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【健康と向き合い一世紀】(2)「希釈する」体験、「味覚」を学ぶ機会
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子供の心の成長に欠かせない親子のコミュニケーション 乳酸菌飲料開発の先駆けとして、微生物の分析や技術革新など、“心とからだの健康”に役立つ研究を長年にわたって続けているカルピス社。からだに良いだけではなく、“「カルピス」を親子で作って飲むことが、子供の心の成長に好影響を及ぼす”という、興味深い研究結果が今年3月に日本発達心理学会第26回大会で発表され、注目を集めた。
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核家族化が進み、地域コミュニティーも希薄になりつつある現代。さらに、女性の社会進出が進み、限られた時間の中で不安を抱えながら育児に奮闘しているワーキングマザーも多い。このような社会背景において、同社では「『カルピス』を通したコミュニケーションを育児に役立てられないか」という仮説のもと、親子で一緒に作って飲むことの心理的影響について、白百合女子大学との共同研究を行った。
◆自分で考えて工夫
調査では、観察と質問紙への回答の2つの方法が取り入れられている。観察調査では、3歳児から小学校5年生の母子16組を対象に、「カルピス」を親子で作って飲む場面を3回にわたって撮影。この様子の変化から、親子の行動の特徴を分析し、子供の成長にどのように影響するかを検証した。
撮影された映像を見ると、「カルピス」の商品の特徴である“希釈する”という行動に大きな意味があることが分かる。1回目は「カルピス」や水の量をどの程度入れればよいのか分からない子供に母親が丁寧にアドバイスし、不慣れな作業の様子を熱心に見つめる。子供は初めての体験に最初は不安そうな表情を見せながらも、母親に見守られている安心感の中で完成させ、うれしそうに満面の笑顔を向けた。
「『カルピス』を作る」という作業を進める中で、母親のアドバイスや子供からの問いかけなど、親子の間には多くの言葉が飛び交い、目線を合わせた密なコミュニケーションが生まれていた。そして、同じ親子の2回目、3回目の様子を順に見ていくと、子供の様子が明らかに変化してくことに驚かされる。
1日目は母親に言われた通りにやっていた子供が、体験を積んで自信をつけたことから、自分から積極的に参加するようになる。回数を重ねるごとに、「カルピス」や水の適量を意識し、自分で考えて工夫する様子が見て取れるようになった。この変化は小4、小5の大きな子供だけでなく、わずか3歳の幼児にも見て取れる。
◆味わいのコントロール
「カルピス」を作ることを任されたことが責任感と集中力を生み、慎重にグラスに水を注いでいく。そして、作り上げる達成感や、何かができるようになることの喜びを子供たちの自信に満ちた笑顔が語っていた。
「カルピス」を作るという、一見単純な作業の中にも、分量の配分という工夫の余地。そしてそれは「味の違い」となって結果に表れ、次第に好みの味を求めて分量を調整する。子供にとって、それは「味覚」を学ぶ機会にもなり、甘さや味の濃さを繊細に感じ取り、「おいしい」と感じる味わいにコントロールしていくという訓練にもなりそうだ。