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“戦国時代”缶酎ハイ誕生30年 酒類市場回復の“切り札”となるか

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“戦国時代”缶酎ハイ誕生30年 酒類市場回復の“切り札”となるか

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居酒屋で「酎ハイブーム」が起こった時代(写真)に生まれた缶酎ハイ。市場は右肩上がりを続けている。  宝酒造(京都市)が初めて世に送り出した缶酎ハイが、今月24日に登場から30年を迎える。発売当初は「居酒屋の人気メニューが手軽に飲める」と人気を集め、今ではサントリー酒類やキリンビールなど、各社が多彩な商品を展開。バリエーション展開しやすいという特性もあり、「第3のビール」などと並び酒類業界の主戦場の一つとなっている。少子高齢化などの影響でアルコール消費が落ち込む中、“壮年期”を迎えた缶酎ハイは酒類業界の救世主となれるだろうか。

 “酎ハイブーム”に乗れ!

 宝が業界に旋風を巻き起こしたのは昭和59年。現在も販売している「タカラcanチューハイ」を投入した。当時は居酒屋のチェーン店が増え始め、若者の間で焼酎を果汁や炭酸水で割って飲む「酎ハイ」がブームとなっていた時代。宝は手軽に飲める缶入りの酎ハイで、トレンドの波に乗ろうと考えた。

 それまで世に出ていなかった商品なだけに、開発者は大阪のキタ、ミナミや東京の上野、新宿などの居酒屋に足繁く通い、繰り返し味を研究。

 「様々な酎ハイを味わいながら、理想的な味を求めて試作を繰り返した」(担当者)という。苦労の末に発売された「canチューハイ」は、新製品発表会の翌日から注文が殺到した。

 以来、タカラcanチューハイは250ミリリットル缶で160円という割安な価格(販売当時は140円)や、すっきりとした味わいが人気を集め、ロングセラー商品に。平成25年10月までの累計販売数は約1億2千万ケース(1ケース250ミリリットル缶24本)で、本数にして約29億本に上るという。

 酎ハイ“戦国時代”

 タカラcanチューハイが生み出した缶酎ハイ市場は、焼酎メーカーなどが次々と参入し、順調に拡大。その牽引(けんいん)役はタカラcanチューハイと、東洋醸造(現旭化成ファーマ)が発売した「ハイリキ」(現在はアサヒビールが販売)だった。

 その後、キリンやアサヒなどのビールメーカーも参入し、価格競争が激化。果物や香料などでバリエーションを付けやすいという商品特性も手伝い、各社が次々と新製品を投入、定番ジャンルへと成長していった。そして今、缶酎ハイ市場は“戦国時代”の様相を呈している。

 サントリーは瞬間冷凍した果実を使用した「-(マイナス)196℃」で支持を集め、キリンではウオッカベースでストレート果汁を用いた「氷結」が人気商品に成長。アサヒはアルコール分を3%に抑えた低カロリーの「すらっと」など、約10ブランドを展開している。

 宝によると、缶酎ハイの平成24年のブランド別販売数量ではキリンの「氷結」がトップ。2、3位にはサントリーの「-(マイナス)196℃」と「ほろよい」が続く。宝も「タカラ焼酎ハイボール」が4位に食い込み、タカラcanチューハイも10位と健闘している。

 拡大続ける缶酎ハイ市場

 少子高齢化や若者のアルコール離れなどを背景に、アルコール消費は減少傾向にある。24年のビール類の課税出荷数量は前年比1・0%減と、過去最低を8年連続更新した。

 だがこれに対し、缶酎ハイは元気だ。宝によると、缶酎ハイの出荷量は業務用を含めた業界全体で、昭和59年の約1千万ケースから平成24年には約1億2500万ケースにと増えた。

 サントリーによると、缶酎ハイやカクテルなどの「RTD(Ready To Drink、『栓を開けてすぐに飲める』の意)」市場は、25年には前年比約5%増に拡大したとみられるという。26年も3%程度拡大する見通しだ。

 宝によると、最近の缶酎ハイのトレンドは、アルコール度数が高くて甘くない「辛口・ドライ系」。「食事と一緒に楽しめる辛口のチューハイが市場で存在感を増している」(担当者)という。

 一方、「『強め志向』と『甘さ志向』の二極化でファン層が広がっている」(サントリー)とみる向きもあり、缶酎ハイ市場の裾野の広さと、さらなる市場拡大の余地があることを物語っている。

 今後も多彩な商品が相次ぎ投入され、缶酎ハイ市場の競争が激しさを増すのは必至。「缶酎ハイでお酒に興味を持つ人が増えてくれれば」(関係者)と、酒類市場回復の“切り札”として期待する声も上がり始めている。(中村智隆)

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