SankeiBiz for mobile

【ケータイWatch】ゼンリン、検索大手にデータ提供

ニュースカテゴリ:企業の情報通信

【ケータイWatch】ゼンリン、検索大手にデータ提供

更新

 ■地図アプリにおもてなしの心

 今やスマートフォン(高機能携帯電話)に欠かせない機能の一つとなった「地図アプリ」。iOS6が登場した際にあった混乱を思い起こせば、多くのユーザーにとって地図やナビゲーションといった機能の重要性がかつてないほどに高まっていることが理解できるはずだ。

 そんな地図アプリやナビアプリの基本となるのが、地図データだ。そんな地図データがどのように作られているのか、グーグルやヤフーなどに地図データを供給するゼンリンを取材した。

 ◆1000人で制作

 ゼンリンの地図データ制作の拠点となるのは、北九州市にあるゼンリンテクノセンター。同センターでは、研究・開発部門、地図整備部門、あわせて約1000人のスタッフが働いており、ここで普段我々がスマホやカーナビ上で目にする地図データが制作されている。

 ゼンリンでは、全国に調査拠点を約70地点設けており、調査人員は約1000人。実際に調査スタッフが現地を歩いて調査する「歩行調査」と、高性能の衛星利用測位システム(GPS)やジャイロセンサー、360度カメラなどを装備した特殊車両を走らせて調査する「走行調査」の2通りの手法を用いて全国各地を隅々まで調査している。こうして調べられた情報がテクノセンターに集約され、データ化されていく。

 1948年に「善隣出版社」として創業したゼンリンでは、長らく住宅地図を基本に地図を整備してきた。「ターニングポイントとなるのは、1984年のデータベース化」と語るのは、同社制作本部制作統括室業務管理部の新真希氏。同社ではまず東京23区から全国の住宅地図の電子化に着手。この際、「行政界データ」「道路データ」「家枠データ」「文字データ」といった複層(レイヤー)構造で地図データを整理し、ニーズに応じて提供できる体制を作った。現在では、レイヤーの数は1000枚ほどにまで細分化されているという。

 調査用の紙の住宅地図を持ち歩き、そこに赤ペンで差分を記録していくという歩行調査は地道な積み重ねだが、住宅地図のデータ化の過程もまた地道なものだ。パソコンの横には調査用紙が貼り付けられた大型のタブレットがあり、これを「ハンドデジタイザ」と呼ばれる特殊なマウスを用いて線画に落として行く。

 こうした作業風景からは、同社の住宅地図に対する並々ならぬこだわりを感じられるとともに、地図の表面には表れない数々のデータの重要性を垣間見ることができる。

 例えば、自動車のナビゲーションを行う上では、進行方向の規制や通行可能時間帯といった情報が大事になる。一般的な地図では、一方通行の方向ぐらいは記載されているかもしれないが、時間帯による規制や右折禁止といった情報は省略されている。実際のカーナビなどでは、このような規制情報を加味した上でルート案内されるため、目に見えないデータの蓄積が最終的に精度の差を生むことになる。

 ◆入り口へ案内

 さらに、同社では建物の入り口へのアクセス経路を歩行調査で調べ始めている。「目的地付近に到着しました」とカーナビに言われたが、本当の目的地は川の向こう側だった--というのはレアケースかもしれないが、通常のナビゲーションシステムでは、目的地の緯度経度に最も近い道路上の地点を案内する、というアルゴリズムになっているため、着いたと言われたが行きたい建物が見当たらない、という事象が発生する。そこで同社では、建物の入り口への経路を建物ごとに確認し、誘導するのに最適な道路とひもづけるデータの制作を行っている。

 東京五輪誘致の際には「おもてなし」という言葉が使われたが、まさしくこうした目には見えない「おもてなし」の心がゼンリンの地図作りの現場にも見て取れる。カーナビを使ったり、スマホで歩行者ナビサービスを使ったりする場面や、ネットショッピングやモバイルコマースで購入した物が素早く確実にユーザーの元に届けられる裏側では、こうした緻密な地図データが活用されているのだ。(インプレスウオッチ)

ランキング