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甘く見ていた…スカイマーク窮地 「違約金700億円」業界再編の可能性も
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スカイマークが6機を発注し、エアバスから売買契約の解除を通告された超大型旅客機「A380」(エアバス提供) スカイマークが窮地に追い込まれている。格安航空会社(LCC)との競争激化などで経営環境が悪化する中、欧州旅客機大手エアバスとの間で超大型機「A380」の購入契約をめぐる交渉が決裂状態に陥り、エアバスに対する約700億円もの違約金の支払い義務まで生じる可能性が出てきた。A380で目論んだ“悲願”の国際線参入も見直しを迫られている。財務体質が悪化し、生き馬の目を抜く航空業界での単独生き残りに黄信号もともりかねない。(中村智隆)
A380は、総2階建て構造で、総床面積は米ボーイングのジャンボ機の1・5倍にも上り、「空飛ぶホテル」の異名をとる。スカイマークは平成23年、約1915億円もの巨費を投じて6機を購入する契約をエアバスと締結した。
ところが、ピーチ・アビエーションが24年3月に関西国際空港に就航するなど国内外のLCCが格安運賃で攻勢を強める中、大手航空会社と比べて割安なスカイマークの運賃は価格競争力を失い苦戦。円安に伴う燃料費高騰もあって経営環境は悪化し、平成26年3月期(単体)の最終損益は18億円の赤字と、5年ぶりに赤字に転落した。
こうした中、スカイマークは4月にエアバスと契約見直しの交渉を始めた。6機のうち2機は受け取り時期を遅らせ、残る4機は無期延期にするよう求めたものの交渉は難航。4月支払い分の前払い金8億円が未納になったこともあり、エアバスは7月、契約解除の通告を突きつけてきた。
スカイマークがすでに前払い金として支払った約260億円は返金される見込みは薄いという。さらにエアバスに対し約700億円にも上る違約金を支払う義務が生じる可能性もある。スカイマークの西久保慎一社長は「常識を逸脱した法外な違約金」と反発する。
スカイマークがA380の導入を決めたのは、国際線に参入して競争力を高めるためだった。8年の創業以来、「旧態依然とした航空業界に価格競争を持ち込み、航空運賃の低価格化に貢献してきた」(西久保社長)と自負しながら、同時に「国内線一本ではじり貧になる」(関係者)との危機感があった。
A380という話題性の高い機材による国際線の運航で、さらなる業容拡大につなげようと、23年にエアバスと契約。23年3月期の売上高は前期比40%増の580億円、最終利益は約2・4倍の63億円と、拡大を続けていた業績も計画を後押しした。
とはいえ、「空飛ぶホテル」の購入額は当時の売上高の3倍程度もの規模で、業界では当初から「身の丈以上だ」との声が上がっていた。そしてスカイマークの業績が悪化する中、エアバスもその資金調達力を問題視し、契約解除通告に踏み切った。スカイマークの西久保社長は7月29日に東京都内で開いた会見で「反省している。環境変化があることに対して少し甘く見ていた」と認めた。
肝心の国際線参入は抜本的な見直しが避けられない。当初はA380の初号機を12月にも成田-ニューヨーク線に就航させる計画だったが、今後は導入済みのエアバスの中型機「A330」でシンガポールやハワイなど中距離路線に乗り出す方針という。
7月31日、スカイマークが発表した26年4~6月期決算では最終赤字が57億円(前年同期は12億円の赤字)に拡大した。さらにエアバスへの巨額の違約金負担が発生する恐れがあることなどから、事業継続に「重要な疑義」があると明記され、経営の先行きに対する不透明感が強まっている。
スカイマークは経営立て直しに向け、米子-札幌や茨城-中部といった不採算路線の休止を検討。これまで無借金経営を掲げていたが、金融機関からの借り入れも模索している。エアバスとの交渉決着には時間がかかると想定され、ただちに経営難に陥る可能性は小さいとみられる。
だが業界では以前から日米の大手航空会社がスカイマークへの出資に関心を持っているとの噂が取り沙汰され、エアバスとの関係悪化で経営体力が落ちれば、業界再編の標的になる可能性も否定できない。スカイマークは航空各社の垂涎(すいぜん)の的である羽田空港の発着枠を1日36往復持つだけに、傘下に収めれば規模拡大が見込める。
スカイマークは割安な運賃で日本の航空業界に価格競争の旋風を巻き起こした“風雲児”。だが、安全運航上の問題で国土交通省から再三の厳重注意などを受け、「ミニスカCA(客室乗務員)」が物議を醸したことも記憶に新しい。
西久保社長は「どんなに会社を縮小しようが、独立した形で今後も第3の航空会社として営んでいきたい」と語るが、その道は険しさを増している。