SankeiBiz for mobile

【シリーズ 産業未来】メットライフ生命(下)(4-3)

ニュースカテゴリ:企業の金融

【シリーズ 産業未来】メットライフ生命(下)(4-3)

更新

保険金コールセンターを設置するメットライフ生命長崎ビル  ■保険金・給付金支払い 専用コールセンターで万全の体制

 メットライフ生命は顧客への保険金や給付金の支払いでもカスタマー・セントリシティを追求し、日々改善を積み重ねている。保険金や給付金の支払いが適切に行われるかは生命保険会社にとって生命線。2005~06年には同社も含め業界全体で保険金の不払いが問題となり、08年に生保10社に対し業務改善命令が下された。こうした過去の反省を踏まえ、同社では顧客に漏れなく支払い対応をするために専門窓口として保険金専用のコールセンターを設置するなど体制整備を推進し、業務やサービスを改善する仕組みを構築している。

                   ◇

 メットライフ生命は東京、神戸、長崎の3拠点にコールセンターを開設しており、通常の保険契約、個人年金や銀行窓販での契約、通信販売での契約、そして保険金・給付金を担当する4つのセンターに業界最大規模となる約600人のオペレーターを配置している。もともとコールセンターには顧客からの問い合わせに応じる機能しかなかったが、不払い問題後に業界に先駆けて保険金・給付金専門のセンターをつくった。顧客の請求内容を検証する部隊やオペレーターの教育部隊などもコールセンターに併設し、現在は約360人の陣容で保険金や給付金の支払いにあたっているという。

 「メットライフ傘下になり、お客さまの満足度や苦情をよく分析し、問題点に具体的な手を打つようになった」と保険金統括部の海老名敦尚AVP統括部長は語る。

 昨年からお客さまの満足度を測る指標「ネットプロモータースコア(NPS)」に基づく改善プロセスを採り入れたところ、成果はすぐに現れた。昨年7月に計測した際は、支払い業務に満足している人の比率から満足していない人を引いた数値はマイナス2.4%。14年にこれをプラス5.6%に引き上げる目標を立てたが、4月時点で数値は27.7%と大幅に超過達成している。海老名部長は「支払いまでの所要日数が良くなり続けていることが一因だろう」と分析する。

 ◆システムを次々効率化

 保険金と給付金の請求件数は12年度に68万件、13年度に81万件と保有契約の拡大に連動して増加しており、14年度も4月までに35万件。一方で平均の支払い所要日数は12年度に3.0日、13年度は2.9日、14年度は2.6日に改善している。件数が増えているのに逆に日数を減らした背景のひとつには帳票の見直しがある。白黒だった帳票をカラーにしたり、枠外の注釈をやめて記入する部分を広くするなどシンプルで分かりやすくした。また、医療保険の給付金請求の際、通常は請求書と病院の診断書が必要になるが、手術を伴わない入院には診断書がなくても申告書だけで済むようにしたことも大きいという。

 今後も請求件数がさらに増える見通しの中で「サービスの質や正確性、効率性を維持・向上していくことが大切だ」と海老名部長は指摘する。それには診断書のデータをQRコードにしてすぐにデータを取り出せる仕組みなど効率的なシステムの導入を検討。また、コールセンターの体制についても営業時間の延長や外注の活用などにより、顧客が電話をかけてもつながらない状況を改善させていく方針だ。

                   ◇

 ■業務の改善度合いなど数値化

 一方、顧客と直接的な接点のないバックオフィスでもカスタマー・セントリシティを実現するための業務改革を推進している。ここではキー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)という業務効率や品質を計測する指標を使って、改善の度合いを数値化し、業務の改善に取り組んでいる。「目下、フォーカスしているのは保険を申し込んでから証券がお客さまに送付されるまでの日数」と山本展子執行役員は話す。暦日で証券送付日数は1月の13.9日から4月には13.1日と着実に数値は改善している。

 実際どのような改善を積み重ねているのか。まず挙がるのが契約書類の記入の際に不備がでないようにすることだ。顧客が書きにくいと感じたり、良く理解せずに間違えて書いてしまうような個所を特定しながら、改定のたびに、その個所を修正したり、不要な項目を削ったり、字を大きくしたりと、きめ細かな努力を地道に進めている。不備発生率は1月の23.3%から4月には21.2%に改善した。また、4月末には疾患による保険加入の可否をコンサルタント社員や代理店が、パソコンやスマートフォンなどで瞬時に照会できるツールを導入した。現在は253疾患が照会可能だが、今後は倍増させ、顧客に聞かれることが多い相談にその場で答えられるようにしていく。

 ◆タブレット端末導入も

 さらに、今年後半からコンサルタント社員の営業用ツールとしてタブレット端末を導入し、契約の手続きを一段と迅速化する方針だ。生保業界で営業用端末の導入は一般的になりつつあるが、メットライフ生命では現在、保険契約は書類に記入しなければならない。端末は画面を見ながら説明を受け、画面上でサインができる。表示される順番通りに手続きすれば、記入漏れを防ぐことができ、書類をやりとりする時間も不要になるため、証券送付日数は抜本的に改善される見込みだ。

 また、バックオフィスの体制も大きく刷新する。これまでは4つあるチャンネルごとに事務の組織があり、各チャンネルで同じ商品を売っているにもかかわず、システムや書類をチャンネルの分だけ持っていた。「システムを一本化する16年までに、事務フローやルールもできるだけ統合、標準化して業務効率を高める」と山本執行役員は話す。

 第一弾として1月にバックオフィスの組織を一つにした。今後は業務のやり方も各チャンネルの良い部分にすべて寄せていく。具体的には、マニュアルを各チャンネルで一番見やすいものに変えたり、同じ成果しか得られないのに過剰に行っていた確認作業を軽減したりしている。もちろん、すべての改善の判断は顧客目線だ。通信販売チャンネルでは高齢者が電話をかけてくることが多いが、「オペレーターがA~Dまでのプランを提示する際、電話ではAとDが聞き分けにくいため、プランの記号を『い、ろ、は、に』にしようかと話している」(山本執行役員)のだとか。こうした地道な作業を続け、16年に向けてシンプルに動けるシステム、ルール、プロセスを構築していく方針だ。

ランキング