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ローカル「水間鉄道」生き残りへあの手この手 市が肩入れする理由とは?
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経営難からの再生を目指す水間鉄道=大阪府貝塚市 大阪府貝塚市内を約5・5キロのルートで結ぶローカル鉄道・水間鉄道(貝塚駅-水間観音駅)。大正年間に営業を開始し、来年、開業90周年を迎える。水間観音への参詣手段としてにぎわったが、平成に入り、少子化による利用客減などで経営が悪化。会社更生法の適用を申請後、平成18年には新生会社としてスタートした。しかし、V字回復にはほど遠く、市は国土交通省出身者も加えたプロジェクトチーム(PT)を発足。ハムやカマボコ、酒、演歌歌手チケットも景品に加えたユニークな1日乗車券を発売するなど、経営難からの再生に向けて、あの手この手を次々と繰り出している。(吉村剛史)
「みんなで乗って守ろう、5・5キロ」「お楽しみ抽選券とクリアファイルがついていますよ」
11月1日。水間鉄道の1日乗り放題の乗車券「プレミアム1dayチケット」が発売された。
貝塚駅や水間観音駅では、地元で開催されるウオークイベントに合わせ、特設ブースを設置。水間鉄道の職員に市職員も加わり、大々的な販売促進キャンペーンを展開した。
来年2月3日までの期間限定とし、販売数も3000枚限定とした。値段は大人600円。市のイメージキャラクター「つげさん」と水間鉄道オリジナルキャラクター「葛城ぽん太」のイラスト入りクリアファイルも配布している。
これとは別に、地元の特産品を景品とした抽選券も配布。当たれば、地元温泉保養施設のペア宿泊券をはじめ、ハムやカマボコ、日本酒、タオルなどがプレゼントされる。
さらに、餅まきなどがあって水間観音への初詣客が増える1月3日には、チケットを持参すれば先着50人に地元出身の市観光大使の演歌歌手、神野美伽さんのコンサートチケットが当たる「ダブルチャンスくじ」も導入した。
「まさに大盤振る舞い」と市の担当者は胸を張る。
ここまで市が肩入れする理由には、地元の“足”を支え続けてきた水間鉄道の歴史的背景がある。
水間鉄道は大正14(1925)年に開業。15年に全線が開通した。
水間観音として親しまれる天台宗別格本山・水間寺への参詣路線として知られるほか、沿線住民からも水鉄(すいてつ)の愛称で親しまれ、通勤・通学に利用されてきた。
全盛期の昭和40~50年代には年間400万人が利用。約20億円の利益をあげたこともある。
しかし、バブル期の過剰な不動産投資に加え、少子・高齢化などで利用者も減り、経営は急速に悪化。平成17年には多額の負債を抱えて会社更生法の適用を申請。事実上、倒産した。
外食チェーン大手のグルメ杵屋の支援を受け、再建を進めた結果、翌18年に会社更生計画が終結。新生会社として新たな出発を果たした。
水間鉄道では、電車の先頭に取り付ける円盤形ヘッドマークに、結婚や誕生祝いなどのメッセージを自由に書ける「オリジナルヘッドマーク」を1枚1万円で販売したり、枕木に10文字以内を記入できる枕木オーナー権(1件5000円、受け付け終了)を発売したりと知恵を絞っているが、経営環境は厳しいままだ。
そこで地元の市が支援に名乗りをあげた。
市では今年7月、水間鉄道の再生に向け、「水間鉄道活性化・再生プロジェクトチーム」(PT)を発足させた。
市が支援に乗り出さなければならない理由とは何か-。
「水間鉄道経営悪化の最大の要因はバブル経済に踊ったことだ」
国土交通省から市に出向し、PTを統括する波多野真樹副市長は、経営難に陥った水間鉄道自身の責任を指摘しながらも、こう説明する。
「とはいえ、地域公共交通の役割は大きい。市も地域戦略と一体化して支援していく必要がある」
PTの委員は8人。その辞令交付式で、藤原龍男市長は「市民みんなで支える仕組みづくりを具体的に進めてほしい」と激励した。
都市整備部長をリーダーとする実務レベルのワーキンググループも設置。月1、2回ペースで会合を重ねた結果、再生策の第一弾として打ち出したのが冒頭のプレミアム1dayチケットだ。
11月1日の販売開始に先立ち、多数の利用者が期待できる大都市・大阪市のJR難波駅で集客イベントを開催し、先行販売を展開。波多野副市長も陣頭に立って呼びこみをした。
PTとは別に、その後市内の観光協会や商工会議所でつくる実行委員会も組織され、「文字通り全市をあげた」(波多野副市長)販売促進を展開している。
さらにPTでは、観光客を相手にする地元の土産物店や飲食店などに対しても、意識の変化を促そうとしている。
「水間観音の周囲に、これといったお土産物がない」「観光バスが来ても、参詣だけで買い物につながらず、お金が落ちない」「昼すぎから開店するような食堂もある」
PTの会合では、こうした厳しい意見も飛びかわされる。
もちろん、批判するだけでなく、支援することもPTの重要な役割だ。
水間観音には、江戸時代のラブストーリーに由来する「お夏・清十郎の墓」や縁結びの「愛染明王」をまつる愛染堂もあるため、これを生かした若い女性観光客の誘致作戦を計画。マイカー利用者に水間鉄道へ乗り換えてもらうため、駅前駐輪場の整備も検討している。
水間鉄道の昨年度の乗降客は186万人。当面の目標は、これを220万人に増やすことだ。
目標達成に向け、市の全面支援を受ける水間鉄道の関西(せきにし)佳子会長は「社員70人弱の小所帯の会社としては大変心強い。社としても努力を重ね、飛躍の年にしたい」と意気込みをみせる。