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伊藤園が「茶殻リサイクルシステム」開発 カテキンの消臭、抗菌特性活用
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最初に商品化された畳(右)を手にする開発一部の佐藤崇紀氏 茶系飲料最大手の伊藤園では、製造過程で大量の茶殻が出る。2012年は年間4万9000トンにも及んだ。茶殻のほとんどは飼料や堆肥として再利用されているが、緑茶ポリフェノールであるカテキンは茶殻にも残っている。この消臭、抗菌といった特性を活用する目的で「茶殻リサイクルシステム」を開発、今では150の異業種企業と連携し茶殻に残る有用成分を生かした紙製品や樹脂、建材など応用範囲を広げている。
茶殻の有効活用は1990年代後半、経営トップが開発部門に研究テーマとして指示したのが始まり。96年に500ミリリットルのペットボトル茶を発売し、一気に茶飲料市場が拡大。それに伴って茶殻も増加の一途をたどっていた。一方で、堆肥として使う農家の廃業などが相次ぎ、用途の多様化が必要になると判断したからだ。
こうした中、2000年4月に秋田大学鉱山学部修士課程を修了した佐藤崇紀氏が入社。研修期間終了直後に、茶殻リサイクル研究の専任に抜擢(ばってき)された。
「最初は乾燥させたり、活性炭に利用できないかと考えていた」と佐藤氏は振り返る。確かに乾燥機を使えば、簡単に乾燥、炭化できるが、水分が85~95%という茶殻を乾燥させるには「重油やガスを大量に使う。これがリサイクルや環境に貢献するのか」と疑問に感じ、水分が残ったままでの再利用方法を探ることになった。
そうしたとき、祖母が自宅で、水気を絞った茶殻を畳の上にまき掃いて掃除をしていた記憶がよみがえった。そこで畳に使えないかと調べ、畳の芯材に茶殻を入れることを思いつく。研究室では何とかうまくいき、建材ボードメーカーに試作を依頼。ダンプカー1台分の茶殻を工場に送った。だが工場の担当者から翌日、猛烈な抗議を受けた。慌てて工場に向かった佐藤氏が目にしたのは、工場の隅に置かれた雪山のような白い小山。水分が多い茶殻から一気にカビが生え異臭を放っており、試作は断念せざるを得なかった。
そこで乾かさず、しかも腐らずに茶殻をリサイクルするシステムを模索し、試行錯誤を繰り返し約半年後に確立した。冷凍でも薬品投入でもなく、独自開発の容器によって腐らずに茶殻を運べるようにした。このシステムの肝といえる技術は、特許を申請していない「秘中の秘」。テレビ番組で取材を受けた際も「モザイクをかけてもらった」ほどだ。
これにより、かつて抗議を受けた工場で建材ボードの製品化にこぎ着けた。佐藤氏は入社2年目を迎える直前だった。
しかし、なかなか応用製品の開発は進まなかった。苦悩の毎日が続く中、たまたま別の案件で出席した会議で営業課長が興味を示した。畳メーカーを紹介され「お茶入り畳 さらり畳」を製品化した。
これを機に異業種と組んで、抗菌性、消臭生、香りといったカテキン機能を生かした製品の企画が広がった。その一つが日油と共同開発した茶配合樹脂。プランターやベンチなどさまざまな樹脂領域で展開が可能になった。次に取り組んだのが紙。茶殻を小さくしながら繊維化することでペーパーナプキンなどの薄い紙でも作れるようになった。建材やボードなど応用製品は増え、パートナーも150社に達する。佐藤氏は「新規の開発領域や日本の技術力を世界に示すため海外展開を図っていきたい」と意気込む。(平尾孝)