SankeiBiz for mobile

【未来への伝言】古森重隆・富士フイルムホールディングス会長兼CEO(上)

記事詳細

【未来への伝言】古森重隆・富士フイルムホールディングス会長兼CEO(上)

更新

 ◆問われる指導力

 《コダックとの違いは、経営者の指導力の差でもある》

 「本業消失の危機への対応は、写真フィルムに限った話ではなく、あらゆる業界、あらゆる会社にもいえることだ。どれほど業績が良くても、来るべき危機を予測し、それに備えなければならない。現状を直視して、何が起きているのか、何がこれから起きようとしているのか、状況を正確に読み、把握し、その上で何をやらなければならないかを考えて決める。それが経営だ。もし、その読みを誤れば、やがて時代の変化とともに、会社には危機的な状況が訪れる」

 「企業経営とは『社会的に価値のある商品やサービスを提供することで売り上げを得て、収益を獲得し、それを未来に向けて投資しながら、組織を存続させていく』ことである。特に有事の際、リーダーには自分たちの置かれている状況や将来についての『読み』、具体的なプランに落とし込む『構想』、社員に的確に『伝える』、そして『実行する』ことが求められる」

 《古森氏の強いリーダーシップの源泉は幼少期に遡(さかのぼ)る》

 「経営改革は私にとって絶対負けられない戦いで、『負けてたまるか』の一心で立ち向かった。5歳のとき、終戦を満州(中国東北部)で迎えたが、あのときの光景は今も忘れることができない。引き揚げも困難を極め、やっとの思いで故郷の長崎・佐世保港に着いたのは終戦の翌年、1946年9月のことだった。幼いながらに、国が戦争に負けたときの惨めさが骨身に染みた。『負けてはいけない』という考えは、その後の私の生き方そのものになった」

 「『負けない』ためには、人間としての真の実力、基盤となる力を養うことが重要だと常に考えてきた。高校時代も受験勉強の傍ら、多くの本を読んだ。東大に入学してからは、アメリカンフットボール部に入った。アメリカンフットボールでは『闘魂』『力』『スピード』『戦略』『チームワーク』の5つの要素が重要となるが、これは企業経営にも通じることであり、大いに役立っている」

ランキング