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【視点】産経新聞論説委員・五十嵐徹 国産旅客機「MRJ」ロールアウト
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■課題山積、正念場はこれから
国産旅客機としてはYS11以来、実に半世紀ぶりとなる「MRJ」が、先頃ようやくロールアウトした。
MRJは「三菱リージョナルジェット」の略称で、三菱重工業の子会社である三菱航空機(名古屋市)が開発を進めている。その名の通り、主として地域間の旅客輸送を想定した座席数70~90の小型ジェット機である。
ロールアウトとは、工場での組み立て作業を終え、実機の形で第1号機がお披露目されることを指す。長いデフレのトンネルにあった日本経済にとって、久々に明るいニュースであることは間違いない。
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名古屋空港(小牧空港)に近い三菱の組立工場で行われた式典には、関係者500人が参列し、真新しい機体に熱い視線を注いだ。その一人で機長出身の植木義晴日本航空(JAL)社長は「私から見ても、すばらしいと確信した」と賛辞を惜しまない。
MRJの自慢は、同じクラスのジェット機として最高レベルの燃費効率と機内の広さだ。加えて騒音レベルは、従来機に比べると半分以下という。環境対策でも最先端を行く航空機といってよかろう。
燃費は従来機から20%以上向上した。その分、同じ燃料量で航続距離が伸ばせる。最大3300キロ程度の飛行が可能だとされるから、アジアの主要都市間はもちろん、北アメリカやヨーロッパの都市間輸送も、ほぼ全域をカバーできる。
三菱航空機の川井昭陽社長によれば、100席以下のリージョナル機は、向こう20年間で5000機前後の新造需要が見込まれている。
最大のライバルは、ブラジルのエンブラエル、カナダのボンバルディア両社で、1機40億~50億円と予想される価格は、やや高めだが、燃費などを勘案すれば割安だと航空関係者の前評判は上々だ。
心配されていた受注も、2008年の事業化決定直後、全日本空輸(ANA)が25機をオーダーしたのを皮切りに、最近になってJALも32機を発注、弾みが付いた格好だ。米スカイウェストからの200機もの大量発注を含め、現時点で予約は採算ラインとされる400機を超えている。
だが、こうした期待が高まる一方で、MRJが実際に乗客を乗せて世界の空を飛ぶまでには、越えなければならないハードルはまだまだ多い。
最大の懸念は、開発スケジュールの遅れだ。来年前半には初飛行を行い、17年中に航空会社への納入にこぎ着けたいとしているが、新造機の開発には遅れがつきものだからだ。最新鋭のボーイング787も、就航は計画より4年近く遅れた。
MRJも本来、11年に初飛行を行い、13年には納入開始の予定だった。それが3度にわたる計画延期で、すでに4年の遅れが出ている。これ以上の遅れは、航空会社側の運航計画に支障を来し、大量キャンセルにつながりかねない。新規の受注に影響を与えることも避けられない。
本格生産にこぎ着けたとしても、課題は山積している。90万点に及ぶ部品は、7割が米国製だ。日本国内に民間航空機向けの部品メーカーが育っていないことが理由で、搭載エンジンも米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)の開発による。
文字通りの日の丸ジェットとして日本に航空機産業を根付かせるには、こうした国内関連メーカーの育成が欠かせない。そのためにも、MRJプロジェクトは是が非でも成功させる必要がある。
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2000億円近いとされるMRJの開発費は、3分の1を国が支援する。ボーイングやエアバスにみるまでもなく、航空機産業は国家プロジェクトそのものだ。安倍晋三首相は、アジアやアフリカ諸国の訪問にあたっても、機会を捉えてMRJを売り込んでいる。こうしたトップセールスは、今後も息長く続ける必要がある。
航空機開発を登山に例えるなら、初飛行で、やっと5合目の段階という。試験飛行だけで数千時間を要し、その前にも地上滑走などの試験をクリアしなければならない。その意味でMRJは「まだできていない飛行機」なのだ。ロールアウト後も先は長い。正念場はむしろこれからだ。