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情報通信
【視点】膨らむ情報コストの抑止となるか 光回線と携帯電話のセット販売
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「携帯電話と光通信のセット割引を始めます。大変お得です。犬のクリアファイルを差し上げます。ぜひご加入ください」
2月に入ってすぐ、東京・新宿の家電量販店の入り口で、ある携帯電話会社がこんな勧誘をしていた。一応資料だけもらおうとすると「すみません、パンフレットや説明書はまだできていません。割引になりますのでぜひ事前受け付けを」。対応係員による説明もよくわからなかった。
これまで住宅や事業所向けに「フレッツ光」の名称で、光ファイバー通信回線を直接販売してきたNTT東西地域会社が、契約拡大ペースが頭打ちになったために販売方針を転換。今月から他社による間接販売を“解禁”した。
冒頭の話は先陣を切った携帯電話会社が、大慌てで勧誘を始めた様子だ。
ここでいう「他社」は当初は携帯電話会社やインターネット接続サービス会社(プロバイダー)がほとんどだ。(1)光通信回線(2)インターネット接続サービス(3)携帯電話契約-の3つかそれ以上を組み合わせて販売し、「セット割引」を売り物として顧客に訴求する。
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これ、国内旅行のパックツアーに例えるとわかりやすいかもしれない。パックツアーは、おおむね航空機または鉄道、ホテル、レンタカー(または随行バス)の3点セットが基本で、ツアーならではの大幅値引きが享受できる場合が多い。
NTTの光回線をツアーでの航空機に見立てると、従来は参加者が個別に予約し搭乗していたのが、今回からは新たに設定される事業者向け特別運賃で旅行代理店が仕入れてツアーに組み込むように変わったといえる。
現状の個別契約と比べてどれくらい安くなるかはまさにケース・バイ・ケースだが、加入直後の特別割引期間を除くと、光回線とプロバイダー料金のセットで200円程度、ここに携帯電話が加わると、1000円を超える割引幅になる場合が多いようだ。場合によっては「家族全員で総額10万円以上がお得」という宣伝文句も間違いではない。
それだけ値引きできるほど支払額が多いことに改めて驚く。例えば携帯電話が家族4人で3万円として、光固定回線にプロバイダー料金、さらにコンテンツ費用も含めると、合計で4万円を超えそう。2年間で100万円近い。なるほど、総額10万円の値引きも成り立つなと納得する。
われわれが支払っている情報・通信コストはこれだけではない。CATVや衛星放送の大部分はNHK受信料も含めて費用がかかるし、書籍や新聞、雑誌の代金もある。CDやDVDの費用もある。支払総額で月10万円近い世帯もあろう。
増税や値上げが続くなか、今回のセット料金が上昇する情報・通信コストの助け舟になるのなら、大いに歓迎したい。
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いいことずくめに見えるが、注意しておかなければならないこともある。現時点ではわからない点も多いが、一般的にはセット契約をすれば、変更や解約はかなり面倒になる。例えば別の事業者から画期的なスマートフォンが発売されても、変更が難しそうだ。変更するならサービス全体の解約になりかねず、そのさいはあのまがまがしい「解約金」が発生する可能性も高い。
これは情報通信だけの話ではない。来年、再来年と始まる電力、ガスの小売り自由化でも、この「セット販売」が台頭してくると予想されている。「セット販売」への傾斜はますます進むことは間違いない。
食事の定食やパック旅行は一度きりだが、公共料金などは長期間にわたる。十分に損得や変更可否などを考えたうえで、加入するセットを決めたいものだ。
ところで最後に蛇足めいて恐縮だが、NTTの事業者向け光回線サービスの名称だけは改善を求めたい。「光コラボレーション」とか「光サービス卸」として世に出たが、いかにも意味がわかりにくい。「電子商取引」が「ネット通販」と呼ばれて一般化したように、直感的にサービス内容がイメージできる名称をつけないと、普及の妨げになりかねない。
(SankeiBiz編集長・高原秀己)