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「餃子の王将」男社会の限界 女性が働きやすく、女性客が満足する料理へ
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「餃子の王将」の店舗で働く女性従業員。「男社会」の王将で今後、どれだけ女性を増やすことができるか(王将フードサービス提供) 「餃子の王将」を展開する王将フードサービスが、社会保険労務士の池田直子氏(50)を同社初の女性社外取締役に招くと発表した。6月の株主総会を経て正式に決定する。労務管理のアドバイスを求めるためだが、背景には、飲食業界で深刻化する人材不足がある。昨年の春闘では一律1万円のベースアップ(ベア)に踏み切るなどして人材確保に懸命だ。男社会のイメージが強い職場環境を改め、女性の働きやすい企業になることを目指す。さらに、男性が中心の客層を広げるためにも女性の視点を生かす考えだ。(中山玲子)
「王将は社内もお客さまも男社会で成り立っていた。これからは女性の立場から、我々にご指導をいただきたい」
昨年12月、王将の渡辺直人社長は産経新聞の取材に応じ、女性取締役起用の狙いについて、こう話していた。
そして今年1月15日の取締役会で、王将は以前より就任を打診していた社会保険労務士の池田氏を取締役候補者に選任することを決定。池田氏は社会保険労務士事務所「あおぞらコンサルティング」(東京都千代田区)の所長で、王将は女性の働きやすい環境づくりについてアドバイスを受ける予定だ。
社外取締役に女性を採用するのは、人材不足が課題となっているなか、男性だけの採用では限界があるため、女性も積極的に登用することが重要になってきていることがある。王将では現在展開している約1480店舗のうち、女性店長は7人にとどまる。今国会の提出を目指す女性活躍推進法案では、女性管理職の割合などの数値目標の設定と公表を義務化しているが、「これでは女性の店長や幹部の将来の割合の目標を出すレベルにも至っていない」(渡辺社長)というのが現状だ。
こうした企業体質に対し昨年6月の株主総会では、株主から「王将の役員は男ばかりだ。なぜ女性を入れないのか」との質問が寄せられたことをきっかけに、女性管理職の育成に着手することを決意。渡辺社長は社内にしかるべき女性の取締役候補がいなければ、まずは女性の社外取締役を採用し、女性の登用を積極化するためのアドバイスを受けることにしたという。
一方で、社内の女性活用という面だけでなく、事業でも女性の視点の重要性は増している。王将といえばかつての主要な客層は「体育会系の学生だった」(渡辺社長)。
ただ、古くからの王将ファンは中高年になり、満腹感だけでは満足しなくなってきている。さらに少子化が進んでいることから来店者数を維持・増加させるためには、従来の若い男性客だけでなく、女性客の取り込みも重要な課題となる。昨年は、中高年や女性客ら向けに、料理の量を従来の半分にする「ジャストサイズメニュー」の販売を始めた。
王将は、取締役会での池田氏の発言に取り入れることで今後、女性が働きやすい会社に生まれ変わる考えだ。昨年は、平成7年の株式上場以来初めてとなるベアを実施。月1万円のベアを断行し、今春も渡辺社長は「昨年並みのベアを実施する」と意欲をみせる。
現在、王将で働く社員の1日の労働時間は基本の8時間に加えて、残業2時間の計10時間になっている。今後は残業時間を減らし、時間的な制約のある主婦でも働くことができる職場環境を整え、雇用の幅を広げる。来春の稼働をめざし、約60億円を投資して埼玉県東松山市に「セントラルキッチン」を建設中で、工場での調理工程の配分を大きくすることで、店内の作業を少なくし、労働時間の短縮を目指す。
将来的には子育て中の女性が働くことができるように、託児施設の整備も進める方針という。
少子高齢化の進む日本が今後も持続的に成長するためには、意欲がありながら家庭や子育てなどの理由で働いていない女性の労働力を活用することが不可欠といわれる。男ばかりの職場のイメージが強い王将も深刻な人材不足から脱男社会に一歩踏み出す。女性が働きやすいだけでなく、女性客にも満足感をもたらす料理とサービスが提供できるようになるか-。
女性の視点を取り入れる王将の今後の変貌が注目される。