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ダイキンの悲願、3度目の北米挑戦 高性能の「日本式」で席巻目指す
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ダイキン工業の米ヒューストン工場。業務用ではダクトレス方式のエアコンの生産を開始した(同社提供) ダイキン工業が先月下旬、北米で業務用のダクトレス方式のエアコンの生産を開始した。ダイキンはかつて2度、北米への本格進出を試みたが、空調方式の違いや販売網の課題などから撤退を余儀なくされた苦い経験がある。だが一昨年、北米に強力な販売網をもつ米家庭用空調大手のグッドマン・グローバルを大型買収したのをきっかけに、一気に北米市場に攻めこんだ。“悲願”の自社製エアコン生産開始で、めざすは世界最大の北米市場席巻だ。
「米国抜きに世界ナンバーワンは成り立たない」
ダイキンの井上礼之会長はかねてからこう強調していた。ただ、世界需要の3割を占める巨大な北米市場は、ダイキンが苦い経験を持つ“鬼門”でもあった。
ダイキンは過去に2度、北米進出で撤退を余儀なくされている。1度目は、家庭用エアコンの輸出を始めた1980年代。プラザ合意(85年)を機に一気に進んだ円高・ドル安で競争力を失い、88年に撤退した。
2度目の進出は、98年。今度は家庭用ではなく、業務用エアコンで現地の暖房メーカーと合弁会社を作った。だが、合弁相手の販売網が薄かったことなどから認知が進まず、利益も上がらなかったため、わずか2年で解消に至った。
苦戦の原因の一つは、空調方式の違いだ。日本の家庭では、部屋ごとに室外機と室内機をセットで置く方式が主流だが、米国は建物全体に管(ダクト)を通して冷暖房の空気を送る「ダクト方式」が主流。エアコンは日本のように家電量販店で買うのではなく、住宅設備の一つとして設置されている。
日本式は大がかりな工事が不要なうえ、部屋ごとの温度調節が可能で、省エネ性も高い「世界に誇る技術」だ。それでも、浸透には時間が必要だった。
大正13(1924)年に飛行機用部品などを生産するメーカー「大阪金属工業所」として出発したダイキン。今や国内はもとい、世界でもトップの空調機器メーカーだが、米国では2度の「撤退」の比どころではない苦い経験がある。
97年、世界最大の空調機器メーカーを傘下にもつ米ユナイテッド・テクノロジー(UTC)がダイキンの買収を示唆。業績低迷もあって、時価総額は1200億円程度にまで下がり、M&Aの脅威にさらされた。この苦い経験を機に、ダイキンはグローバル戦略を進める一方で、「時価総額重視」「フリーキャッシュフロー(純現金収支)の経営」に力点を置いてきた。
再び北米市場への切り込みに乗り出したのは2005年。今度は、独自で日本式の空調機器販売会社を設立した。07年には、米業務用空調大手のマッケイを傘下にもつマレーシアのOYLインダストリーズを約2300億円で買収。これを機に、北米での大型業務用シェアは4位に躍り出た。
それでも市場を打開できないでいたのが、家庭用空調だ。空調機器が住宅設備の一つとなっている北米では、住宅設備会社とのネットワークがなければ販売は困難で、新規参入者のダイキンには大きな壁となっていた。そこで、一昨年に約2900億円で買収したのが北米に900以上の拠点という「猛烈に強い販売網を持つ」(井上会長)米家庭用空調大手、グッドマン・グローバルだ。
グッドマンはダクト方式が主流の米家庭用空調でトップシェアだが、高価格帯空調のシェアは低かった。ダイキンによる買収後はまず、グッドマンが米国式エアコンの高価格帯をダイキンのブランドで生産。「ダイキン」ブランドを売り込みながら米国内でのシェア拡大を図る戦略に出た。
一方、グッドマンのデービット・スウィフト社長が「米国でエネルギー効率への関心は高まっている」と指摘するように、米国でも省エネや環境保護の意識が向上。自動で運転制御するインバーター技術を搭載し、世界トップクラスの省エネ性を誇る「日本式」のニーズが高まってきた。
ダイキンはこれを「追い風」に、ヒューストンにあるグッドマンの工場で、米国式のグッドマンの家庭用エアコンに、ダイキンのインバーターを搭載した新機種を年間6千台生産。今後さらに販売拡大を進め、今年度3540億円を見込む北米・中南米の売上高を、2年後に4250億円まで伸ばす計画だ。
ダイキンの井上会長は「北米での展開は長年の悲願だった」とし、「米国でも省エネ空調を展開し、トップメーカーの地位を盤石にする」と意気込む。いずれも米大手で業務用空調のマッケイ、家庭用空調のグッドマンを傘下に収めた今後の課題は、これらの販売網を活用してどれだけ自社製品を流通できるかだ。巨大市場を通じた今後の展開が、注目される。(中山玲子)