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新幹線逆走もあり? 青函トンネル事故でJR北海道、奇策含めた安全対策急ぐ

ニュースカテゴリ:社会の事件・不祥事

新幹線逆走もあり? 青函トンネル事故でJR北海道、奇策含めた安全対策急ぐ

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 全区間に試験運転の範囲が広げられる北海道新幹線。来春の開業に向けて準備が進められているが、青函トンネルを走行中の特急列車から発煙し、乗客124人が避難した3日の事故は、安全面での課題を改めて浮き彫りにした。JR北海道は逆走を含めた“奇策”も考慮して対策づくりを急いでいるが、根本的な解決策は見いだせず、苦しい対応を強いられそうだ。

 全長53.85キロに及ぶ青函トンネルはJR北の在来線との共有区間内にあり、地上まで乗客を運べるケーブルカーを備えた避難拠点となる2つの旧海底駅がある。車両火災の場合は、拠点駅まで列車を走らせ、乗客を避難させるという。

 ただ、今回の発煙事故のように旧駅を通過してしまった場合、現在の在来線で逆走させるには、信号システムの関係からポイントごとに誘導員を配置させる必要などがあり、担当者は「手間と時間がかかり現実的な手段ではない」と説明。今回の発煙事故でも乗客らは旧駅までの約1.2キロを歩いて避難した。

 一方、北海道新幹線の場合、衝突の危険を回避できる安全性の高いデジタル式のATC(自動列車制御装置)を備えており、担当者は「火災はトンネルを抜け切るのが大前提だが、万一のケースでは、ATCがあるため、誘導員を配置する手間をかけずに逆走させることも可能になる」と話し、対策の選択肢になり得るとの考えを示している。

 ただ、新幹線を逆走させることについて、JR東海の担当者は「詳しく調べてみないと分からないが記憶にない」といい、混乱なども予想される。さらに、逆走させてまで乗客を駅に誘導できたとしても課題は残る。

 駅から地上に向かうケーブルカーは一度に約20人しか運ぶ能力がなく、今回の場合も124人の乗客全員を運び終えるのに9往復し約3時間半を要した。新幹線の定員は今回の乗客の約6倍の731人で、避難完了までにかなりの時間を要することになる。

 品川-名古屋駅間のうち86%が地下を走るリニア中央新幹線では、4、5キロごとに設けられるトンネル非常口が、都市部ではエレベーターを備え、山間部では緩やかな坂となるように設計し、乗客らが助け合って地上に上がれる手段を講じるという。

 しかし、青函トンネルの2つの旧海底駅から地上に通じるのは、ケーブルカー以外では階段のみ。2駅は、それぞれ1317段と1183段もあるといい、乗客が助け合って上がるのは難しく、国土交通省が来春の開業までに求める根本的な安全対策づくりは難航も予想されている。

 鉄道アナリストの川島令三さんは「トンネル内では消火設備のある安全な地点まで避難するという鉄則をJR北が守らなかったことが、今回の最も大きな問題だ。地上に迅速に上がれないのは仕方がない面があるが、まずは、逆走をしてでも、この鉄則を守るということを徹底すべきだ」と話している。(森本充)

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