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「能率手帳」「グンゼYG」ら定番ブランド、増税前に相次ぎ刷新するワケ

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「能率手帳」「グンゼYG」ら定番ブランド、増税前に相次ぎ刷新するワケ

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 消費税増税を前に、企業の「顔」ともいえる定番ブランドの刷新が相次いでいる。ビジネス手帳の「能率手帳」、グンゼの男性用肌着「YG」、ダスキンの「ミスタードーナツ」、など、おなじみの商品が60~40数年越しにリニューアル。国内市場の変化や競合商品への対抗など、思惑はさまざまだが、実は消費増税時に問われるとされるのが「ブランド力」。刷新の背景には、増税による消費マインドの冷え込みを主力商品強化で乗り切ろうとの戦略がある。

 あの「能率手帳」は「NOLTY」!!

 日本能率協会マネジメントセンターは、昭和24年の誕生以来、看板商品としてきた「能率手帳」を、平成26年版からブランド名を「NOLTY」(ノルティ)に改め、大河ドラマ『軍師官兵衛』で主演中の岡田准一さんを起用したテレビCMも展開した。

 刷新は実に64年ぶり。方眼ページを増やし、記念日や予定を書き込める年間予定表を追加するなどした。ターゲット層を従来のビジネスマンやOLから主婦や学生にまで広げ、3年間での販売目標は5割増の375万冊だ。

 肌着大手のグンゼも今年2月、昭和46年から販売している男性用肌着シリーズ「YG」を43年ぶりに刷新。立体裁断や柔らかな風合いを持たせる紡績方法で「着心地」にこだわり、ロゴも赤とグレーの2色を使ったスマートなデザインに変えた。

 YGの白シャツとブリーフは発売当初、20~30代のメンズアンダーの定番として浸透。だが、1990年代に海外ブランドのボクサーパンツが登場するとメンズアンダーにもファッション性が求められるようになり、「白ブリーフ」は“少数派”に。YGの顧客層も今では50~60歳代の中高年が中心だ。販売枚数もピークだった昭和60年前後の2千万枚から、現在は100万枚にまで落ち込んでいる。

 今回、全面刷新に踏み切った最大の理由は「商品の若返り」(メンズ&キッズMD部の南晶宏マネジャー)だ。価格も下げてターゲット層を30~50代に広げ、ユニクロや量販店のPB商品の「機能性インナー」への対抗を意識した。今年度の販売量は“V字回復”の年400万枚を見込んでいる。

 ビールも続々「刷新」/ミスドはコンビニに対抗!?

 定番ブランド刷新の動きは、飲食業界でも盛んだ。キリンビールは昨年12月、主力ブランド「一番搾り」を5年ぶりに刷新。ホップの量を1割増やして香りを高め、麦のうまみも向上させた。ねらいは、「ビール離れの際立つ20~30代の取り込みや質の高さを再認識してもらうこと」(広報担当者)という。

 競合各社も負けてはいない。サッポロは市場拡大中の第3のビール「麦とホップ」の味とパッケージをリニューアルし、「麦とホップ The gold」として2月4日から発売。サントリーも「金麦」やノンアルコールの「オールフリー」を刷新。アサヒは28年ぶりに初めて「スーパードライ」の製法を技術革新し、「キレ」と「泡の細かさ」を向上させた。

 競合商品は“他業界”にもある。ダスキンは昨年4月、昭和46年の日本出店以来初めて「ミスタードーナツ」の原材料を大幅に見直した。売り上げが伸び悩む中、洋菓子などのPB商品を充実させるコンビニエンスストアへの対抗がねらいとみられる。定番の「オールドファッション」では生地に使う小麦粉や砂糖の配合を変え、食感を高めた。

 増税時に問われる「定番ブランド」の力

 実は、消費税増税時に問われるとされるのが「ブランド力」だ。生活者の意識調査などを手がけるトレンド総研(東京都)が3月4日に発表した「トレンド予測リポート」によると、30~49歳の主婦500人の約6割が、消費税増税前に「買いだめ、まとめ買いをしようと思う」と回答。その商品選びのポイントについては、「いつも購入している商品」が最多の89%、「定番(定評のある)商品」が40%と続いた。増税前には、いつも買う定番ブランドを買う傾向が高いことが浮き彫りとなった。

 さまざまな業界で、「定番ブランド」刷新が相次いでいる理由の一つには、この消費税増税があるようだ。「冒険せず、慣れ親しんだ商品を買おう」とする消費者意識は増税後にもおよび、「安定志向」にとつながっている。定番商品の魅力を高める「進化」「刷新」が、消費者が選ぶ「定番ブランド」の中でも勝ち抜き、ブランドの地位向上にもつながるといえるだろう。

 増税前の買いだめによる「特需」の後には、増税実施後に高まる「節約志向」による消費マインドの冷え込みが見込まれる。いずれにせよ、広告増加や刷新などの投資が“失敗”につながる可能性が低い「定番ブランド」は、企業の中でさらにその存在価値が高まりそうだ。

(田村慶子)

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