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【気候変動 交渉に吹く風 COP21パリ会議に向けて】連載寄稿(4)

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【気候変動 交渉に吹く風 COP21パリ会議に向けて】連載寄稿(4)

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COP20での会議場の様子。スクリーンは議長を務めたペルーのプルガルビダル環境相((C)WWFジャパン)  □WWFジャパン 自然保護室 気候変動・エネルギーグループリーダー・山岸尚之

 ■排出量削減目標 リマ会議が示した2015年の道筋

 ◆3つの主要論点

 2014年12月1~14日、南米ペルーの首都リマで、COP20・COP/MOP10(第20回国連気候変動枠組み条約締約国会議・第10回京都議定書締約国会議)が開催された。交渉は、2020年以降の気候変動に関する新しい国際枠組みについて、15年12月に合意することを目指して進められている。

 その交渉は主に、11年のCOP17・COP/MOP7(南アフリカ・ダーバン)での合意に基づき、ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)を舞台に行われている。今回のCOP20でも形式上は、このADPで議論が行われる形となった。

 今回の会合では、3つの主要論点があった。1つ目は、20年以降の新しい国際枠組みにおける「国別目標案」のあり方。2つ目は、新しい国際枠組みがスタートする20年までの取り組みの底上げ、3つ目が、新しい国際枠組みの「elements(要素)」に関する論点である。

 今回は、日本にとって特に重要となる、国別目標案の議論に焦点を当てて、COP20の議論を振り返る。

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 ◆国別目標案のあり方

 13年のCOP19・COP/MOP9(ポーランド・ワルシャワ)で、各国が新しい国際枠組みにおける自国の目標案(国別目標案)をいつまでに出すか-ということが議論になった。国別目標案は英語で「Intended Nationally Determined Contributions(INDCs)」と呼ばれる。COP19での厳しい交渉の末、弱い表現ではあるが、「2015年3月」という提示期限が決定文書に入った。各国とも、この時期を目安に国内での議論や準備を進めることが期待されている。EU(欧州連合)や米国、中国はすでに独自の目標を公表しており、この期限内に正式に目標案を提示する予定である。こうした流れを受け、COP20での争点は、大きく分けて2つあった。1つは、国別目標案にどのような情報を盛り込むか。もう1つは、国別目標案が各国から提示された後、出された目標案について国際的に何(事前レビュー)をするか-であった。

 国別目標案の情報要件については、2つのレベルで議論があった。まずは、目標案がカバーすべき範囲を、温室効果ガスの排出量削減目標(緩和策)だけにするのか、それとも温暖化の影響を抑える適応策、途上国向けの資金、技術といった分野についても、目標を持つべきかという争点である。途上国の中でも、中国、インド、サウジアラビアなどの一部中東諸国、ボリビア、ベネズエラなどの一部中南米諸国からなる同志国グループ(Like-Minded Developing Countries;LMDCs)は、すべての分野が目標案に含まれるべきだと主張し、あくまで排出量削減目標を中心としたい先進国と意見が対立した。

 もう1つの議論は、排出量削減目標について、提出すべき情報(基準年、対象ガス、目標の形式など)をどこまで規定するべきか、という点だった。この点についても、出すべき情報を先進国と途上国で明らかに差別化したいと主張する同志国グループと、最低限の情報は共通にするべきだと主張する先進国、そして先進国と途上国の差異化は残しつつも、途上国の中でも、将来的には徐々に先進国の総量目標に近い形式で目標を出していくことを示唆するべきとするブラジルなど、多様な意見が出された。

 議論の結果、国別目標案の中身は、あくまで各国が独自の判断で出すことを前提としつつ、排出量削減に関する情報が列挙されることで、排出量削減目標が中心であることが示唆された。一方、適応策についても国別目標案で言及することが奨励されたことで、部分的に途上国の意向を汲んでいる。

 注目すべき点は、義務的な項目ではないものの、提示した国別目標案がなぜ野心的(十分な削減であるといえ)かつ公平なものといえるのか理由を書く-という項目に言及があったことだろう。つまり、削減の技術的な情報提示だけでなく、その世界全体の取り組みの中で妥当性を持っていることについても述べることが奨励されたといえる。日本が提出する目標案でも、この視点を取り入れることが重要である。

 国別目標案を提出した後の国際的プロセスについては当初、各国が出してきた国別目標案について2015年6月や秋ごろの会合で、お互いに不明な点を確認しあったり、全体として評価したりする場の設置が期待されていた。同年末のCOP21・COP/MOP11(フランス・パリ)での最終合意の前に、各国の目標案をチェックし合うもので、「事前レビュー(ex ante review)」と呼ばれていた。

 しかし、この点については、中国、インドなどの途上国から強い反発があり、結局、公式な事前レビューの場は設立されなかった。反発の背景には、途上国が提示した削減目標が、先進国と同列で評価されるという決定がリマ会議の時点で出ることに対し、強い不満があったと考えられる。

 代わりに、各国から15年10月1日までに出された国別目標案を「統合報告書」としてまとめ、11月1日に発表することになった。COP19で奨励された「準備のある国は目標案を15年3月までに提出」という期限と合わせて考えれば、3月に目標案を提出後、公式ではないものの各国同士の中で議論が行われ、11月の統合報告書を通じ、12月のCOP21パリ会議前までにすべての国々の目標案の意味合いが確認される、というスケジュール感が示唆されている。

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 ◆日本がやるべきこと

 国連気候変動交渉は基本的に、15年までに新しい国際枠組みの合意を目指しつつ、20年までの取り組みの底上げを図るという流れできている。その中で各国は、新しい枠組みでどのように排出量削減に貢献できるかを問われるようになってきた。前述の通り、14年10月から11月にかけて、EUや米国、中国が相次いで自国(地域)の排出量削減目標を発表し、国際的な機運が盛り上がりを見せている。

 今回、国別目標案に盛り込む情報要件がまがりなりにも決まったことで、その他の国々の準備も本格化することが予想される。日本も、世界第5位のCO2排出大国として、国別目標案の提出を急ぐ必要がある。今回の決定文には、国別目標案は現在の取り組み以上のものでなければならないということも書かれている。つまり、20年に向けての目標よりも、形式やその厳しさを後退させることは許されない。

 交渉の土台となる交渉テキストが準備され、交渉が佳境を迎えるとみられる15年6月の会合までに日本が国別目標案を提出できなければ、15年合意に向けた交渉加速の足を引っ張ることになりかねない。国内での着実な議論の進展が必要である。

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【プロフィル】山岸尚之

 2003年に米ボストン大大学院修士号を取得後、WWFジャパンで温暖化とエネルギー政策提言に従事。

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