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【本気の仕事講座】(50)雇用は最大の福祉を信条に
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「ロールモデルは福沢諭吉」と話す藤井太一さん(右) 今回の主人公は、福岡の名士として知られるACR代表取締役の藤井太一氏。1982年慶大卒業後、大手出版社で雑誌の編集に携わっていたが、入社1年目の時にACR創業者の父親が急逝。急遽(きゅうきょ)帰省し、同社に入社、94年から現職。業務領域は人材ビジネス全般(人材紹介、人材派遣、就業支援、社員教育、適性検査など)、ならびにグループ会社でイベント企画運営、求人誌発行、給与計算代行まで幅広い。福岡青年会議所副理事長、福岡中部法人会青年部理事、福岡県中小企業経営者協会理事、同県経済動向ネットワーク会議副座長などを歴任。社団法人日本人材紹介事業協会副会長も務める。
仕事に対する姿勢は、目先の利益にとらわれず、常に顧客に対して最善のことは何なのかを考え抜く。「雇用は最大の福祉である」を信条に、「人と企業の懸け橋となり社会に貢献する!」を社是に掲げる。
ロールモデルは福沢諭吉。独立自尊の精神は日本の繁栄の基礎となったが、今最も日本人に必要とされる精神であると信じて疑わない。
本気度を炸裂(さくれつ)させた体験を伺う。「十数年前、公共事業といえば土木工事や建設ばかりで、就職支援に関しては自治体の予算がまったくつかなかった。これからは『人』が地域を支える時代。自治体も就業を支援するために予算を割くべきだと、自身の考えを企画書にまとめ提出し、予算獲得につなげた。自社の命運も賭け、あのときほど一枚一枚の紙に魂を込めたことはない。その強い思いが自治体の担当者にも伝わった」
一方で失敗談も伺う。「景気の良い時代に調子に乗って福岡を代表するような先進的ビルに高価な家賃を払い出店。その後、バブル崩壊により退店どころか、社員のリストラまでしなければいけないはめになったことは今でもつらい体験。『分不相応』という言葉を、常に頭のどこかに置いている」
現在、政治家、企業家にすさまじいほどの迫力を感じる人物がいないと感じている。
裏返すと、リーダー不在の混沌(こんとん)とした世の中になってしまったという危機感が強い。
ヒューマンリソース・マネジメント(HRM)という概念が国内に導入されて久しい。ヒューマンリソース、すなわち人的資源、人の可能性を信じて人材育成や組織開発を進める時代が到来したことに他ならない。すべての人が各自の持つ大きな可能性をフルに発揮して組織に貢献できるよう環境を整備する。
デリバラブル的発想にも着眼したい。デリバラブルとは「deliber(届ける)+able(できる)」の合成語。「何をお届けできるか」を表す。自分は何ができるかではなく、相手にどんな価値をお届けできるか。そういう発想の転換をさまざまな場面で体現している藤井氏はいつも熱い。
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【プロフィル】柴田明彦
しばた・あきひこ 1959年、東京生まれ。亥年、乙女座、AB型。慶大法卒。83年電通入社、新聞局業務推進部長などを歴任し、2006年退社。一般社団法人「NS人財創造機構」を設立し、大学講義や講演会、研修を行う。14年に設立した「多様性工房」で、広報・宣伝や販売コンサルティングも手がける。著書は「ビジネスで活かす電通鬼十則」(朝日新書)ほか。