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燃料電池車向けの「水素ステーション」設置ラッシュ…エネルギー各社の投資には温度差
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JX日鉱日石エネルギーが開設した水素ステーション=平成26年12月11日、神奈川県海老名市 「究極のエコカー」といわれる燃料電池車(FCV)に、燃料の水素を供給する「水素ステーション」整備の投資が動き始めた。JX日鉱日石エネルギーは今月だけですでに東京都、横浜市、愛知県、さいたま市の4カ所に開設し、平成27年度末までに合計40カ所に整備する。ただ、建設コストや規制といった課題をクリアする必要があるほか、FCVの普及も見通せないため、整備に慎重な企業も多く、エネルギー各社の投資姿勢には温度差がみえる。
2月6日、東京都千代田区のJX本社。杉森務社長は納車されたFCVを自ら試運転し、「ガソリン車と違って、まったく音がしない。乗り心地もいい」と舌を巻いた。
JXはこのFCVを水素を充填するデモンストレーションなどに活用する考えだが、水素ステーションの設置にはハードルがある。建設コストは、ガソリンスタンドの約5倍の5億円程度。ガソリンスタンドに比べて広い敷地面積が必要で、立地の規制も厳しい。
政府は27年度末までに水素ステーションを全国に100カ所整備する計画を掲げ、昨年7月に兵庫県尼崎市に他社に先駆けて開設した岩谷産業も20カ所に増やす方針だ。だが現在、具体的な設置目標を示しているのは岩谷とJXだけだ。
東京ガスは昨年12月に東京都練馬区にオープンし、さいたま市で2カ所目を建設中だが、その後の設置予定は立っていない。
トヨタ自動車が昨年12月発売した国内初の市販FCV「MIRAI(ミライ)」は発売後1カ月の受注台数が、当初の年間販売目標の4倍に迫る1500台となるなど出足は好調だ。
トヨタは、生産能力を29年に現在の4倍強の3千台に増強するほか、FCV関連の特許を32年までライバル各社に無償提供し、市場拡大を促す。
FCVの普及を後押しするため、安倍晋三首相は規制緩和に前向きだが、東ガス幹部は「FCVの普及台数が千台規模ではコストダウンにも限界がある。水素の製造や輸送の方法が確立できなければ、普及は難しい」と不安を隠さない。
こうした状況を受け、トヨタ、日産自動車、ホンダの3社は水素ステーションの整備を共同で支援する方針。運営費用の一部を負担するなどして、なんとか設置を加速させたい考え。JXや岩谷は、採算割れ覚悟で水素価格をハイブリッド車の燃料代並みの1キログラム当たり1千~1100円(税抜き)に設定した。
しかし、「FCVの本格普及は水素社会を世界にアピールする5年後の東京五輪以降だろう」(JX幹部)との声も漏れるなど、インフラ投資のペースはなかなか上がりそうにないのが実情だ。(宇野貴文)