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“ミスター牛丼”吉野家・安部社長が勇退へ 「旨い・安い・早い」は不変だが…

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“ミスター牛丼”吉野家・安部社長が勇退へ 「旨い・安い・早い」は不変だが…

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吉野家の安部修仁社長。業界の競争環境の変化を受け「旨い・安い・早いは不変だが、優先順位は変わる」と語った=29日、東京都北区  牛丼チェーン大手吉野家の経営を22年にわたって担い、“ミスター牛丼”の異名をとった安部修仁社長(64)が29日、今月末の退任を前にフジサンケイビジネスアイのインタビューに応じた。

 外食産業の先行きについて安部氏は、競合他社と繰り広げてきた激しい価格競争を念頭に「人口減少の中で成長を続けるには、単価を上げるしかない。業界全体でインフレ基調を作りつつ、従業員の報酬を増やしていく必要がある」と語った。

 吉野家は4月の消費税率引き上げに合わせて素材やレシピを改良、牛丼並盛をそれまでの280円から20円値上げし、大手3社の横並びが崩れた。安部氏は「創業理念の『旨(うま)い・安い・早い』は不変だが、優先順位は時代によって変化する。それに合わせていくのが永遠の課題だ」と強調。

 その上で、デフレ脱却については「まだこれからだ。円安や光熱費の高騰もあり、消費者の安値志向は1~3年ほど続くだろう」と経営環境の厳しさを見通した。

 一方、牛丼大手3社の店舗数が計4000を超え、「飽和状態」ともいわれる点については「日本の外食頻度はまだ低い。高齢化や女性の社会進出が進む中、『内食・中食・外食』のシェア争いが成長のチャンスになるはずだ」と楽観視した。

 外食産業をめぐっては、人手不足や労働環境の改善問題が注目を集めている。安部氏は「先代の松田瑞穂社長の時代から、当社は時給を分単位で計算(してサービス残業を排除)してきた。雇用者と労働者は一体であり、そこをごまかして利益水準を上げる事業モデルは、いずれ淘汰(とうた)されるのが必至だ」と指摘した。

 その上で、「外国人の働き手に門戸を広げ、日本の現場で経験を積ませてほしい。外食産業のグローバル展開を加速するには、そうした人材の貢献が不可欠だ」と国に求めた。

 34年前の倒産とその後の経営再建、牛丼の販売停止に追い込まれたBSE(牛海綿状脳症)問題など、数々の大波を経営の第一線で乗り切ってきた安部氏。「吉野家には“ピンチを克服するDNA”が存在する」と語る。

 9月以降は吉野家ホールディングス会長としてグループ社員と対話を重ね、「そうした企業文化を新しい世代に伝承していく」考えだ。

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