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どう利益還元するか…好調トヨタの苦悩 持続的成長とベア先導の板挟み
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決算についての記者会見を終え、記者に囲まれるトヨタ自動車の佐々木卓夫常務役員=4日午後、東京都文京区 トヨタ自動車が4日発表した平成27年3月期予想の上方修正は、日本企業の景況感にも大きな影響を与える。ただ、「もうけすぎ」との指摘もあり、今後は約3万社ともいわれる取引先や従業員への利益還元を求める声が一層強まるのは必至だ。円安効果による海外販売の採算改善が寄与した好業績を、いかに維持し、持続的成長につなげるのかが大きな課題だ。
「デフレ脱却と『経済の好循環』が日本経済にとって極めて重要だ。企業として、できることを考えたい」
トヨタの佐々木卓夫常務役員は決算会見でこう述べ、取引先や従業員に利益を還元する考えを示した。トヨタは26年度下期に続き、27年度上期も取引先企業に対する部品購入価格の値下げ要求を見送る方針だ。
トヨタは従来、半年ごとに1~1.5%程度のコスト削減を取引先に求めてきた。だが、27年春闘での賃上げを系列各社にも広げるため、取引先の負担軽減を優先した。デンソーやアイシン精機など、トヨタグループの主要部品メーカーも同様の措置を取る見通しだ。
国内生産の約5割が輸出向けのトヨタにとって、円安効果は大きい。1ドル当たり1円の円安で、営業利益が年400億円上昇する。トヨタは27年春闘でベースアップ(ベア)に相当する賃金改善を2年連続で実施する見通しだ。
一方、海外に販路を持たない中小部品メーカーは、原材料価格の高騰で業績は厳しい状況だ。ある部品メーカーは、「円安はむしろマイナス面のほうが強い。ベアなんて考えられない」(幹部)と打ち明ける。
安倍晋三首相は政労使会議で「生産性向上や収益拡大を賃金上昇につなげることが重要」と産業界に協力を求めた。
春闘相場をリードするトヨタは、値下げ要求見送りの効果を2次、3次の系列取引先に波及させようとしている。
ただ、値下げ要求などコスト削減策は、トヨタの競争力の源でもある。厳しいグローバル競争の中で、中長期にわたる継続的な値下げ見送りは困難だ。トヨタ社内では「トヨタ伝統の徹底した倹約意識が薄れてはいないか」と、好業績の副作用を危ぶむ声も出ている。
世界販売台数見通しを1%減の900万台に引き下げるなど、アジアや国内での販売が下振れする中で、トヨタは想定為替レートを1ドル=109円に見直した。だが今後、為替相場が円高に反転すれば、収益構造の悪化につながる恐れもある。
利益還元の“大盤振る舞い”で稼ぐ力を損なっては本末転倒だ。持続的成長と社会的責任のはざまで、トヨタの悩みは深い。