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盛り上がる「JSファッション」 女子小学生がおしゃれ楽しむ時代
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小物にまで気を配り、ポーズと笑顔を決める子供たち=阪神百貨店梅田本店 おしゃれ好きな女子小学生向けの子供服市場がここ数年、好調だ。頭文字をとって「JSファッション」と呼ばれ、人気ブランドは売り上げを伸ばしている。ファッションショーでは、トレンドをバッチリ決めた女子小学生らがかわいさや着こなしを競い、百貨店も顧客参加型イベントを開催。アパレル、小売り、メディアがタッグを組み、市場を盛り上げている。
10月20日、大阪市北区の阪神百貨店梅田本店ベビー子供服売り場で開かれた「JSファッションパレード」。来店客が見守る中、約100人の子供たちがフロアをウオーキングし、自慢のファッションを披露した。
先頭を歩くのは人気ブランド「ロニィ」のオーディションに合格した女の子たち。歩く姿やポーズはモデル顔負けだ。
「彼女たちや雑誌モデルに憧れるおしゃれな女子小学生を、JSと定義づけています」と語るのは、阪神百貨店梅田本店・子供用品販売部の百原重夫マネージャー。5年ほど前から、小学生の意見を取り入れながら強化してきたJSファッション売り場は、今や“JSの聖地”と呼ばれる。
展開するのは「ロニィ」「シスタージェニィ」「アースマジック」など約10ブランド。ここ数年、売り場面積、売り上げともに毎年20%のペースで増えている。
ただ、モノを売るだけでは購買につながらない。「撮影会やショーなどハレの舞台を用意し、着る機会をつくってあげることが大切」(百原マネージャー)という。さらに、バレンタインデーに合わせた女の子同士のチョコ交換会といった仕掛けも。来店の動機をつくり、楽しむ場を提供してファン層を広げている。
ファッション誌の役割も大きい。専属モデルが誌面に登場すれば、ブランドの認知度が高まるだけでなく、着用した商品の売れ行きもアップする。
平成18年秋に創刊し、ブームを牽引(けんいん)してきた「ニコ☆プチ」(新潮社)は「カリスマ読者モデルが注目され、ブームが加速した」(同編集部)と振り返る。
23年2月には「JSガール」(三栄書房)が創刊し、メディアも活況。雑誌主催のイベントでは参加者同士がブログのアドレスを交換することも多く、交流の場にもなっている。
人気ブランド「シスタージェニィ」は、ニコ☆プチとの協業でイメージモデルのオーディションを実施。堺北花田阪急(堺市)など直営店で撮影会を開いた。雑誌への露出やイベント効果もあり、売り上げは右肩上がり。
「旬のファッションを、手が届きやすい価格で展開しているのも人気の理由」(ジェニィ広報)だ。
子供服の場合、大きめを購入することが多いが、JSたちはぴったりのサイズを好む。高学年にもなると格好いい見せ方を知っているのだ。
「親が子供服を選んでいた昔と違い、今は子供自身が選ぶ時代。子供目線で服を作ることが大切だ」と、ロニィを展開するアダプトの野口雅弘社長は話す。
同ブランドはコートから小物まで多品種を展開し、全身をコーディネートできるのが強み。ワンシーズンで数十万円分を購入する顧客も多いという。
ブランドの好調を受け、既存アパレルや小売店がJS市場に本格参入するケースも。少子化で国内の子供服市場が縮小傾向にあるなか、売り上げが見込めると熱い視線を注ぐ。
ただ、JSファッションは、ダンスを習う子供のファンが多いためか、黒、ピンクなどやんちゃなイメージが強い。一過性のブームで終わらせないためには、イメージにとらわれないものづくりもカギとなりそうだ。(ライター 橋長初代)