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【石油危機の教訓】(上)電力供給に厳しい現実

ニュースカテゴリ:社会の話題

【石油危機の教訓】(上)電力供給に厳しい現実

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関西電力海南火力発電所の設備をチェックする作業員=1月20日、和歌山県海南市  ■原発代替の火力も老朽設備で悲鳴

 キンコン、キンコン…。暮れも押し詰まった昨年12月29日午前2時すぎ。関西電力の海南火力発電所(和歌山県、出力計210万キロワット)の中央制御室で鋭い警報音が鳴り響いた。

 3号機(60万キロワット)のボイラー配管の圧力調整弁の異常を知らせるサインだ。駆けつけた作業員が弁の蒸気漏れを発見し、運転を緊急停止した。

 幸い、管内の大半の工場は年末休業に入っており、電力が不足する事態は回避できた。突貫工事で修理にあたり、大みそかの午後6時すぎには発電できるようになった。海南発電所の釜谷文博・計画課長は「年が明けても発電できなければ、どうなっていたか」と厳しい表情を浮かべた。

 東京電力福島第1原発事故の後、国内の原発は相次いで運転を停止し、現在は稼働ゼロだ。これを補っているのが火力発電だ。ただ、全国に約300ある火力発電所のうち、運転開始から40年を超えた古い設備が全体の2割を占める。定期検査を特例的に先送りし、何とかつじつまを合わせているのが実態だ。

 故障が起きた海南発電所は、1970年代に稼働を始めた典型的な老朽火力だ。エネルギー効率の悪い石油火力で、1~4号機がフル稼働すると、1時間に使用する石油は約500キロリットルと10時間でタンカー1隻分を使い果たしてしまう。3号機に隣接する2号機は老朽化で2001年に運転を止めたが、関電は原発の稼働停止で一昨年夏に運転を再開させざるを得なかった。

 ◆計画外停止が2割増

 そうした取り組みも限界を迎えつつある。昨年7、8月に故障などで起きた計画外停止は、前年より2割も増えた。無理やり稼働を続けてきた老朽火力が悲鳴を上げているのだ。

 電力供給の危機は老朽火力だけではない。液化天然ガス(LNG)を燃料とする比較的新しい設備もトラブルとは無縁ではない。発電所で不測の事態が起きれば、予想外の大規模停電に発展する恐れがある。

 実際、そうした危機が2年前に九州で起きている。

 「新大分が止まるかもしれない。すぐに出社してください」

 12年2月3日未明。九州電力中央給電指令所の当直社員は声を震わせながら、自宅で眠る社員を次々に電話でたたき起こした。

 この日、大分市内の気温はマイナス4.3度。この寒さで新大分火力発電所(出力計229万5000キロワット)では配管にたまった水が凍結、ガスを送り込めなくなり、全13基が午前4時すぎに緊急停止した。

 新大分は原発2基分の電力を供給する重要電源だ。工場や事務所の仕事が始まる午前9時までに動かなければ、電力の供給余力を示す供給予備率がマイナス14.8%となり、大規模停電に陥る危険があった。

 配管の氷を溶かすため、所員たちがバケツでお湯をかける作業が続く中、電力需要が増え始める午前6時が刻一刻と近づく。やむなく九電は他の電力各社に緊急融通を依頼。関西、中部など6社が早朝から自社の発電所をフル稼働し電力を九州に送り、大規模停電という最悪の事態は免れた。

 ◆依存度9割に上昇

 1973年秋の第1次石油危機は、日本が戦後初めて経験したエネルギー危機だ。これを教訓に電力各社は、原発など電源の多様化を進め、石油火力の割合を7割から1割未満に引き下げた。

 だが、事故後の原発停止で、LNGを含めた火力発電への依存度は急激に高まり、今では石油危機時を上回る9割に達している。原油の中東依存度も危機当時の水準に戻った。40年をかけて見直しを進めてきた日本のエネルギー状況は、再び脆弱(ぜいじゃく)なものになった。

 安倍晋三首相は先月29日の参院代表質問で「電力は足りているとの指摘もあるが、発電所の定期検査繰り延べや老朽火力をフル稼働している結果であり、電力需給は予断を許さない」と答弁し、安全性を確認した原発の再稼働に意欲を示した。

 政府の危機感は強い。だが、原発への不安が根強い世論の前で、有効な手を打つことができていない。まずは、日本の電力供給をめぐる厳しい現実を国民に正しく伝えることから始めねばならない。

                   ◇

 石油危機から40年が経過した。その日本はいま再びエネルギー危機に見舞われている。石油危機の教訓は現在の日本に生かされているのかを検証する。

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