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農家向けEV拡大の兆し 伸び悩む市場全体の底上げなるか

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農家向けEV拡大の兆し 伸び悩む市場全体の底上げなるか

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超小型電気自動車(マイクロEV)の年間販売予測  超小型電気自動車(マイクロEV)などの農家向けEV市場が拡大する兆しを見せている。資材運搬や農業施設の電源としての利用を想定した低価格車の開発が活発化し、インフラ整備も急ピッチで進む見通しだ。専門家の間には農家でのEV普及が、伸び悩む市場全体の底上げにつながるとの見方も出ている。

 ガソリン車を代替

 仙台駅から南に車で40分の位置にある宮城県岩沼市。市内の農地の一角に3日、太陽光パネルを備えた「農業用充電ステーション」がお目見えした。

 圃場(ほじょう)への移動や資材運搬に利用する三菱自動車製のEV軽トラックに充電。軽トラに搭載した可搬式給電装置を通し、ビニールハウスなどへの電力供給も行おうという農林水産省などの実証実験のための設備だ。

 実験に参加している農家の寒風澤(さぶさわ)敦司さんは「使い勝手が良く、農作業に向いている」と話す。

 地方では燃料代高騰に加え、消防法改正で古い石油タンクの改修が義務づけられたことを機にガソリンスタンドの撤退が相次ぎ、ガソリン車やディーゼル車の利用が難しくなっている。これに代わる足としてEVの需要が高まり、関連メーカーが取り組みを活発化している。

 EVジャパン(大阪府豊中市)は昨年7月、1人乗りで車幅90センチの超小型EV軽トラ(本体価格52万2900円)を発売。「計画中の量産が実現すれば原価を半減できる」(西田長太郎社長)という。

 テラモーターズ(東京都渋谷区)は、圃場見回りなどの用途を想定し1回の充電費用がガソリン車の6分の1で済む電動バイクを全国の農機具販売店約150店で展開。年間約500台を販売しているという。同社は、農地でのEV需要が十分あるとにらみ、「年内にも80万円前後の価格で電動三輪車を投入する」計画だ。

 秋田県では関連19社、5団体で構成する「あきたEV研究会」が年度内をめどに、既存のガソリン車をEV軽トラとして利用できるようにするための装置開発を進めている。

 都市への拡大期待

 次世代自動車振興センターの調べによると、EV全体の市場規模は2006年度の505台から12年度には3万8707台に増加した。今年は海外メーカーの日本市場参入が本格化し、経済産業省が充電器設置を加速する計画だ。

 ただ、仏ルノー分を合わせて16年度までに世界で150万台を目指している日産のEV「リーフ」の国内累計販売台数が3万台程度にとどまるなど市場の成長ペースは鈍い。こうした中、急成長する農家向けEVの可能性に専門家も注目している。

 エレクトリフィケーションコンサルティングの和田憲一郎代表は「農家でEVのムーブメントが起こり、畑などの空きスペースに小型の充電設備が増えることで、結果的に都市部から郊外への移動も増え、面での広がりも期待できる」と話した。(那須慎一)

【用語解説】超小型電気自動車(マイクロEV)

 軽自動車より小さい1~2人乗りで、国土交通省のガイドラインによると、EVの場合、定格出力は8キロワット以下と規定される。農家では小型のEV軽トラのほか電動スクーターなどの需要も大きい。自動車大手各社は市街地を走るマイクロEVの開発を進めている。

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