本格普及はこれからだが、廣兼以斉・アグリソリューション推進部ソリューション推進グループ長は「高齢者からのニーズにうまくはまる形で伸びている」と期待を込める。(伊藤俊祐)

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