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シャープ片山氏、転身即断の憶測 「3千人退職…一人だけ再就職」古巣恨み節も
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シャープ元社長、片山幹雄技術顧問(フェロー)の転身が業界で話題だ。日本電産が10日1日付で副会長執行役員に迎え、新設の最高技術責任者(CTO)も兼任、次世代技術の開発を統括する。同日付で会長を兼務する日本電産の永守重信社長兼最高経営責任者(CEO)は、古巣で液晶事業への過剰投資で経営危機を招いた片山氏の「挫折経験」を買ったといわれるが、シャープ社内からは「3千人も希望退職させておいて一人だけちゃっかり再就職か」と恨み節も伝わってくる。(松岡達郎、織田淳嗣)
「(シャープに)いたって邪魔でしょ。こんなおっさん(笑)、陰気臭くディスプレーやっててもしかたない」
日本電産が今回の人事を発表した8月5日、自宅前で報道陣に囲まれた片山氏は、いつになく饒舌だった。
片山氏によると、7月下旬、京都で永守社長と面会し、初対面だったが「やってみなはれ」と口説かれて転身を即断したという。
その後、シャープで高橋興三社長に報告し、8月末の退社が決定。9月からは日本電産の顧問に、10月に副社長執行役員兼CTOに就任することになった。来年6月の株主総会で取締役に就く見通しだ。
転身先について、片山氏は「機械同士が通信で情報をやりとりして高度に制御する『M2M』(MtoM=マシン・ツー・マシンの略)に向かっている時代。機械の動力となるモーターの世界トップメーカーの日本電産だから選んだ」と説明した。
その上で「10年前、誰もここまで普及すると思われていなかった液晶テレビやスマートフォン(高機能携帯電話)をつくってきた。日本電産でみなさんが予想できないようなものをつくる」と熱っぽく語った。
日本電産は、創業者の永守社長のリーダーシップと判断力で成長し、一代で精密小型モーター世界最大手にのしあがった。技術力のある企業のM&A(企業の合併・買収)を繰り返し、技術を取り込むと同時にコストを削減。生産効率を上げてきたことが成長の原動力となっており、平成26年3月期の連結売上高は約8750億円に上る。
一方、永守社長は社外の人材起用を進めており、過去4年間でパナソニックやシャープなどを退職した技術者を100人以上雇用している。経営層のスカウトにも積極的で、昨年には、日産自動車の常務執行役員に就任が内定していてカルソニックカンセイ社長だった呉文精氏を副社長兼最高執行責任者(COO)に招いた。こうして、日本電産の現経営陣は社外取締役を除く9人のうち、6人が日産自動車や三菱自動車、旧三菱銀行など他社出身者で占めており、社外の人材や技術を自社の成長に取り込むのが特徴だ。
片山氏は、液晶の技術者出身。液晶ディスプレーのテレビや携帯電話への搭載を手掛け、「液晶のシャープ」を実現させた。パネルの高輝度化や大画面化を進める技術を開発し、関係者は「液晶関連の特許取得で活躍したアイデアマン。特許の権利は会社にあるが、貢献度に応じて支払われる対価は相当なもので、片山氏の自宅は“アクオス御殿”と呼ばれることもある」と解説する。
とはいえ、シャープの経営者としては総額約4300億円を投じた堺工場など液晶事業への過剰投資を決断し、その後の経営危機を招いた時代のトップとして断罪されている人物。この点については、永守社長は「経営者の資質は、挫折とジャッジ(経営判断)の回数で測られる」と周囲に語っており、片山氏の挫折経験も評価したとみられている。
片山氏も「わたしはシャープで失敗を経験し、どうすれば失敗するか分かっている」と語っている。
片山氏は、日本電産の最高技術責任者(CTO)として、クルマの自動運転や介護ロボットなどに向けた次世代部品の開発を担当する予定。永守社長も通信や半導体の技術に精通した片山氏の手腕に期待しているという。
これに対し、シャープ社内には「技術者としてはアイデアマンで才能があるのは認めるが、経営者としては製品の色にまで口を出す姿勢で現場のやる気を削いだ側面がある。新天地でお手並み拝見というところ」との声が上がる。
日本電産は、M&Aなどにはお金をかけるが、普段はお金を使わないイメージが強く、業界では「液晶で巨額の設備投資で市場開拓し、投資ありきの手法で液晶を産業化してきた片山氏は日本電産の文化でやっていけるのか」とささやかれている。
栄光と挫折を経験した有名人の転身だけにさまざまな憶測も飛び交うが、こうした雑音を消していくには片山氏が新天地で誰もが驚く技術や部品を開発するなど実績を出していくしかなさそうだ。