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京都銀行“読書塾”で幹部育てる 直感力・決断力・突破力を生む
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柏原康夫会長主催で開かれる、京都銀行の読書勉強会「画竜塾」=京都市下京区(京都銀行提供) 幹部の経営感覚を磨こうと、京都銀行で月に1回、「画竜(がりょう)塾」と呼ばれる読書勉強会が開かれている。柏原康夫会長が発案、主催するこの勉強会は、毎回、課題となる図書が決められる。勉強会に出席する幹部は事前に指定された本を読み、当日、15~20人が集まって本の内容について意見を述べ合う。課題となる本のジャンルはさまざまだ。そこには特定の分野に傾注せず、幅広い視野で経営を考える人材になってほしいという思いが込められている。
画竜塾は昨年4月、「多忙な幹部にこそ、読書の時間をもってほしい」と柏原会長が主催者となって始めた。対象は部長クラス。原則、毎月第3木曜日、仕事が終わった午後5時から約1時間開く。
課題図書は柏原会長と事務局が選定。幹部は課題図書を購入して読み、それについてのリポートを画竜塾の数日前に事務局に提出する。そして塾の当日、会長や他の幹部の前で一人ずつ感想を話す。
ユニークな塾名は、故事成語「画竜点睛」から引用し、柏原会長が名付けた。重要な部分に手を入れ、全体を完成させていく、という意味の言葉で、経営においても肝心なところをしっかり押さえ、自らを高めていくことを目指した。
塾の狙いについて、柏原会長は「経済を含め、社会科学に『正解』というものはない。本をきっかけにさまざまな人の意見を取り入れ、社会の変化に柔軟に対応できる思考を身につけること」と話す。
画竜塾では、これまでさまざまな本を対象にしてきた。ホンダの創業者である本田宗一郎氏の経営人生を描いた『夢を力に』(日経ビジネス人文庫)や、デンマークが戦後の壊滅的な状態から国土を建て直していく過程を書いた『後世への最大遺物 デンマルク国の話』(内村鑑三著、岩波文庫)など。
もちろん銀行だけに、金融に関する本も多い。“21世紀型恐慌”について描いた『グローバル恐慌~金融暴走時代の果てに』(浜矩子著、岩波新書)や、昭和初期にインフレかデフレかをめぐって、現在と似た問題に直面していた日本経済を描いた『高橋是清と井上準之助~インフレか、デフレか』(鈴木隆著、文春新書)など。
この本を課題にしたときには「インフレかデフレか」をめぐって、予想外に関心が高まった。このため昨年11月の画竜塾は、ディスカッションだけをするスタイルに変更、出席者が文字通りケンケンガクガクの議論を繰り広げた。
まず、インフレ派とデフレ派に分かれて討論。大方の意見が出尽くした後、どちらが正しいかを改めて聞いたところ、インフレ支持派が圧倒的な人数になったという。
「本当に円安インフレでよいと思うか。給料が上がらずに、物価だけが上がったらどうするのか」。頃合いを見計らって、柏原会長はあえて反対意見を投げかけた。むろん、議論を深めるためだ。
円安、インフレに振れれば、確かに輸出産業や製造業には追い風になる。しかし、輸入産業や内需産業にとってはどうなのか。柏原会長は「本当にそれが正しいのかどうかを、幅広い視野から考えることが大切」と振り返る。
本を読んで、単に意見を闘わせるのではなく、それを元に自分で考え、議論することこそが、この塾の本当のねらいである。議論すればするほど、お互いの理解も深まる。
そうすれば、「あのときのあの本」を通して、幹部の間になにがしかの“つながり”のようなものが生まれ、それは組織の一体感や経営にとって、目に見えない大きな財産になる。
画竜塾は、つまりは「人づくり塾」なのだ。
「経営は勘。情報や知識を元に直感力が備わり、決断力も養われる。そして常識ではやらないことでも、自分の信念でできると確信したときには、その常識を打ち破る突破力が生まれる。画竜塾を通して、この3つの力をつけてほしい」と柏原会長は幹部にエールを送る。(中山玲子)
◇会社データ◇
本社=京都市下京区烏丸通松原上る薬師前町700
創立=昭和16年
事業内容=金融業
預金・譲渡性預金=6兆7491億円(平成24年9月末現在)
貸出金=4兆876億円(同)
従業員数=3483人(同)