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【ノーベル物理学賞】「われ一人、荒野を行く」 孤高の精神を貫いた赤崎さん
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学生と実験する赤崎勇氏=2011年(名城大提供) 青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞の授与が決まった赤崎勇氏(85)。世界中の研究者が見切りをつけた窒化ガリウムにこだわり続け、不可能といわれた高品質の結晶づくりに成功し、半導体光源の新時代を切り開いた。強い信念に基づくその生きざまを支えたのは、「われ一人、荒野(あれの)を行く」という孤高の精神だった。
赤崎氏がLEDの研究に本格的に着手したのは松下電器産業(現パナソニック)に入社した9年後、同社東京研究所に在籍していた昭和48年のことだった。光の三原色のうち赤色と緑色のLEDは既に実用化され、残る青色の激烈な開発競争が世界で始まっていた。
当時、青く光る可能性がある物質はセレン化亜鉛や窒化ガリウムが期待されていた。ただ、窒化ガリウムは電気的な性質の制御に必要な高品質結晶を作るのが非常に難しく、「本命はセレン化亜鉛」との考え方が世界の主流だった。それでも赤崎氏は、窒化ガリウムにこだわり続けた。
「セレン化亜鉛より物理的にも化学的にもはるかに安定しており、優れた点が多い。結晶の品質をとことん良くすれば必ず活路は開ける」
背景には、入社前の30年代に名古屋大でゲルマニウムの高純度の単結晶化に取り組み、成功させた経験と自信があった。「結晶を反応管から取り出すときの期待や興奮にのめり込んだ時代を思い出した」からでもあったという。
主流から離れた赤崎氏を待っていたのは孤独な戦いだった。56年に開かれた半導体の国際学会。研究成果を発表しても反響がなく、会場からは質問も出なかった。「われ一人、荒野を行く」。このとき赤崎氏はこうつぶやき、窒化ガリウムの研究を絶対にやめないと心に誓った。
男の意地でこだわり続けた結果、ついに60年、高品質結晶の作製に成功した。結晶を作るサファイア基板の表面に、窒化アルミニウムの薄膜を作る手法を「経験上の勘」で導入してみたところ、基板の上に、透明でひび割れのないきれいな結晶を作れたのだ。
これによって実用的な輝度の青色LEDが完成し、光の三原色がそろった。赤崎氏の功績で信号機や照明器具は次々とLEDに置き換わり、野球場などでフルカラーの野外大型ディスプレーも実現。屋内施設で野菜を作る植物工場にもLEDが利用されている。
今年9月、名古屋市内で産経新聞の取材に応じ「LEDの普及で世の中は大きく変わった」と感慨深く語った赤崎氏。LEDにはさらに大きな可能性があると確信しており、「今後も健康の許す限り、結晶、光、半導体にかかわる仕事を続けていきたい」と意欲を燃やしている。