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ITベンダー、地銀再編の裏で激しいシェア争い システム統合は死活問題

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ITベンダー、地銀再編の裏で激しいシェア争い システム統合は死活問題

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 地方銀行の再編が加速する中、その裏側で管理業務を支えるNTTデータや日本IBM、日立製作所などのITベンダー間の競争が激しくなっている。預金管理や貸し出し、為替業務などを行う両行の勘定系システムが統合されれば、大口顧客を失う可能性があるためだ。ITベンダー各社は、地銀大手の動向をにらみつつ、強みを生かした技術開発を進めている。

 死活問題に相当

 「ついに各県トップ行同士が経営統合する時代に突入した」と険しい表情を見せるのは、大手ITベンダー首脳だ。

 昨年11月に、肥後銀行と鹿児島銀行が経営統合の協議を開始した。背景には、九州で勢力を拡大するふくおかフィナンシャルグループの存在がある。熊本銀行や親和銀行を傘下に収め、肥後の地盤を脅かしていた。

 さらに金融庁の畑中龍太郎前長官が昨年1月、全国の頭取の前で地方の人口減少で将来的に地銀の経営が苦しくなるとし、経営統合を促す異例の発言を行った。金融当局の意向も肥後と鹿児島の経営統合を後押ししたもようだ。

 ITベンダー首脳が、地銀の動向にやきもきするのは、経営統合に伴うシステム統合があるからだ。地銀の勘定系システムの場合、年間数億円から数十億円の維持コストがかかるが、統合によりどちらかのシステムが使われなくなる。ITベンダーにとっては、多額の収益を一気に奪われる死活問題となる。

 肥後と鹿児島に関しては、肥後が日立、鹿児島が日本ユニシスを採用しているが、両行の預金規模がほぼ同じで、業界関係者から注目されている。

 昨年11月に経営統合に向けた協議に基本合意した横浜銀行と東日本銀行では、横浜がNTTデータ、東日本が富士通のシステムをそれぞれ採用している。下馬評では、預金規模から横浜が採用しているNTTデータが優位とみられる。

 地銀・第二地銀の勘定系システムをめぐっては、首位のNTTデータが35行から採用されるなど、計7社のベンダーが競合している。地銀再編の本格化で、各社の生き残りを懸けたシェア争いが始まっている。

 競争の行方を左右しそうなのが、複数の地銀が利用する「共同システム」だ。銀行の勘定系システムは数十億~数百億円をかけて独自開発するものと、共同システムの2つに大きく分けられる。共同システムはコストを大幅に削減できるため、現在約7割の地銀が利用している。

 共同システムで多くの地銀を囲い込んでいるのがNTTデータだ。同社の地銀共同センタ「BeSTA」には、地銀14行が参加している。同社は「数多くのシステム移行を手掛けてきた実績を生かしたい」(関係者)と語る。豊富な経験を武器にシェア首位を維持する構えだ。

 同じく複数の共同システムを運営する日本IBMは、地銀同士の競争激化で顧客の商品やサービス、スピードに対する要望が多様化しているとみる。そこで、基幹システムと他のシステムを簡単に連携できるソフトウエアの提供に活路を見いだしたいという。

 一方、共同化と一線を画してきた富士通も、昨年12月にインターネット経由で運用するクラウド技術を活用し、複数地銀の勘定系システムを同社のメーンフレーム(大型汎用(はんよう)機)で稼働させるサービスを提供すると発表した。このサービスで地銀のシステム統合による需要を取り込みたい考えだ。

 台風の目となりそうなのが日立だ。日立は静岡銀行と共同開発するオープン系勘定システムを武器に顧客奪取を狙う。このシステムは顧客ニーズに合わせてパッケージで提供できるのが特徴。メーンフレームを使った主流のシステムよりも金融商品の開発が2~3倍速く、構築・運用費が3割も安いという。

 既に京葉銀行が採用を決めており、日立の松原克之地域金融機関担当本部長は「複数の問い合わせが来ている」と手応えを感じている。さらに、日立は勘定系システム周辺のATM(現金自動預払機)管理の負担を軽減するクラウドサービスや、膨大な情報を活用するビッグデータソリューションなども販売し、付加価値を付けた営業提案で巻き返しを図る。

 日立と同様にオープン系勘定システムを展開する日本ユニシスやNECも、コスト面のメリットを武器に地銀への営業を強化しているという。

 対応力と低コスト鍵

 あるITベンダー幹部は「この10年で地銀の数が減るのは確実でベンダー側の淘汰(とうた)も進む」と分析する。今後はベンダー間の事業提携や、事業の撤退・売却の動きが出てくる可能性もある。再編は、地銀だけでなく、ITベンダーにも飛び火しそうな勢いだ。

 厳しい事業環境の中で、ITベンダーが生き残るためには、地銀の経営統合に柔軟かつ迅速に対応でき、コストも抑えられるシステムを開発できるかが鍵となる。システム周辺のソフトウエアやアプリケーションの開発状況も、勝敗を分けるポイントとなりそうだ。(黄金崎元)

【用語解説】ITベンダー

 情報関連システムや機器、ソフトウエア、サービスなどを販売する企業。金融機関向けには、業務の中核を担う勘定系システムを提供し、顧客の口座残高の管理や入出金・送金処理、為替取引などを行っている。

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