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女性向け賃貸住宅、攻防活発化 大手各社、防犯や子育て支援で新サービス
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賃貸住宅における女性向けサービス 単身女性や子育て世帯の女性を意識した賃貸住宅を投入する動きが、住宅大手で相次いでいる。景気回復や政府の成長戦略を背景に働く女性が増えており、賃貸へのニーズが高まっている。賃貸市場は長期的な縮小傾向にあり、女性層をめぐる住宅各社の攻防が活発化しそうだ。
女性向け賃貸住宅の特徴は防犯に力を入れている点だ。旭化成ホームズ(東京都新宿区)が6月1日に発売した「ヘーベルメゾン ニューサフォレ」では、「おかえりラウンジ」という入居者の共有空間を導入。本棚のシェアやメッセージボードなどを設置した。
同社の「くらしノベーション研究所」による調査を通じ、「名前は知らないが顔は分かる」程度の入居者同士の緩やかなつながりに安心を感じていることが判明。この結果を反映させ、「『匿名コミュニティー』による防犯という新しい手法を導入した」(担当者)。また、入居時には、緊急の際の助け合いなどを骨子とする「マナー同意書」への同意を条件とする。
大和ハウス工業では、ワンルームタイプに占める女性の入居率が約4年前の3割から4割まで上昇した。牽引(けんいん)するのは、防犯配慮型賃貸住宅「SWシリーズ」。綜合警備保障、セコムと提携し、センサーが異常を感知すると、警備員が現場に駆けつける仕組みだ。
また、1階の部屋の中が見えないように植栽で目隠しを施し、女性入居者が安心して暮らせるように配慮した。共用部に設置する「セーフティアゲインルーム」には、通りすがりの女性でも不審者から一時的に身を守ることができる防犯機能を設けている。
子育てと仕事の両立を支えるサービスも注目されている。積水ハウスが3月に完成させた賃貸住宅タウン「ニッケガーデンコート花水木」(愛知県一宮市、90戸)は、子育ての応援をコンセプトに掲げた。住民がふれあう空間を重視し、敷地の真ん中に芝生を配置したり、コミュニティーハウスを設置したりした。
足元の賃貸住宅市場は、低金利や2015年1月からの相続税の課税強化を背景に堅調に推移している。ただ、長期的には人口減少の影響で市場の縮小は避けられない。みずほ銀行によると、30年の賃貸住宅需要は10年比で約1割減の1754万戸となる見通しだ。
こうした中、大和ハウスの堀福次郎取締役は「25年まで東京圏は人口が増え続ける」と述べ、大都市部の賃貸市場は拡大の余地があるとみる。
総務省の2013年労働力調査によると、25~34歳の女性のうち就業者と求職者が占める割合は74.3%。10年近く前に比べて8ポイント近く伸びた。
同様に、35~44歳の子育て世代は71.4%。子育てのため離職する人が多いこの年齢層で、70%を突破するのは初めてだ。
女性の社会進出と歩調を合わせるように、女性向けの賃貸住宅は近年、質や量が向上している。安倍晋三政権は、女性の社会進出を促進する施策を27日の閣議決定を目指す新成長戦略の中に盛り込む。「今後、働く女性が増える傾向は鮮明になり、賃貸住宅への女性の入居者は一段と増えるはずだ」。住宅各社の事業戦略には、そんな思惑が込められている。
住宅各社にとって、コミュニティーに重点を置いた防犯性の向上や仕事と子育ての両立支援など、女性が安心して住める賃貸住宅をいかに提供できるかが重要なカギとなる。(伊藤俊祐)