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「VAIO」復活も険しい道のり 販路などソニー時代を踏襲…新鮮味欠く
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2013年の国内パソコン出荷シェア ソニーの業績悪化を受けて、売却されたパソコン事業が投資ファンドの日本産業パートナーズ(東京都千代田区)傘下で、新生「VAIO(バイオ)株式会社」(長野県安曇野市)として1日、事業を開始した。240人の小さなパソコンメーカーとしてバイオのDNAを継承し復活を目指すが、前途は多難だ。
新生バイオには、投資ファンドの日本産業パートナーズが95%、ソニーが5%出資した。同日、東京都内で記者会見した関取高行社長は「バイオはパソコンの本質を追求する。利用者が本当に求めるものを作り、付加価値を生み出したい」と意気込みを語った。
ソニー時代に1000人以上いたパソコン事業の要員は新会社で240人体制へとスリム化。ソニーとのしがらみにとらわれない迅速な経営を目指し、長野で設計・製造などを一極集中させ、コストを削減。「来年度に黒字化する」(関取社長)考えを表明した。
同社は7月から8月にかけバイオの新モデル3種を発売する。販売は国内限定とし、ソニーマーケティングと代理店契約を結び、ソニーストアや一部量販店などで商品を提供する。また今回、法人向け代理店の数も増やした。2015年度に30万~35万台程度を販売する計画だ。
1996年に発売したバイオは洗練されたデザインや最新テクノロジーを裏付けとした高いブランド力を誇り、根強いファンを持つ。この日もインターネットで配信された記者会見の様子が関心を集め、アクセスが集中して閲覧できなくなるほどだった。ソニーがパソコン事業から撤退したものの、バイオの復活を望む声は多い。
ただ、パソコン事業をめぐる環境は、台湾や中国製の低価格パソコンとの競争激化やスマートフォン(高機能携帯電話)、タブレット端末への乗り換え加速など極めて厳しい。
こうしたなかでバイオが発表した内容は新味に欠け、肩透かしに終わった。パソコン3モデルは1年前、ソニー時代に開発されたモデルのマイナーチェンジ版。販売戦略では代理店を増やすなどして法人向け強化方針を打ち出したものの、個人向け販路はソニー時代の体制を踏襲するものだった。
ネットユーザーから製品について「新鮮さがない」との声も挙がっている。会見を速報した海外のパソコン関連メデイアも「バイオは、かばんから何か別の物を取り出してほしい」(エンガジェット)などと論評した。
調査会社BCNの道越一郎エグゼクティブアナリストは「新体制で再スタートする場合、何で差別化していくかが重要になる」と話す。
また事業規模の縮小で部品の調達力が落ちるリスクも懸念されている。これまで強化できていなかった法人向けの販売をどれだけ伸ばせるかも大きな課題だ。
関取社長は再建の形態について「いろいろな出口はあるが、まだそこは答える段階ではない」と説明するものの、今後、他社にはない高付加価値製品でどこまで差別化を図れるかが、バイオ復活の成否を左右する鍵になる。
大株主の日本産業パートナーズは、長く保有することはなく、他社に売却される可能性もある。また独立して上場する道もある。ただ、バイオのブランド力を高められなければ、自力再建にせよ、他社への身売りにせよ、復活はおぼつかない。(黄金崎元)