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迷って一歩が踏み出せない…「キャリア」とは何か?【後編】
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「キャリア」という言葉の意味について考えたことはあるだろうか。同様に、「キャリアアップ」という言葉についても、何を、どうすることがキャリアアップなのか、具体的なイメージはできているだろうか。ビジネスパーソンとして、「キャリア」というものを意識することはとても大切なこと。しかし、実は曖昧なまま使ってしまっていることも多いはず。今一度、あなた自身にとっての「キャリア」の意味を考えるために、独自のキャリアを積んできた2人の、「キャリア観」を紹介する。
テレビ番組のディレクターとして数々の人気テレビ番組を手掛けた実績をもとに、AV業界に革命を起こした高橋がなり氏。現在は180度転身し、「川上(生産)から川下(販売)までの農業改革」を目指し国立ファームを運営する。そんな彼が考える「キャリア」とは?
私にとって「キャリア」とは、出した「結果」のこと。
客観的に誰かを評価するには、結果で見るしかありません。何をして、どんな結果を残したかが重要なんです。
一方、キャリアの意味を主観的に考えると「自信」になる。仕事を頑張る、手応えを得る、人から信頼される、そして「これだけやりきった」という自信が生まれる。自信をつけると、結果もおのずとついてきます。出した結果は、次の仕事にもつながる。小さな「勝ち」を大きな「キャリア」に育てていくことが大事だと思います。
私は入社した社員たちに「3年は辞めるな」と言うんです。仕事で何らかの結果を出すためには最低限3年は必要ですから。映像業界で言うと、ADから始めて3年続ければディレクターです。どうせやるなら「私、ディレクターまでいきました」と言えたほうがいい。中途半端で辞めちゃうともったいないですよ。
私は大学に受からず専門学校に進みました。その時、なぜ合格しなかったのかを考え抜いたんです。結論は「全く勉強していなかった」から。当時は本気で「努力しなくても勝てる人生だ」なんて、とんでもない勘違いをしていたんです。
でも、それではダメだということが身にしみてわかった。そこで仕事を選ぶ時には、自分にとって努力できそうな場を選んだんです。私は体力だけは人より優れていると思っていたので、当時は難しい仕事だと言われていた運輸会社の配送ドライバーの仕事を選びました。ドライバーで自分なりの結果を出したら、次はテレビ業界へ。制作会社で、伊藤輝夫氏、現在のテリー伊藤氏率いるチームの一員になったんです。面接で伊藤さんに「私は昨年日本一働いた配送ドライバーです」って言い切ったんですよ。それだけ働いていた自負があったからです。実際、22歳の学歴もない若造が、30年前当時で年収480万円。「相当働いてたんだな」ということは伊藤さんも理解してくれたんでしょう。「配送のドライバーとして1年働いた」という小さなキャリアが、ゴールデンタイムの番組を制作するディレクターという新しい道につながったんです。
その後は社内の「事業部」で、制作したコンテンツを使った商売を担当しました。自分で経営を始めたりもするのですが、どれも失敗続き。そろそろ「次は勝たないとまずい」と思って選んだのが、アダルトビデオメーカーでした。伊藤さんのもとで突き詰めた映像制作のスキルを最大限に活かしながら、全力で打ち込める仕事だと思ったからです。ハッタリもありましたが、映像や演出について熱く語れるだけのものを身につけていたからこそ、業界歴の長い監督たちもついてきてくれました。
そこでの大成功がきっかけで、さらに「違うことがやりたい、自分にないものにチャレンジしたい」という気持ちが強くなった。それが、今取り組んでいる農業へとつながります。
今あなたがどこに進むべきか迷っているなら「求められている場所」を選んでみてはどうでしょうか。考えるから悩むんですよ。例えば、「明日から来てほしい」と喜んで迎えてくれるような職場で、最終的な結果を頭に思い描きながら「今自分に求められていることは何か」を考えて努力すれば、自信がつき、結果もきっと出るはずです。
振り返ると、私は別に世間一般で言われるキャリアアップなんて考えたことはありませんでした。ただ、いつも「今自分にできない仕事をさせてくれるところ」「今よりも自分を鍛えられる環境」を求めていたことが、今につながっているんだと思います。
私自身、将来農業の会社を経営するなんて想像したことはありませんでした。大それた人生設計なんて必要ないと思います。言い方は悪いですが、自分で決断できないときには上手く流されていけばいいんじゃないかな。ただ、その中で仕事を面白くしていく努力はすべきでしょう。
皆さんも、あまり「キャリア」という言葉に深くとらわれすぎないほうがいいのではないでしょうか。誰にでも、キャリアを作るチャンスや方法なんていくらでもありますよ。配送ドライバーとしてがむしゃらに働いた経験が、今の私を形成する立派なキャリアになっているようにね。
国立ファーム有限会社
代表 高橋がなり氏
運送業のドライバーを経て、テレビ制作会社へ。テリー伊藤氏に師事し、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』などの人気番組に携わる。95年にAV制作会社ソフト・オン・デマンド設立。2006年からは、農作物の生産・流通などを手掛ける「国立ファーム」をスタート。
「キャリア」という言葉をひと言で表現することは難しいし、人それぞれ違う解釈があって当然だろう。だからこそ、「キャリア」「キャリアアップ」という言葉を曖昧なままに使うのではなく、自分にとっての意味や価値を考えておく必要があるのではないだろうか。今回登場した2人に共通しているのは、ビジネスパーソンとして身につけてきたものを、未来への一歩につなげていくことを総じて「キャリア」と表現していること。そして、その一歩はそんなに構えるべきものではないと考えていること。小さな一歩の積み重ねが、大きなキャリアになる。高橋氏が言うように、キャリアを作るチャンスや方法は、誰にでもいくらでもあるのだ。だからこそ、構えすぎないことが、あなたらしいキャリアを作る一歩になるのではないだろうか。
(リクナビNEXT/2012年11月14日)
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