SankeiBiz for mobile

【21世紀を拓く 知の創造者たち】J-POWER(電源開発)

ニュースカテゴリ:企業の経営

【21世紀を拓く 知の創造者たち】J-POWER(電源開発)

更新

久保田学さん  ■電力安定供給へ効率向上に挑む

 卸電気事業者として低廉かつ安定した電力供給を行うためJ-POWERは、発電効率を高める研究、無駄を省く設備更新と安定運用に向けた技術開発、環境への取り組みなどに力を入れている。そこには着実にミッションの達成を目指す多くの研究者、技術者たちがいる。その人的な厚みと、人材に支えられた設備群が同社の強みといえる。多くの研究者たちのうち3人に集まってもらい情熱の一端を語ってもらった。

                   ◇

 □久保田学さん…高い安全性に寄与

  ▽くぼた・まなぶ 茅ヶ崎研究所材料技術研究室課長(1993年入社)

 □山下洋さん…IGCC商用化へ

  ▽やました・ひろし 若松研究所石炭ガス化研究グループ課長(1997年入社)

 □福田元さん…分野越え知識吸収

  ▽ふくだ・げん 技術開発部研究推進室課長(1997年入社)

                   ◇

 --現在、携わられている分野を具体的に教えてください

 久保田 分かりやすく言えば、発電所ボイラー部材の余寿命診断技術の開発です。とはいっても通常のボイラーなどの鋼材で利用する余寿命診断とは違います。最新鋭の高効率石炭火力である超々臨界圧(USC)発電プラントのボイラー・タービン高温部材用に開発された、高クロム鋼という材質があります。この部材は開発後早々に溶接熱影響部という部分の板厚内部で、損傷が顕著に進行することが指摘されていました。実際に損傷トラブルも発生し、許容応力の見直しが図られています。またこれに対応する余寿命診断方法はいまなお確立されておらず、急務な課題となっています。そのため従来の診断法による適用可能性を検討するとともに、USCプラントの高クロム鋼を使った構造物に対するクリープ寿命の適切な診断手法を確立するための研究を進めています。

 山下 石炭火力発電で高効率を目指す方法として石炭ガス化複合発電(IGCC)があります。このキーとなる技術は石炭のガス化で、このパイロットプラントに携わっています。ここでは実際に運転して石炭により異なる灰量、カーボン量、灰組成などを調べ、最適なガス化を探っています。実は担当分野は多くあるのですが、最近、取り組んだことでは、石炭ガス化ガスをタービンで燃焼する際の調整です。通常、ガスタービンで燃やすのはメタンですが、石炭ガス化ガスはメタンに比べ発熱量が低く、メタンと同じ燃料調整では窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)が出てしまいます。そのため、低NOxと低COを同時に実現するための調整が必要です。

 福田 自ら研究開発に携わるのではなく、個々の研究開発の取りまとめ役を担当しています。具体的には各研究のPDCAサイクルを確認して、内容を把握します。その作業を経て分かりやすく研究内容を整理し管理すること。広義でみれば研究分野に携わっているのですが、個人的にはエンジニアに近いのではと思います。入社以来、水力発電の保守、運用、更新工事などを担当し、その後、供給計画業務を経て現在に至っています。水力の知識は豊富ですが、火力やその他の分野は、いわば専門外。使用する用語も異なります。それだけに幅広い知識を吸収することに力を注いでいます。一つの研究に特化するのではなく研究分野全体を俯瞰するような業務です。

 --目標に向かい研究・業務を進めている中では課題なども多いはず。どのようなものがあり、どのように解決してきたか教えてください

 久保田 プラント設備の金属材料が損傷を受けていないかを確認するための非破壊検査の手法に超音波検査(UT)があります。ただ、これは現状のUT検出精度の影響で、時間の経過とともに歪が増大する現象であるクリープによる損傷率が70%以上ないと検出できません。これではキズの存在に気が付いたときには取り換えの準備をしなくてはならず、計画的な設備更新としては非効率です。もっと余裕ある更新計画を実現するためには、UT技術の精度向上が大きな課題です。クリアするためには検査手法について幅広い知見を得ながら、利用者としての問題意識をもって有識者と一緒に解決策を探っていく考えです。

 山下 現在のパイロットプラントは石炭使用量が日量150トンの規模ですが、その前には1トンクラスでの試験を行っています。もちろんコンピューターによるシミュレーションもしてきました。つまり、不具合が出ることを予想し、それを改善して規模を拡大したプラントで運転をしているのですが、これが思い通りにはいきません。規模を大きくしたことで熱量の違いなどで出てくる問題があります。逆に大きくなることで改善する面もあります。こうした段階を踏むごとに生じる諸問題が現状の課題といえます。予測したことと実際に起こることの違いを最小限にしていかなければいけません。

 福田 当社の研究分野は電気、土木、通信、化学、物理、生物など多岐に渡ります。各分野のスペシャリストが説明する研究内容を理解し、ポイントを把握することが第一の関門です。そのためには、前述しましたように研究者とのミーティングの際には、詳細とはいいませんが事前に大まかな内容を把握しておくことを心がけています。それにより疑問の質も変わりますし、予想外の知識・知恵に遭遇することもあります。その時は感動を覚えます。また、運用部門で培った経験などを生かして、ミーティングの中で研究シーズにつながるような話題提供もできます。幅広い専門性をいかにカバーしていくかが課題と思ったのですが、それがあったからこそ業務を遂行できていると思います。

 --将来を展望して、やりたいこと夢などがあればお聞かせください

 久保田 私の所属する研究室では、研究業務とは別に火力支援業務も行っています。発電所で機器損傷トラブルが発生した際に、プラントメーカーから原因調査に関する報告書が提出されますが、その内容についての妥当性チェックや各種検査を実施します。昨今の電力需給逼迫の状況では必要性の高い業務です。このような茅ケ崎研究所で蓄積したノウハウを各発電所でも共有できる人材を確保することで、迅速な問題解決ができるようになります。それにより各発電所の安定運転に大きく寄与するはず。設備のより高い安全性を確保していくこと、それに寄与する研究、業務に携わっていきたいと考えています。

 山下 今まではEAGLEプロジェクトとしてIGCCのパイロット試験を行ってきましたが、現在、広島県で出力16.6万kW級の実証プラントを中国電力と共同で建設中です。IGCCの魅力は、従来の微粉炭火力に比べて大きく発電効率を向上させ、単位発電量当たりのCO2排出量を低減することです。ただ、現状ではコストが高くつきます。資源の乏しい日本は、石炭の活用が重要であり、何としてもコストダウンを図り、商用化までやりとげたい。その思いで頭がいっぱいです。夢ではなく実現可能な取り組みです。

 福田 資源のない日本にとってエネルギーは最も重要な問題です。震災などによる多くの困難な状況などを踏まえ、電力の安定供給を維持するために自分がどのような貢献ができるのかを、常に考えています。それは既存設備の効率的で経済的な運用・活用をしていくこと。設備更新時の最適化や再生可能エネルギーが普及した際の出力変動への対応など、状況に応じて判断できるエンジニアを目指したい。そのためには、現在の研究開発の取りまとめという職責を全うするだけでなく、最大限に活用していけるよう、分野を越えた幅広い知識の吸収に努めていきます。

                   ◇

【会社概要】J-POWER(電源開発)

 ◇本社=東京都中央区銀座6-15-1

 ◇社長=北村雅良氏

 ◇売上高=連結6560億円(2013年3月期)

 ◇事業内容=卸電気事業

                   ◇

 フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2013年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。

ランキング