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社会
北海道新幹線 厳冬対策で独自技術 開業まで1年
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北海道北斗市で速度向上試験を実施する北海道新幹線「H5系」車両=2014年12月(共同) 2016年春の北海道新幹線開業まで、あと1年。新幹線が北の大地に上陸すれば、1964年に東京と新大阪を結んで以来半世紀を経て、北海道から鹿児島県までの2150キロが新幹線のレールでつながる。初めて貨物列車と線路を共用し、北海道の厳しい環境に対応するための新技術も導入した。
北海道新幹線は、新函館北斗(北海道北斗市)-新青森(青森市)の約149キロを結ぶ。最高速度は北陸や九州と同じ時速260キロだが、貨物列車とレールを共用する区間では在来線特急並みの140キロしか出せず、東京-新函館北斗は最短4時間10分程度の見込み。航空機との競争で優位に立つには、さらなるスピードアップが課題だ。
新青森から新幹線が延伸する形になることから、列車名は東北新幹線のまま「はやぶさ」が東京・仙台-新函館北斗、「はやて」が盛岡・新青森-新函館北斗をつなぐ。新たに登場するJR北海道のH5系車両はJR東日本のE5系がベースで、東北新幹線の区間では最高320キロで走る。基本的な性能は同じだが、ラベンダーやライラックをイメージした紫の帯が車両側面に入り、雪の結晶柄のカーペットで北海道らしさを演出した。
在来線との共用走行区間は青函トンネルを含め、開業区間の半分以上の約82キロ。フル規格の新幹線が貨物列車と同じ線路を走るのは初めてだ。幅が広い新幹線用のレールを、在来線用の外側にもう1本設けた3本レール方式で、自動列車制御装置(ATC)も貨物列車と共用できる特別なATCを導入する。共用区間で最高速度を制限するのは、新幹線と貨物列車がすれ違う風圧で、コンテナが荷崩れする危険があるためだ。青函トンネル自体は新幹線規格でできており、貨物列車が走らない時間帯を設けてスピードアップする方法を検討している。
北斗市など地元自治体は羽田空港に比較的遠い北関東や東北地方に照準を合わせたPRを展開中だ。北斗市の高谷寿峰市長は「観光資源に磨きをかけて、一人でも多くの人に来てもらえるようにしたい」と意気込む。
冬は氷点下という厳しい環境のため、北陸や上越、東北で実績がある融雪用のスプリンクラーは水が凍るためほとんど使えず、高架橋に独自の冬対策設備を導入した。ポイント部分にはJR北海道の在来線で使われている「エアジェット式除雪装置」を、新幹線で初採用した。
新青森-新函館北斗は全体の7割近くがトンネルで、残り約3割が風や雪の影響を直接受ける高架橋になる。
雪で線路が埋まるのを防ぐため、新函館北斗-木古内(北海道木古内町)は、30~80センチかさ上げした路盤の脇に雪をためる貯雪式高架橋を設置。近くに住宅地がない青函トンネル入り口付近などでは、網状の床の隙間から雪をそのまま下に落とす開床式高架橋を設けた。スプリンクラーがあるのは、新青森付近のごく一部にとどまる。
雪や氷で切り替わらなくなると脱線など深刻な事態につながりかねないポイントには、電気融雪器を設置。線路脇のタンクで圧縮した空気を噴射し雪だけでなくレールの間に挟まった氷の塊も吹き飛ばすエアジェット式除雪装置を22カ所に取り付けた。新幹線と貨物列車の共用走行区間では、構造が複雑な3本レール用のポイントがある高架橋は、積雪を防ぐため屋根で覆った。
≪「最北端の駅」外観完成 商業施設誘致は苦戦≫
北海道北斗市で建設が進む新函館北斗駅は、2031年春ごろの札幌延伸まで、日本最北端の新幹線駅になる。外壁が濃いグレー、正面はガラス張りの近代的な駅舎は外観がほぼ完成したが、周囲は更地や畑がのどかに広がる。地元が目指す「北の玄関口」にふさわしい商業施設の誘致は、苦戦が続いている。
新函館北斗駅はJR函館駅(函館市)から約16キロ北西で、現在は函館線の渡島大野駅がある。札幌まで遠回りにならず、かつ在来線との乗り換えができる駅として、当面の終着駅に選ばれた。
函館の中心部からは遠いが、雄大な北海道駒ケ岳を望む大沼国定公園に近く、天気が良ければ函館山も見えるという。
改札口ができる駅舎2階には、ホームを見下ろすガラス張りの自由通路が設けられ、切符を買わずに停車中の新幹線を気軽に見ることができる。天井には北海道南部の「道南スギ」を取り入れ、木のぬくもりを感じられるようにした。
新幹線のホームは函館や札幌方面に向かう在来線と隣り合わせで、段差なしでの乗り換えを実現。開業に合わせて電化され、アクセス列車「はこだてライナー」が函館駅との間を17分程度で結ぶ。
着々と工事が進む駅舎と比べ、駅の外は閑散としたままだ。渡島大野駅は現在、特急が止まらない無人駅。北斗市は駅や周辺の整備に総額約100億円を投入し企業誘致を図っているが、レンタカーやタクシー会社計8社のほかに、進出が決まっている企業はないという。(SANKEI EXPRESS)