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【フジテレビ商品研究所 優品ズームアップ】三菱電機
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□ジャー炊飯器「蒸気レスIH本炭釜」
■かまど炊きのおいしさを追求
IHジャー炊飯器の市場では、高級機種の伸びが目立っている。「本炭釜」や「蒸気レスIH」など、おいしいご飯を炊くために独自の技術を投入してきた三菱電機では“かまど”で炊いたご飯のおいしさを追求した「蒸気レスIH本炭釜」シリーズの新商品をこの8月に発売した。
三菱電機が炊飯器の開発で目指すおいしいご飯は、“弾力があって口の中でほぐれやすい”炊きあがり。そのためには、ご飯同士が密に固まらないような炊き方が必要となる。炊飯中の釜内部は、水中に溶け出したデンプンが糊化して粘った状態になっている。このため、米粒が熱対流によって大きく攪拌(かくはん)されるような状況は起こりにくく、米粒はその位置をほとんど変えずに炊飯が進行する。
◆ムラなく加熱
粘度の高い炊飯中のご飯全体をムラなく加熱するために欠かせないのが、大きな泡を発生させる強い沸騰力だ。大きな泡がご飯の層を貫通することで、熱を伝えながらご飯粒間に隙間を形成する。大きな泡が連続して発生したなごりが“カニ穴”と呼ばれる穴で、その周辺は上昇する泡によって“ご飯粒が立つ”炊きあがりになる。
大きな泡を連続して発生させる強い沸騰力を実現するために開発されたのが、2006年に発売された「本炭釜」だ。ステンレスを発熱素材とする通常のIHジャー炊飯器の内釜は、実際に電流が流れて発熱しているのは表面から0.24ミリメートルのごく限られた部分でしかない。熱伝導の良い銅やアルミニウムを貼り合わせて、ステンレスのごく表面で発生した熱を全体に伝えている。
これに対し、炭(炭素素材)だけでできた素材を削りだして作った「本炭釜」は、表面から10ミリメートルとステンレスの約40倍の範囲で発熱する。また、熱伝導率も高く、力強く均一な加熱が可能になる。さらに、「本炭釜」の底面には、中心部に向かってわずかに厚くなるようにテーパーが付けてある。コイルの真上で発生した熱を中央部へ導くとともに、スロープを伝わった気泡が中心付近で大きな泡となるための工夫だ。
◆蒸気レスの威力
おいしいご飯を炊くために寄与したもう一つの技術が、09年に発売された「蒸気レス」の機構だ。「はじめチョロチョロ中パッパ」という言葉で表されるように、ご飯をおいしく炊くためには、一定時間強く加熱して糊化を進める必要がある。
しかし、単純に加熱を続けると、“オネバ”が発生して噴きこぼれてしまうことが避けられない。
羽釜を使ってかまどで炊く場合は噴きこぼれを気にすることはないが、炊飯器では周囲を汚す噴きこぼれは厳禁だ。
このため、通常の炊飯器は、噴きこぼれる前に火を弱めて間欠的な沸騰を繰り返さざるを得ない。発生する蒸気を水でトラップする「蒸気レスIH」の機構は、蒸気を出さないだけでなく、“中パッパ”の加熱を続ける「特許・連続大沸騰」が可能になり、さらに、捕集した“オネバ”のうまみ成分を蒸らし時にご飯に還元することが可能になった。
三菱電機では、さらなるおいしさの向上を目指して、かまどで炊くご飯のおいしさの秘密をより深く探求することに取り組んだ。着目したのは、羽釜の羽根の効果。羽釜の羽根はかまどに密着して熱気が逃げるのを遮断するため、釜全体が加熱されて均一で強力な沸騰が得られている。一方、従来の炊飯器は、内釜と本体の間の隙間から熱気が逃げていた。
そこで、「熱密封リング」で内釜と本体の隙間をふさいだところ、内釜が均一に加熱されるようになり、通常他の部分に比べてやわらかめに炊きあがる傾向が見られる釜底の中心部もおいしい硬さに炊きあがるようになった。釜全体をしっかり加熱することは、甘みやうまみを含んだオネバ成分の発生も促す。表面をオネバ成分で包まれたご飯は水分が逃げにくく、冷めてもふっくらとした食味が保たれる。
従来の炊飯器では、炊飯量の多少によって炊きあがりに差が出ることが課題として残されていた。保温吸水が完了して本炊きに移行する過程では、温度の上がり方を検知して炊飯量を推定し、理想の炊きあがりになるように調整が可能だ。しかし、季節によって初期の水温が異なるため、保温吸水工程では温度の上がり具合で炊飯量を推定することが難しく、中間的な炊飯量(5.5合炊きなら3合)に合わせて加温していた。そのため、最大容量で炊いた場合や5.5合炊きで1合だけ炊いた場合など、硬さや粘りが異なる炊きあがりになることが避けられなかった。三菱電機では、重量センサーを搭載しスタート時から炊飯量を把握するシステムを導入。保温吸水工程を含めて、炊飯量に応じた最適制御を実現した。
◆15モードで選択
ご飯の味は、炊飯器の性能だけでなく、米の品種や産地などによっても異なる。加えて“硬め好き”“もちもち好き”といった、食べる人の好みによってもおいしさのレベルは異なってくる。精密な加熱制御によって、標準的な最適炊きあがりから自分好みの味への調整もより広い範囲で、かつ精密にできるようになった。
“硬め-やわらかめ”5段階דもちもち-しゃっきり”3段階、計15モードの炊き分けが可能(炊分け名人)で、その機能を応用して、全国作付面積の8割に相当する20銘柄の米の特性に応じて15モードの中から最適な加熱制御を自動で選択、最適な味に炊くモード(銘柄芳潤炊き)も搭載されている。
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■フジテレビ商品研究所
「企業」「マスコミ」「消費者」をつなぐ専門家集団として1985年に誕生した「エフシージー総合研究所」(東京都江東区、従業員40人)内に設けられた研究機関。「美容科学」「食品料理」「環境科学」「生活科学」の各研究室で暮らしに密着したテーマについて研究を行っている。