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KDDI逆転の発想…廃棄基地局“売り物に” 処理コストの収益化

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KDDI逆転の発想…廃棄基地局“売り物に” 処理コストの収益化

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KDDIの産業廃棄物と携帯電話回収  複数の周波数を使って音声通話やデータ通信サービスを提供する携帯電話事業者は、周波数の再編に伴って基地局設備を入れ替えなければならない。大がかりな周波数再編に備えてKDDIは、大量に出る基地局設備の廃棄物を逆に“売り物”に転換することで、産業廃棄物処理業者に支払っていた処理コストの収益化に成功した。

 KDDIが携帯電話サービスに使っていた800メガヘルツ周波数は、総務省の周波数再編政策により、いったん返却することになった。2006年4月から新旧の800メガヘルツ周波数を併用しつつ基地局の入れ替えを進めてきたが、12年7月に新800メガヘルツ周波数に完全移行した。

 旧800メガヘルツ用基地局は約1万5000。全国に散らばる基地局から排出される電源設備やバッテリーなどの設備機器を入れ替えるに当たり、KDDIは処理業者と交渉し運送コストを徹底削減。

 さらに、設備機器から抽出できる金属を再資源化することで、処理業者に支払うコストを逆に収益源にできないか考えた。

 12年春に入札を実施、10月には再資源化の部材を販売することができた。総務部CSR・環境推進室の田中俊行マネージャーは「処理業者と検討を重ね、銅や鉄、ステンレスなどを使って、売れる部材開発に取り組んだ」と説明する。

 開発した部材は、空調設備用パネルや椅子用パイプなど。処理業者にとっても再資源化による製品開発は新たな収益源として有望な分野となる。

 産廃量も激減。12年の通信設備などの産廃量は2041トンと前年比で半減した。06年から始まった旧800メガヘルツ用基地局設備の廃棄で大量に生じていた産廃は設備入れ替えの山を越えた11年に減少に転じたが「12年は再資源化による削減効果が大きかった」(田中氏)。

 大がかりな基地局入れ替え作業が終わり、産廃を出す基地局は現在、年間数千のペースに落ち着いている。そこでCSR・環境推進室が次に挑むのは通常時の廃棄物の再資源化だ。

 一挙に大量に廃棄物が出る時期と違い、運送コストや処理効率を考えると通常時には再資源化による収益化は難しいが、田中氏は「より付加価値の高い製品開発を目指して処理業者と検討している」という。

 一方、回収した携帯電話の収益化にも注力する。スマートフォン(高機能携帯電話)の販売競争が激化する中、古い機種はすぐ在庫となる。これまでは経理処理上、容易に処分できなかったが、13年度から使用済み携帯と同様に処理業者への売却を始めた。

 KDDIは、携帯電話1台に使用されている金や銀、銅、パラジウムなどの価値を計140円と算出。処理業者に買い取ってもらう仕組みを作り、収益源にした。

 回収した使用済み携帯電話は、障害者雇用の子会社KDDIチャレンジドに運び、80人近い社員が手作業で端末を20種の部材に分解する。利益は1~2割減るが、資源化率を向上させることで環境保全効果を高めている。

 KDDIは16年度を最終年度とする環境保全5カ年計画を推進、基地局設備の再資源化もその一環。14年度中に携帯電話や通信設備の製造全般にかかわる二酸化炭素(CO2)排出量などを算出したいという。

 「社員の通勤や出張も含め企業活動全般を通じてどこを削減すればいいかという対策で他社に先駆けたい」(田中氏)考えだ。(芳賀由明)

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