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「軽自動車」増税は弱い者いじめ? 統計データで浮かぶ複雑な事情

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「軽自動車」増税は弱い者いじめ? 統計データで浮かぶ複雑な事情

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軽四輪車保有台数と世帯当たり普及台数  モーターマニアから厚い支持を得ている自動車専門誌「ニューモデルマガジンX」の最新11月号に日本共産党の志位和夫委員長が登場。同党の機関誌「赤旗」のサイトがこれを紹介し、「軽自動車の増税反対」をインタビューで訴えたことを伝えた。同誌への登場は平成20年以来という。来年4月からの消費税の税率引き上げの余波で、軽自動車税への増税案が浮上する中、早くもかみつく共産党。軽自動車メーカーも「弱い者いじめだ」と牽制(けんせい)を強めている。総務省がもくろむ軽自動車の増税は、悪代官の暴挙か-。        

 弱い者いじめか

 「志位氏は『軽自動車は所得の低い人が乗っている傾向があるといわれています。つまり、庶民増税になります。逆進的な税体系になるわけですから、反対です』と表明しています」

 赤旗のサイトは、軽自動車増税へのスタンスを問われてこう反対したと伝えた。「逆進性」とは所得が低い人ほど税金の負担感が増すこと。消費税の増税議論の際にも焦点となった論理を持ち出しているわけだ。

 この発想は軽自動車メーカーも変わらない。

 スズキの鈴木修会長兼社長は「弱い者いじめの最たるものだ」と痛烈に批判。「所得の比較的少ない人が生活のため、商売のために利用している」(鈴木氏)と反発している。ダイハツの三井正則社長も「地方では軽は生活の足。家計を考えると軽しか選べないお客さまもいる」(産経新聞インタビュー)と懸念している。

 軽自動車の増税は、弱者叩きになるのか。賛否のスポットはそこに当たっている。では軽自動車税が増税されれば、どんな人に痛みを及ぼしえるのか。統計からその像を探った。   

 影響トップは佐賀?

 軽自動車の魅力は車両価格の安さと税負担の軽さ、そして低燃費。加えて、少子化で「4人乗りの軽自動車で十分」という家庭の需要をとらえて、存在感は増すばかりだ。とりわけ、公共交通が乏しい地方で便利さを発揮している。

 ちなみに都道府県別の軽自動車の普及台数(25年3月末)をみると、トップは佐賀県だ。31万6884世帯あたり、軽の保有台数は31万7471台で、つまり、1世帯あたり軽を1台以上を持っている計算になる。

 世帯あたりの保有台数を多い順にランキングすると、鳥取、島根、山形、長野、福井、沖縄、新潟、山梨、宮崎…などと続く。

 一方、最も普及率が低いのは東京都で、645万2253世帯あたり、72万6725台。普及率は0・11%と10世帯に1台程度しかない。次いで、普及率が低いは、神奈川、大阪、埼玉、千葉-などの順。

 大都市圏よりも地方の方が、増税の負担を強いられる家庭が多い構図が浮かぶ。

 所得と軽自動車の普及率との関係はどうか。

 都道府県別の1人あたり所得ランキング(県民経済計算22年度ベース)で下位20位の登場する県のうち、12県が普及率トップ20に名を連ねる。

 保有率トップの佐賀は所得では30位(253・3万円)、2位の鳥取は43位(226万円)、3位島根は40位(231万円)と下位にある。

 軽自動車保有率で全国7位の沖縄は所得では最下位の202万5千円。東京との所得(430・6万円)の差は倍以上だ。

 大都市に比べて所得の低い地方は、軽自動車の保有率も高い傾向がうかがえ、増税の痛みは深そうだ。これだけみると、軽の増税は、地方住民へのムチのように思える。

 しかし、そう単純にいえないところに自動車税の難しさがある。なぜなら、増税しなければ、地方の財政がますます苦しくなる可能性があるからだ。

 地方税減収の手当は

 重要なのは、軽自動車税が地方税(市町村税)であることだ。

 まず軽自動車税の増税案が浮上した経緯を振り返ってみる。

 消費税の税率が27年10月に10%に引き上げられる代わりに、自動車購入者への二重課税として問題視され続けてきた自動車取得税が廃止される予定だ。取得税は地方税(都道府県税)だ。廃止されると約1900億円も地方税収に穴があき、行政サービスが悪化しかねない。取得税のうち、7割近い額が市町村に渡されてきた。そこで、目を付けられたのが同じ軽自動車税だった。税収がそのまま行政サービスに還元されるなら、理屈上は、住民にもメリットはあるからだ。

 もう一つ重要なことは、やりようによっては、自動車産業の活性化につながるかもしれないという期待だ。

 自動車税は年間2万9500~11万1千円なのに対し、軽自動車税は年7200円と抑えられている。軽の税金だけを大幅に上げれば、一時的に販売が激減するのは必至だが、環境の性能が高く、より利幅の大きい車へのシフトを促すことにつながるかもしれない。

 世界シェアを拡大する韓国ヒュンダイなどの新興国メーカーとの競争が激しい日本の自動車メーカーにとって、収益をあげ、企業体力をつけることは生き残りのカギだ。

 自動車取得税の廃止で目減りする地方税収の手当をどうするのか。産業政策として、軽の増税をどう考えるか。家計負担の問題だけではない、別次元のテーマが横たわる。

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