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LINEに逆風 上場延期、米中ライバルと“格差”…新事業で巻き返せるか
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時価総額1兆円超が確実な大型銘柄として株式上場が期待されているスマートフォン向け無料対話アプリ(応用ソフト)のLINEをめぐり、逆風が表面化している。米中の大手競合2社との利用者数で“格差”が明らかになったほか、セキュリティーに関する懸念、著作権をめぐる訴訟リスクも取り沙汰されている。運営するLINE(東京都渋谷区)は新サービス計画を多数発表するなど、収益モデルの進化で巻き返しを狙う。
10月9日、舞浜アンフィシアター(千葉県浦安市)で開かれたLINEの戦略発表会。森川亮社長は「LINEをLIFE(生活)に密着したインフラにしたい」と宣言した。この日、世界の登録ユーザー数が5億6000万人を超えたことが明らかにされ、次々登壇する経営幹部らは銀行と連携した新しい決済機能や音楽・ゲーム大手との合弁などの新事業を紹介した。
2011年6月にサービスを始めたLINEはメッセージ交換や通話の無料アプリで人気を集め国内登録者数は5400万人。「スタンプ」と呼ぶ大型絵文字やゲームの課金が主な収益源だ。
LINEの上場方針は6月明らかとなり、7月までに東京証券取引所と米証券取引委員会へ申請していたが、9月下旬に突然、年内の実施は延期すると発表した。親会社の韓国ネイバーは、9月下旬のロイターの取材に対し、「今は最適なタイミングでないと判断した」とコメントし、詳しい理由は明らかにしなかった。
こうした中での戦略発表会とあって報道陣から質問が集中したが、森川社長は「上場時期を表明したことはない」「投資家が安心できる環境を整えた上で考えたい」と説明し、目標時期についてコメントを避けた。
実はこの発表会で、新事業と同様、あるいはそれ以上のインパクトを与える数字が初めて明かされた。LINEアプリを月1回以上使っている「月間利用者」の数だ。
この日公表された月間利用者数は約1億7000万人で、全登録者の3割にとどまる。森川社長は「決して少ない数とは思わない」と強調するが、6億人の月間利用者を抱える米フェイスブック(FB)系の対話アプリ「ワッツアップ」や、4億4000万人の中国「微信(ウィーチャット)」に比べると、大きく水をあけられている。
LINEのビジネスモデルは、無料アプリの登録ユーザーを有料アプリや課金コンテンツへと誘導し、収益につなげるのが基本構造だ。そのためにはユーザー数でトップシェアを保つことが成長の前提条件となる。
その点、LINEは日本国内で圧倒的シェアを誇り、足元ではアジアや南米を中心に利用者を伸ばしている。しかし、北米や欧州への浸透度はまだ低い。もう一段の成長に向け、積極的なプロモーション展開で知名度を高めることが必須だ。
だからこそ、プロモーションに必要な資金を調達しつつ、同時にLINEの知名度アップも図れる日米両国での株式上場を目指していたはずだった。10月30日に発表された7~9月のLINE事業の売上高は前年同期比約2倍増の209億円と好調を維持しており、市場関係者らの上場への期待は高まっている。
だが、ネットやエンタメ関連業界に詳しい国内証券大手アナリストはこう解き明かす。「(上場延期について)2つの理由が挙げられる。一つはコンプライアンス上のリスクだ」。LINEにとって、ニュース記事や、ネット掲示板「2ちゃんねる」への書き込み内容などをテーマ別にまとめる人気サイト「NAVERまとめ」「ライブドアブログ」への広告料は収益源の柱。だが、このビジネスには、著作権侵害などの訴訟リスクがある。
実際、今年に入り、2ちゃんねるを運営する海外法人は、まとめサイトへの転載を全面禁止すると表明。また8月には、ライブドアブログの人気まとめサイトの運営者を相手取り、名誉毀損(きそん)で損害賠償を求める訴訟が起こされた。こうした訴訟が相次げば、「名誉毀損の書き込みを放置した」として、LINE傘下のライブドアが責任を問われる恐れもある。同アナリストは「こうしたトラブルの芽を上場前に解消することが不可欠だ」と指摘する。
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海外で、LINEへの風当たりが強まっているのも上場延期に踏み切った要因だろう。
米国では7月16日、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が、ソーシャルメディア銘柄の株価水準が過大評価されているとの見方を示し、フェイスブックなどが値を下げる一幕があった。
9月には台湾総統府が「セキュリティー上の懸念がある」として、業務コンピューターでの使用を禁じた。今後は海外送金できる決済機能を導入するだけに、問題が生じれば影響は世界規模に広がりかねない。
韓国では対話アプリのカカオトークが利用者のチャット内容を捜査機関に提供していたことが判明し、LINEも含め、利用者が大挙して欧米系アプリに乗り換える「サイバー亡命」が起きている。中国では7月以降、LINEなど複数の海外系アプリが新たに当局からアクセス制限を受けている。
巻き返しに向け、LINEは今秋以降、決済サービスや音楽・漫画配信、本格ゲーム開発などの新事業を始める。
先の証券大手アナリストは「各事業のうち、どれが牽引(けんいん)役になるかを見極めた上で、投資家に新しい成長ストーリーを示す必要がある」と指摘。さらに、「グローバル展開で後れを取らないためにも、1年以内に上場するのではないか」と予測している。(山沢義徳)